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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第12章:トールステイン大王伝記 艦強艇壮編

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195/248

第195話 冬の終わり 春の訪れ 7歳 晩冬


「人間は自由という刑に処されている。なぜなら、一度世の中に投げ出されたからには、彼は自分のするすべてのことに対して責任があるからだ」


 と、偉そうに言ったのは、確かサルトルだったか。

「やらかす自由」がある代わりに、その結果は100%自分の義務になる。

 そういう意味だね。


 そして今。僕はまさに「やらかした自由」に対する責任をとっている。


「ひーん…!」

「ほら、泣き真似をしていないて早く羽根ペンを動かしなさい」


 来年の大クナトルレイク大会において、地方予選を行うためのクナトルレイク予選大会運営マニュアルの中身については、過去のノウハウの蓄積もあってさくさくと下書きまでは書き上げられたんだけどね。


 印刷機などない時代なので、下書きが出来上がったら清書と複写という作業が待っているわけでして。

 しかも全部、手作業です。


 書いたら写す。当然の作業なんだけど、僕はこの作業が死ぬほど苦手。

 何も考えずに手を動かすのがコツなんだろうけれど、書き写しているうちにいろいろと修正したくなってくるんだ。


 こんな余計な作業が発生したのは誰のせいなんだ?

 いや僕のせいなんだけど。


「ううっ…あっ。また間違えた…」


 羊皮紙の書き間違えた部分に蜜蝋を体温で捏ねて柔らかくしたものを貼り付ける。

 しばらくしてから剥がすと、インクと一緒に綺麗に剥がれるんだ。


「あと13部を書き写さないと駄目なのか…」


 1会場で4チームのリーグ戦を行うとして、50チーム以上が参加するのであれば最低でも13部は必要になる。

 シグリズ様や2人のお嬢さん達も複写を手伝ってくれるとは思うけど、最初の1部の清書は僕が作らないといけない。

 印刷機!印刷機が欲しい!


 ルーン文字が書けるエリン姉は手伝ってくれないのかって?

 エリン姉は相変わらず神出鬼没の勘の良さを発揮していた。

 つまり逃げた。おのれ…。


「ほら、手が止まってますよ」

「最初の版ができあがらないと、次の作業に移れない」


 赤のアルフヒルドさんと青のエリスさんのコンビの指摘も厳しい。

 僕が仕事を増やすせい…?

 いや僕は仕事を減らすために頑張ってるんだって。

 今はちょっと仕事を増やしたように見えるけど。

 ほんとだよ?


 実のところ、春に通商が回復するまでに写せばいいから徹夜するほどの急ぎということではないけれど、出来るだけ早く仕上げて配ってしまうに越したことはない。


 そんなわけで、僕は幼い目を酷使して小さな指にペンだこを作りながら、羽ペンを羊皮紙に走らせるのだった。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「猪の陣形から船の陣形!転換をもっと素早く!」

「「おうっ!」」


 村の競技場では、若者達のクナトルレイクの練習に気合が入っていた。

 人間の集団が、あたかも一つの生き物のように形を変える。


 大人クナトルレイク大会の本戦では、うちの村はチャンピオンとして予選通過してきたチームを迎え打たないとならないからね。


 弱いのは論外。ただ強いだけでも駄目。

 圧倒的な強さで勝ち進んで、必ず優勝しないといけない。

 北方21星の大結束で中心的な地位を占め続けるためには、権威が必要になる。

 暴力でなくとも、なんらかの力が必要だ。


「走れ!止まれ!転換!走れ!」

「「おうっ!」」


 父ちゃんは総監督として、数人のコーチを束ねる形で指導をしている。

 審判も適宜入れ替えているみたいだ。

 最低でも予選会場の数と同じだけの13人の審判をこの村から派遣しないといけないからね。村での練習や試合を通じて育成しているんだ。


「審判。審判かあ…」


 審判の判断は絶対だ、という価値観はまだ行き渡っていないだろうから、審判の身体の安全を主催者の責務とするよう運営マニュアルにも書き加えておかないと。


「きゃーっ!」

「がんばってーっ!」


 僕の他にも村の娘さんたちが練習試合を見ていて、ときおり声援を送っている。

 娯楽の少ない社会だし、村の若い男がスポーツやっていたら、それは見に行くよね。


 僕もいつかあの中に入って村の若い女の子たちに「きゃーっ!トールさんかっこいいーっ!」とか黄色い声援を浴びる日が来るんだろうか?

 …ちょっと想像つかないな。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 男達が木槌を振り上げ、杭を打ち込む硬い音が響き渡る。

 村の浜辺では、建設が続いていた。


 大型のパン焼き釜のために石が積まれ、熱を利用するサウナが建てられる。

 パン焼き窯の熱は煙道トンネルを通じてサウナに伝わり、さらに衣類の乾燥所や冷燻施設へと続く。


 煙道トンネルを用いる熱関係の建築は難しい。きちんと水平を取った上で、適切な傾斜と煙が流れる経路を設計した上で、一酸化炭素などが漏れないよう平らな石と漆喰で固めつつ、メンテナンス用の穴は設けないといけない。


 この複雑な熱機関システムの建設の第一人者は、父ちゃんなのである。

 我が家の塩作りから始まって、宿泊所の施設を建設したのも父ちゃんだし。

 思いつきと設計は僕だけど、実際に建築現場で手を動かして施設を作り上げてきたのは父ちゃんだもの。


 少し離れたところでは船着き場の拡張と、倉庫の建設が行われている。

 そちらの指揮は、村長さんがとっているみたい。

 他にも伐採とか石積とか、伝統的な建築手法をとる場合は村長さんが指揮を取ることで、父ちゃんとは役割を分けているみたい。


 港。

 港の倉庫。

 パン焼き釜。

 サウナ。

 衣類乾燥所。

 冷燻施設。


 あとは酒場と交易所。

 それに競技場の観客席の拡張か。

 そちらは複雑な設備ではないから直前でも人海戦術で何とかなる。


 春からの来客を迎えるための施設が、どんどん建設されていく。


 もうすぐ北方に春が来る。

 気の早い商人の輸送船が、港に入ってくるのが見えた


 12章 終わり


 明日はトールステイン大王の伝記回です。

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― 新着の感想 ―
蝋があるなら蝋板で印刷すればいいんじゃないかな。
作者さんにお願い トールを初めとした登場人物たちの外見や村がどんな構造してるのかAIで描いてほしい 無理なら登場人物まとめみたいな感じで閑話で
書かなくて、縫えばいいんじゃないかな? 縫い物でも用は足りる。
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