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男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


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46話〜って、なんじゃこりゃ!?〜

「よく来てくれたね、鈴木さん。所長の早瀬です」


 ゴミ処理施設に着いた我々を真っ先に出迎えたのは、40代くらいの優しそうなおばちゃん。彼女は鈴木さんと知り合いみたいで、鈴木さんと気さくな握手を交わす。

 鈴木さんも、少し安心したように微笑む。

 

「早瀬所長。こうして直接お会いするのは初めてですね。鈴木です。そして、同じ室の黒川さんです」

「初めまして、早瀬所長。宜しくお願い致します」


 俺が前に出て挨拶すると、所長は手を引っ込めて、大きな目をパチパチと(しばた)かせた。


「いやぁ〜。本当に男を連れて来たんだね。区長からは信頼できる技術者だって聞いているけど…大丈夫なのかな?」

「ご安心ください。黒川さんはとっても優秀で、下水処理場の難しい案件もすぐに解決してくれたんです」


 そう言ってくれるのは嬉しいんだけどね、鈴木さん。なんかフラグになりそうだから、あんまり胸張って言わないで欲しいな。


「そうなんですね。でも、今回のは本当に緊急事態なんで、分からなければ直ぐに言って下さい」


 頷く所長だが、俺を見る目が不安で揺れていた。信用していないのが丸わかりだった。

 仕方ない。状況が状況だし、実績を積まないとなかなか信用は得られない。男の俺は、特にそうだろう。


 気合いを入れ直した俺は早速、中央制御室へと案内してもらう。


「なんか、下水処理場の時と似たような機械がいっぱいだなぁ」


 佐川さんの言う通りだ。広さも同じくらいだし、中央に設置されているDCS画面もメーカーが違うだけで、パッと見では違いが分からない。

 唯一、大きく違うのは…。


「うっわぁ〜。すっげぇのが居るぞ!あそこ、あそこ!」

「佐川さんっ。分かった、分かったから引っ張らないでくれ!」


 そう言う彼女に引っ張られた先は、中制の奥。そこは前面ガラス張りになっており、そのガラスの向こうは広大な貯留スペースが広がっていた。そのスペースに、大量のゴミが山のように積まれていた。

 ゴミピット。

 そのゴミ山に、大きな影が落ちる。まるで巨竜が翼を広げている様に映った影の正体は、黄色の巨大クレーンバケット。そいつがゴミの山の中を縦横無尽に飛び回る姿は、まるでゲームセンターのUFOキャッチャーだ。


「でっけぇ!」


 子供のように目を輝かせる佐川さんの目の前で、バケットがゴミ山の上に着床する。そのまま山の一角を切り取り、バケットいっぱいにゴミを掴んだ。

 そして、そのまま天高く舞い上がり、そこでバケットをめいいっぱいに広げた。

 すると、


 ドバババッ!


「うひゃっ!すげぇ!ゴミの雨だ!ゴミの滝だぁ!」

「ああ、凄いな。凄いから、ちょっと手を離してくれないか?」


 せめて少しでも力を緩めて欲しい。君の力が強過ぎて、腕の血が止まってるから。


「すげぇ迫力だな。これで何をやってんだ?演出?」

「まぁ、あながち間違っちゃいないが…」


 見学者が居ると、こうして態々ゴミを掴んでくれたりするから、佐川さんの予想もハズレではない。

 でも、本当の意味は別にある。


「こうしてゴミを高い位置から叩き付けて、ゴミ袋を破っているんだ。そうやってゴミをバラバラに攪拌して、燃えやすくしているんだよ」

「なんでバラバラだと燃えやすくなるんだよ?」


 いい質問ですねぇ。


「家庭から出るゴミって、色んな種類があるだろ?紙やプラスチック、ビンや缶。生ゴミとかフライパンなんてのを入れる人もいる。そう言うゴミってのは、種類によって燃え易さも違うから、ああやって混ぜ込んで均一にしてやると、燃え易さも均一になる。そうしたら、安定した処理が出来るんだ」

「はぁ〜ん。なるほどね。じゃあ最初っから、ごちゃ混ぜにして捨てりゃ良いんじゃないか?頑張って分別して捨ててたけどさ、そっちの方がWinWin(ウィンウィン)じゃね?」


 ああ、なるほど。そう考えてしまうか。


「確かに、そう言う自治体もある。でも、ゴミの中にはまだ使える物もある。プラスチックとかアルミ缶とか、再利用出来る物は沢山あるんだ。それをただ燃やすだけでは勿体ない。捨てればゴミだけど、分ければ資源だからね」

「ああ。そのフレーズ、学校で習った気がする」


 そうでしょ?

 納得してうんうん頷く佐川さんを見て、俺は安心する。やっと解放された腕は、見事に感覚がお亡くなりになっていた。

 もげなくて良かった。


「因みにね、さっき言った自治体ごとに分別の厳しさが違う理由の1つに、ゴミ処理場の処理形態も関わって来るんだ。導入している機器に寄っては、鉄でも土でも処理出来ちゃう高性能のゴミ処理場機械があったりするからね。それを持っている自治体は、分別が比較的楽だったりするよ」

「マジか!荒川区(うち)はどうなんだ?」

「分別が厳しいんだろ?きっと、千代田区(ここ)と同じだと思うよ」

「くっそぉ〜。高性能機械を入れろよぉ〜」


 それは、俺に言わず区長に言ってくれ。発注してくれたら、俺達が頑張るからさ。


「黒川さん!」


 佐川さんと雑談していると、鈴木さんに呼ばれる。

 慌てて彼女の元に戻ると、不安そうに見上げて来る早瀬所長の顔が出迎えた。

 うっ。済みませんでした。すぐ、取り掛かります。


「う〜ん…」


 DCS画面の1つを借りた俺は早速、画面と睨めっこを始めた。画面にはデフォルメされた機械の様子が映っていて、機械が動いているかと、温度や圧力などをリアルタイムで表情していた。


挿絵(By みてみん)


 その様子を暫く見ていたが…特におかしな操業をしている風には見えないな。

 俺が唸っていると、横に座った鈴木さんが遠慮がちに聞いてきた。


「あの、黒川さん。どうして同じ画面ばかり見ているんですか?」

「うん?どうしてって?」

「下水処理場の時は、色々な機器の画面を見ていましたから。でも今はその〈焼却設備〉って画面だけで、他を見ていらっしゃらないので」

「ああ、そういう事ね」


 DCS画面はパソコンのデスクトップを利用している。なので、施設にある機械全ての状態を1画面だけで見る事は難しい。だから、原因が分からなかった下水処理場では、様々な画面を見ながら原因を探していたが…。


「今回はダイオキシンだからね。(おの)ずと原因は絞られているんだ」


 ダイオキシンとは、物がちゃんと燃えないから発生する有害物質だ。特に塩素成分を含んだゴミ…主にプラスチックとかを燃やすと発生しやすく、800℃まで熱したら分解して無害化する事が出来る。

 昔は各家庭や学校でゴミを燃やしていたけど、それが今禁止になっているはこいつが主な原因だ。


「だから、ゴミを燃やした時に出るガスを更に燃焼させる設備、つまりこの焼却設備の燃焼区間が原因で、ダイオキシンが発生している可能性が高いんだ」

「なるほど。そう言う事だったんですね。では私は、そこの過去トレンドを調べてみます」

「おぉ、ありがとう。助かるよ」


 時間が勝負の状況だからね。そうやって、自発的に動いてくれるのは非常に助かる。

 そうして俺達は分析を進めていったのだが、開始早々に鈴木さんが俺の肩を揺らした。

 どうしたの?


「黒川さん。このトレンドの動きって、異常ではありませんか?」

「うん?どれ…って、なんじゃこりゃ!?」


挿絵(By みてみん)

 

 鈴木さんに示された過去トレンドを見て、俺はつい声を上げてしまった。そこには、ダイオキシン分解の目安である800℃を大きく下回った折れ線が記録されていた。

 驚く俺の後ろで、腕組みをした所長が睨んでくる。


「ちょっと、ちょっと。変な声を出すなら、出て行ってくないかな?」

「所長。これは不味いですよ」


 警告されたけど、それに構っている余裕はない。俺はトレンドを指さして、所長に迫る。

 でも、彼女は「それが何か?」と首を傾げる。


「確かに、一時的に温度が下がっちゃってはいるけれど…でもちゃんと、法律は守っているよ?1時間平均が800℃を下回らない様、他の時間は温度を高めに保たせているんだ」

「なっ!?」


 俺は絶句した。

 確かに、記録としては平均温度で見ているから、それは何とかクリアしている様だった。

 でもそれはあくまで最低限であって、一瞬でも下がればダイオキシンが発生する。そんなの、ゴミ処理業界では常識だろ。何故、こんな初歩的なミスを見逃しているんだ…?


「所長…」

「なっ、なんだい?」


 責任者の貴女が何をしているんですか!と、俺は強く訴えたかった。でも何とか感情を飲み込んで、冷静に提案する。


「先ずは、燃焼温度の基準を上げて下さい。1時間平均を850℃に。そして、瞬時でも800℃を切らない様にと、オペレーターさん達に指示書を出して下さい」


 先ずは教育から。

 そう思った俺の提案を、所長は首を振って否定した。

 うん?

 

「そりゃさ、私らだって上げられるなら上げたいと思っているよ。でもね、どうしても下がっちゃうんだよ」


 えっ?


「それは、どう言う事でしょう?」

「いやね。最近、千代田区のプラスチック分別が厳しくなってね。半分くらいがリサイクルに流れるようになったんだ。だから、幾らゴミを燃やしてもカロリーが低くてね」

「なっ。そんな事が…」


 絶句する俺を、鈴木さんが不思議そうに見つけてくる。

 

「あの、黒川さん。カロリーって…私達が食べるご飯とかと一緒の意味でしょうか?」

「ああ、うん。そうだよ」


 そっか。鈴木さんには馴染みが無い言葉だよな。


「文字通り、ゴミのカロリーって意味で使われていて、要はどれだけ燃え易いかって言う指標だね。紙やプラスチックなんかは、燃え易いからカロリーが高い。逆に生ゴミは水分が多いから、カロリーが低くて燃え難い。だから、プラスチックが減ってカロリーが下がり、燃焼温度も下がり易くなったって、所長は嘆かれているんだよ」

「なるほど。たき火みたいなものですね」


 鈴木さんが納得すると、早瀬所長が何度も頷く。

 その姿が俺には、ほら、私達は悪くないだろ?って、言い訳している様に見えた。

 それは違うぞと、俺は声を上げようとした。でもその前に、ガラス窓に張り付いていた佐川さんが声を上げた。


「なぁ!そのカロリーってのが下がってる原因はよぉ、こいつも悪さしているんじゃないか?」

「うん?どれだ?」


 佐川さんがツンツンと窓を突つく姿を見て、俺は嫌な予感がした。小走りで近付き、彼女の横に立ってその方向に視線を向ける。

 そして、その光景を見た瞬間、


「なっ!なんじゃこりゃ!?」


 俺はまた、叫んでしまった。

「なんだ?腹でも撃たれたか?」


吠えた先はゴミピットであって、太陽ではありませんよ?

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― 新着の感想 ―
こりゃゴミの分別をやり直さないとダメですねー。 処理施設にあわせて分別させるということで、運用見直しは必須ですね
無能な特区と、有能な特区外という事実を知られたくない国の選民思想教育じゃないか 特区外は働かないと維持できず、特区は働かなくても維持できるって見せ札にしてるんだろうけど、もう無理だろこれ 技術継承って…
あれ、これマジでもう手遅れでは・・・
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