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男だらけの世界の方が、何故か女性にモテるんだけど?  作者: イノセス


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45話~手を貸してやっても良いわよ?~

 警察署の中で、警察官の制服を着たオトハ様と鉢合わせた。

 でも別人かも知れない。何せ、彼女が向ける視線はとても冷たいものだから。他の女性達と同じ、冷徹な態度。

 つい俺も、前に出かけた足を引き戻していた。


「おっ!噂をすればって奴じゃん」


 逆に、佐川さんは前に出る。のっしのっしと彼女に近付きながら、嬉しそうな声を出す。


「なんで噂の女王様が、こんな寂れた警察署に居るんだ?しかもその格好…あっ、そう言えば、なんかの撮影が入るとかって署長が言ってたなぁ」


 有名人を前にしても、マイペースな佐川さん。

 でもそれは彼女だけであり、近付かれたオトハ様は顔を強ばらせる。そして、彼女の隣で待機していた少女が、警戒心バリバリで佐川さんを睨み付けた。


「止まりなさい!警官でも、乙葉様を傷付ける行為は許しませんっ!」

「あん?そんなんしねぇよ。あたしはただのファンだっての。あたしと、あとこいつもな」


 そんな雑に紹介するから、俺まで2人から睨まれてしまう。

 護衛の少女が、睨みながら構える。


「この人は…まさか男!?何故、特区(ここ)に男が居るのです!早く、排除せねばっ!」

「待て待て、早まるな。こいつは正式な手順を踏んで入区してんだから。なぁ?黒川」


 えっ?ここで俺に振るの?

 威嚇してる人の前に出るのは怖いけど…イザという時は頼みますよ?佐川さん。

 

「はい、勿論です。そうでなければ、入区なんて出来ません。管理局のセキュリティ、物凄かったですからね」


 強行突破しようとするなら、一個師団でも足りないだろう。

 そう弁明したけれど、少女の視線は更に厳しく、そして構えは鋭くなった。

 この動き、何か腰に挿しているな。まさか…刀か?

 

 1歩間違えれば斬りかかってきそうな少女。

 どうしたものかと思っていると、不意にその少女の横に影が。

 

「乙葉様!?」


 オトハ様が優雅な足取りで少女を通り過ぎ、佐川さんをすり抜け、そして、


「そう。お前が黒川なのね」


 彼女の長く美しい指が、俺の頬に触れる。


「思っていたより、随分と大きいわね。もっと小柄な姿を想像していたのに」

「おっ、オトハ、様…」


 彼女の柔らかく、暖かな手の感触をダイレクトに感じて、俺は体が硬直した。画面越しで幾度もお会いした彼女だったが、こうして目の前で見るとまるで違った。

 暴力的とも思える程の色香が溢れ、俺を襲う。俺を、溺れさせようとする。


「乙葉様!」


 そんな彼女の間に、小さな影が割り込む。

 護衛の少女だ。


「何をされているのですっ!男に触れるなど、噛み付かれたらどうされるのですっ!」

「落ち着きなさい、亜心(アコ)。黒川はそんな奴じゃないわ。ねぇ?」

「え、ええ」


 何とか頷いたけど、ちょっと自信が無かった。流石に噛み付きはしないけど、こんな魅力的な人に触れられ続けたら、何をし出すかわからない。だから…割って入ってくれてありがとう、アコちゃん。


「それで?お前はどうして警察署に居るの?会社勤めと言っていなかったかしら?」


 アコちゃんに守られながら、オトハ様が不思議そうに俺を見上げてくる。なので、俺はここまでの経緯を話した。

 すると、オトハ様は「ふっ」と小さく笑う。


「当然ね。男が特区の、それもこんな所まで入って来るなんて今までなかった事ですもの。寧ろ、監視がたった2人なんて少ないくらいよ」

「初回はもっと多かったんですよ。パトカーだけでなく、護送車まで居ましたから」

「あら、本当に?ぷっふ…」


 オトハ様が口を押さえて、肩を震わせる。ツボに入ったみたいで、暫く顔を伏せていた。

 でもね、オトハ様。マジで笑い事じゃなかったんですよ?


「はぁ…。本当に面白いわね、お前。入区させて正解だったわ」

「あっ、やっぱりオトハ様でしたか。入区に手を貸してくれたのは」


 俺の思った通りで嬉しかった。だから、彼女に向けて頭を下げ、率直に感謝を述べる。


「ありがとうございました、オトハ様。お陰様で、入区する事ができ、依頼もこなす事が出来ました」

「別に。ただ、そう言う契約だっただけよ」


 ちょっと冷たく言うオトハ様だったが、視線がふいっと何処かに逃げていた。

 面と向かってお礼を言われ、恥ずかしくなったのかな?意外と可愛い一面もあるもんだ。

 微笑ましく思っていると、逃げていた彼女の視線が戻ってくる。既にそこには、何時もの人を食ったような微笑みが戻っていた。


「それに、お前がこの先も入区出来るかどうかは、お前の働きに掛かっているのよ?」


 仰る通りで。

 俺が頷くと、オトハ様の笑みはより深くなる。

 なっ、なんです?


「お前が望むのであれば、また私が手を貸してやっても良いわよ?次の目的地まで、私の車で送り届けてあげましょうか?」

「「「えっ!?」」」


 俺だけでなく、その場にいた全員が声を出していた。

 まさか、車を出してくれようとするとは…。

 そいつは有難いんだけど、行くのは俺だけじゃないし、この時間では本社に誰も居ないだろう。何より、鈴木さんに迷惑が掛かってしまう…。

 どう断るべきかと俺が押し黙っていると、マイペースな佐川さんが手を振った。


「そいつは無理だ。JIEの本社までは、パトカーで護送する様にって署長からも言われてるんでね」

「なら、その本社からはどうやって移動するの?」

「多分、鈴木が車出してくれるんじゃねえか?だから、車は大丈夫だ」

「すずき?」

「おう。鈴木美夜子。黒川の…同僚?相棒?まぁ、めっちゃ仲の良い奴だ」

「…ふぅ〜ん」


 ジトっとしたオトハ様の視線が、こちらを向く。何か言いたそうに俺を見詰めて、ふいっと逸らされてしまった。

 えっと…何だろう?何か特大の面倒事に巻き込まれている気がするんだけど…?


「ほら。行くわよ、アコ」

「あっ!お待ちください!乙葉様!」


 アコちゃんを伴い去って行くオトハ様。その背中が何処か、怒っている様にも見えるのだが…まさか、送り迎えを断ったから怒っているなんて事、無いよな?俺は三十路のおっさんだぞ?そんなの、気持ち悪いおっさんの妄想…だよな?


 

 次の日。

 前日にオトハ様との予期せぬ出会いがあったものの、その後は何事もなくJIE本社まで辿り着く事が出来た。

 だが、そこで出迎えてくれた鈴木さんの表情は暗かった。

 これは…何かあったな。でも、先ずは…。


「鈴木さん!」


 エントランスで待っていた彼女に、俺は小走りで駆け寄る。そして、その小さな手を握った。


「黒川さんっ!?」


 驚く彼女。

 その様子に、少しの罪悪感を感じるも、俺は手を離さずに真っ直ぐ彼女の瞳を見詰める。そして大きく手を上下に振る。


「ありがとう、鈴木さん。俺がこうしてここに居られるのも、君が社長に直談判してくれたからだ」

「そんなっ、大袈裟ですよ。私は当然の事をしただけで…」

「君が言う当然に、俺は救われたよ。当然の様に救ってくれた君こそ、俺のヒーローだ」


 そう言って握手を解くと、鈴木さんは照れたように顔を赤らめ、「そんな、私が?」と小さく笑った。

 そうだよ、鈴木さん。君のお陰で、みんなが救われたんだから。

 そう言う思いで彼女を見詰めていたら、鈴木さんはちょっと怒った風に口を尖らせる。


「もうっ、揶揄わないで下さい。黒川さん」


 ええっ?


「揶揄ってないよ。本当さ。本当に感謝しているし、少しでも君の役に立ちたくてここに来たんだ」


 そう言うと、鈴木さんは「あっ、そうでした」と真剣な表情になる。

 何かあるんだね? 


「実は…工場が営業停止になるかもしれなくて」


 えっ、営業停止!?


「詳しくは、車の中で」


 なんだか大変な事になっているぞ?と、俺も不安を感じながら車に乗り込む。鈴木さんが運転しながら、話の続きをする。


「今から行く所は、千代田区のゴミ処理場です。そこで出るゴミの燃えカスに、大量のダイオキシンが付着しているとかで、最終処分場から厳重注意を受けてしまったそうです」

「そいつは不味いな」


 ゴミ処理場で処理灰が搬出できなくなったら、ゴミを処理出来なくなってしまう。灰っていうのは、ゴミを処理したら必ず出るものだからね。その灰が搬出できずに溜まる一方だと、いずれ工場がパンクする。

 ゴミ処理が、出来なくなる。


「最終処分場は、まだ灰の受け入れ自体はしてくれているのかい?」

「今回搬出した分は受け入れてくれましたけど、次回搬出までにダイオキシンの数値が下がっていなかったら、下がるまで受け入れは出来ないと言われてしまったらしくて」


 ぐっ。

 まぁ、当然の対応…なんだけど。受け入れ拒否か。かなり痛手だな。


「次の灰の搬出日は?」

「5日後です」


 5日と言う言葉を聞いて、佐川さんが「なんだ」と表情を崩す。


「結構、余裕あるじゃん。鈴木がそんな顔するから、あたしは今日にでも解決しないといけないトラブルなのかと思っちまったよ」

「いや、1秒でも早く解決すべき案件だぞ?佐川さん」


 搬出は5日後かもしれないけれど、そのダイオキシンタップリの灰は今も発生しているんだ。1秒でも早く解決しないと、どんどん危険な灰が溜まってしまっているのが現状。その灰を、最終処分場側に採取でもされてしまったら、今度こそ受け入れが出来なくなってしまう。

 そうなれば、工場が止まってしまう。行き場を失ったゴミは、街の中で溜まっていくだろう。

 美しい特区の街が、ゴミで埋まってしまうんだ。


「確かにこれは、緊急事態だ」


 車窓から見える街並みを目で追いながら、俺は自分自身に言い含めた。

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― 新着の感想 ―
これ、もう不法投棄してそうで怖いな
特区だけに、特区の外に雑に捨てそうで怖い
クイーン・ポリスVSマッシヴ・ポリス…慰問会で実現すれば、男性群集が正気を逮捕されちゃうカードやw 飛び抜けた美貌のある女性個体は一定の魔性を帯びる?落魄の現地神格集団説は女性人口多すぎるのがなぁ……
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