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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第13章:トールステイン大王伝記 日進月異編

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第210話 新しい国の形 8歳 春

「なあ、シグリズ…」

「知りません」


 シグリズ様にまで梯子を外されたシグヴァルド様の苦りきった顔ときたら、それは見ものだった。

 今までさんざん振り回されてきた僕としても、ちょっぴり溜飲が下がった気分。

 偉い人も、たまにはお灸を据えられないとね。


 さて。意地悪しただけでは何なので、僕は解決札についても提言する。


「シグヴァルド様。実はシグヴァルド様に積み上がる仕事を、楽に実行できる案があるんですが…」


 良い提案をしているのに、少し疑わしい目で見られた。

 嫌だなあ、僕の純粋な瞳を信じて欲しい。


「正直に申し上げますと、大クナトルレイク大会の予選を開催する、という大きな仕事を僕たちが行うか、シグヴァルド様が行うか、という仕事の押し付け合いになっていますよね?

 この構図が、そもそもおかしいと思うんです」


 シグヴァルド様が頼みやすいから僕たちに仕事を振っているという面はあるにしろ、そうした縁故人事だけでは大きな仕事は回らないし、今回は何とか仕事をこなせたとしても、無理な仕事には持続性がない。


「だって、大クナトルレイク大会も、大会の予選も北方21星の大結束全体を挙げて行う大事業ではないですか。皆で行う事業ですから、皆で仕事を分け合わないといけません」


 大きな仕事をこなすためには、大きな仕事を分け合う仕組みが必要なのだ、と僕は主張する。


「具体的なやり方としては、予選を開催する村の代表を、うちの村に集めましょう。

 夏の民会の前に、担当者たちの小さな民会。いわば小民会を設けて実務をすり合わせるんです。

 僕の方で予選開催マニュアルを作りましたけど、実際の予選の開催担当者は、いろいろと疑問があると思うんです。顔を合わせて打ち合わせをするための集まりが必要です」


「なるほど…。小民会、か。しかし小民会がものごとを決めてしまっては、民会の権威が損なわれるのでは?」


 シグヴァルド様は民会の形骸化を気にしているみたい。

 たしかに大民会が少人数で勝手に決めたことを追認するだけの機関になってしまったら、北方社会の統治の仕組みが根本から崩れてしまうものね。


「小民会の内容は、議事録を作って共有できるようにします。誰が何を話して何を決めたのか、あとから民台で検証できないといけませんし。宮廷詩人スカルドが同席するように決めても構いません」


 議事録は当然書くよね。そうした習慣は存在しないのかもしれないけど、共有のためには記録が必要だと思う。

 それとも北方社会の習慣を尊重して、記憶力に優れた宮廷詩人が同席するように定めても良いかもしれない。


「それに、小民会の仕組みは北方21星の大結束の統治にも応用が効くと思うんです」

「小民会が北方21星の大結束の統治に?」


 僕は、シグリズ様に断って椅子を借りると、椅子の上に立って大きな黒板に貝殻棒で4つの単語をルーン文字で大きく書いた。


 1.域内交易

 2.クナトルレイク

 3.事業投資

 4.相互防衛保証


「北方21星の大結束の役割は、大きく4つに分けられます。僕は4つの役割について小民会を設立し、実務や研究を担うべきだと思います。

 交易の促進と紛争解決、クナトルレイク大会の開催、事業投資先の選定と検証、相互防衛体制の整備と実行準備。いずれも専門性が高い仕事ですし、片手間に行える仕事ではありません。

 各小民会で専従者を任命し、大民会で報告するよう定めるべきだと思います」


 北方21星の大結束は、今後ますます図体が大きくなりそうだからね。

 皆で年に1回集まって議論して全部を決める、という少数の村を回すための牧歌的な体制では回らなくなるのが目に見えているんだ。

 実際に、伝統的な統治体制を維持している王やトーレル卿の政治はシグヴァルド様が仕掛ける事態の変化についていけていないわけで。


 シグヴァルド様は黙って僕の説明を聞いた後に、少し震える声で発言した。


「それは…新しい国家の体制を作る、ということにならないかな?」

「国を…?いや、そこまで考えたわけではありませんが…」


 新しい国。新しい体制。そこまで大きな話なんだろうか?


 戸惑う僕に対して、シグヴァルド様が小民会制度がもたらす異議を説明してくれた。


 シグヴァルド様が言うには、僕たちはまず理念で勝利した。

 北方21星の大結束として、交易を通じ相互に繁栄しようという理念。

 それが王やトーレル卿の掲げる収奪的な中央集権体制に対して勝っていることは、北方21星の大結束を支持する村が爆発的に増えていることが証明している。


 次は、統治体制の効率性でも勝利する。

 王に全ての権限が集中し気分で意思決定をする伝統的体制に対して、現場の専門家が知恵を絞った結果を、民会で討議し適切な結論が出せる新しい体制を目指す。

 それが大民会の下に小民会を設立する体制の意義なのである。


「はえー…そんな意義が…」


「いや、これは君が言い出したことだよ、トールくん。小民会の運営予算ぐらいは大民会から出せそうだがね」


 シグヴァルド様が苦笑している。

 けれども僕はそんな大げさな異議をもたせるつもりはなくて、大変な仕事を一人で抱えたくなくて皆に分けてあげたかったのと、お偉いさん達が現場の専門家を無視して無茶なことを言い出すのを防止したかっただけなんだけど…。


「小民会の担当者については、大民会で任命と了承を取ったほうが良いと思います。今夏の大クナトルレイク大会については民会が間に合いませんから、実務的に予選会開催担当者で良いと思いますが」


「うん、トールくん、実に面白い。そうすれば実際に物事を行う者の知恵と、大きな意思決定をする指導者とが無理なく連携できる、といういわけだね!

 専門小民会の導入!北方21星の大結束に相応しい画期的な体制だ!」


「まあ…そう期待できると思います」


 僕はちょっとシグヴァルド様の興奮にはついていけず、曖昧に頷くにとどめた。



 このときにシグヴァルド様と議論した「小民会が実務を行い、大民会が承認する」という仕組みは、北方連合王国が設立され拡大していく際の統治体制の基本的な枠組みとなっていくのだけれど、もともとは単に大量の仕事を押し付け合った結果であることは、誇張され装飾された建国神話の中で都合よく無視される点である。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「ところでね、トールくん。実は別の点でも知恵を貸して欲しいのだけれど…」

「えー僕は策略とか謀略とか、そういうの苦手なんですが」


 北方21星の未来が視えた、と一人で盛り上がっていたシグヴァルド様なのだけれど、他に王とトーレル卿を離間させる策はないか、と聞いてくるんだ。

 僕はその手の話はあんまり好きじゃないんだけど…。


「いやいや。あまり謙遜するものではないよ。何かないかな?私もできれば正面切っての戦争などしたくない。トールくん知恵で戦争を回避できれば、それに越したことはない、と思っているんだ」

「本当ですかあ?まあ、考えてみますが」


 僕は少し頭を整理してから、幾つかの策を挙げた。


「シグヴァルド様。王やトーレル卿と取引している商人はわかりますか?」

「奴隷を通じて割り出すことはできると思うが…」


 そんな情報まで漏れているのか。なら実行は簡単だよね。


「大麦を納入している商人に、より高価格で継続的に買い取ると打診しましょう。それと大麦の在庫を管理している奴隷にも、大麦を売るよう仕向けましょう。

 取引を拒否するようなら実力行使が必要かもしれませんが、まあその可能性は低いでしょう。

 王とトーレル卿の大麦の保有を資金で兵糧攻めにするんです。買い取った大麦は、こちらの村で大麦酒に加工しますから損はしません」


 保存のきく大麦は兵隊を動かすためには必須だからね。手元に銀だけあっても食料がなければ多くの兵を養えない。その銀も特製大麦酒や贅沢品を買わせて巻き上げられれば言う事なしだ。


「もう一つ。王とトーレル卿を適当なタイミングで同時に居合わせるように図って、互いに争うように仕向けましょう。

 大民会もしくは大クナトルレイク大会に同時に招待して、手下同士がやり合うように喧嘩を誘発しましょう。大酒を飲ませても良いですし、侮辱するような歌をこっそり歌わせるのも良いです。

 血の気の多い連中ですから、近くにいれば勝手に発火するでしょう。食事用のナイフを大きめ鉄製で鋭利に尖らせて殺傷力を上げておくのも良いかもしれません。


 また事前の工作として、王やトーレル卿は怖れている、臆病者だ。軍勢の後ろに隠れることしか出来ない。英雄たちの戦いになれば逃げ回るだろう、という歌を流行らせるのも良いですね。当事者が出席する可能性が高くなります」


 策を一通り言い終えると、相変わらずシグリズ様の顔は引きつっていたのだけれど、反対にシグヴァルド様は実に素晴らしい笑顔を浮かべていたのだった。

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即興で余裕の悪知恵 さすがはロキ 巫女も引き攣る悪辣さ
卑怯戦隊うろたんだー
これが卑の意志
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