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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第12章:トールステイン大王伝記 艦強艇壮編

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第189話 たくさんの学びをお土産に 7歳 晩冬

 お昼ご飯を食べている子たちを見回していて、エリン姉を見ないことに気がついた。どこに行ったんだろう?

 さっきまで、試合を一緒に見ていたはずなのに。

 本当に落ち着きがないというか、神出鬼没だ。


 エリン姉は、ルーン文字の教養をある程度は身につけたので、シグリズ様の下で植物図鑑の羊皮紙を写すとかの細かいお手伝いはしているみたいなんだけど、どうやって察知するのか、本当に仕事が忙しくなると、猫のベーグルみたいに身を隠しちゃうんだよね。


 とにかく勘が鋭くて逃げ足が早い。

 狭い村なのにどこに隠れているんだろう?

 不思議で仕方ない。


 ◯ ◯ ◯ ◯


 昼食を終えて、午後もクナトルレイクの試合が行われる。

 午後は、うちの村じゃない他所の村の子たちのチーム同士の試合。


 去年の試合は、革のボールに集まってわちゃわちゃしているだけの、いわば団子サッカーのクナトルレイク版のような稚拙さで見るに耐えなかったんだけど、今年はちゃんと、クナトルレイクの試合として成立している。


 目の肥えたうちの村の観客たちも声援を送っているし、試合の審判をしている父ちゃんも満足げな様子を見せていた。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「良かったら、少しだけ残って話を聞いていかないか?もっと楽に勝てる方法を教えよう」


 午後の試合が終わったら、父ちゃんたち村のクナトルレイク愛好家が主導して、他所の村の子たちに戦術改善のセッションを始めている。


「最初の右側に展開したプレーは良かったが、右に行くと見せかけて左側から押していくプレーという選択肢もあった。その選択肢を見せるだけで、守備側も守りづらくなるんだ」

「なるほど…」


「ちょっと実際にやってみ見せよう。こうボールを受けたら、右側に投げるフリをしてから左に走る。それだけで守備の展開は遅れるんだ…」


 とか、実際にプレーをやってみせたりしてる。


 なにしろ父ちゃんは、北方21星の大結束において、将軍とも称される北方一のクナトルレイクの指導者だからね。

 それだけの名声を誇るトップコーチに直接教えを受けられるチャンスなんて滅多にないことだ。


 他所の村の子どもたちがキラキラした目で、父ちゃんの言葉を一言一句漏らさずに聞こうとしている。

 父ちゃんの指導はもちろん素晴らしいんだけど、こんなにも男の子の心をつかむクナトルレイクという競技の力って本当に凄いなあ。

 さすが北方一のメジャースポーツなだけのことはある。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 午後の試合を終えて、子どもたちをサウナに入れて晩ごはん食べさせたあと。

 僕は姉ちゃんと一緒に、板切れを大量に持って宿泊所へ訪問した。

 宿泊所の中では、子どもたちが寝るために暖房床の上に毛皮を敷いて、いろんな場所で車座になって昼間のクナトルレイクの話をしたり、違う村の子たちが、お互いの盾を見せ合ったりしていた。

 うんうん。いい光景だ。


「こんばんは!約束通り、空を飛ぶ羽の作り方を教えに来たよ!」


 エリン姉が、呼びかける。

 村に来るときに目玉の風車を見て泣いちゃった子たちを慰めるために言ったことだけど、ちゃんと約束は果たさないとね。

 そのために、木工職人の工房に寄って余ってる白樺の板や棒をかき集めてきたんだ。


「ええっ!本当に教えてくれるのか?」

「すげええっ!」


「じゃあ、チームごとに受け取りに来て。全員分はないから、チームで木工が上手い人に渡して、あとは村に帰って教わってね」


 1チームに1つずつ見本を渡す。

 見本となる白樺トンボはエリン姉が試作したやつが山ほどあるからね。

 まずは、一番単純な一枚板を削る形から教える。

 要するに竹とんぼ型だね。


 端材をナイフで削って、羽の形を作るところを見せる。


「端を斜めに削って、反対側は逆に斜めに削って…真ん中に穴をあけて、こうして固定すると…」


 北方社会の村の子たちは、小さい頃からナイフを使っている。

 だからみんな白樺トンボ程度の細工ならお手のもの。

 手元に、お手本となる白樺トンボがあれば、なおさら簡単に作れる。


「それで、下の棒をクルクルっと、手のひらでこすると空を飛びます!」


 エリン姉の説明が終わる前から、手先の器用な子たちは白樺トンボを完成させて飛ばし始める。


「うおおおーっ!」

「すげぇーっ!」

「空とんだよ!鳥みたい!」


 宿泊所の天井が高いこともあって、力任せにブンブンと回して飛ばす。

 当然、天井にあたって落ちてくるんだけど、そんなことは気にせず落ちてきた白樺トンボを掴んで、また飛ばす。


「次おれ!やらせて!」

「貸して!貸して!」


 ものすごいハマりようだ。

 これは村に帰ってもブームが起きそう。

 特にエリン姉が大人気で、他所の村の子たちが集まっている。


「こうやって、端に細い穴を開けると笛みたいに音がなるのよ」


 羽に細いスリットを開けて回転させると、ぴぃぃぃっと甲高い音が鳴った。


「すげーっ!鳥みたいだ!」

「ほんとだ!声が聞こえる!」

「教えて!どうやるの!」


 立て続けにもたらされる工夫に、他所の村の子たちは大興奮だ。


 よーし僕も負けないぞ。新しい技術を教えてあげようじゃないか。


「この羽にね。真ん中を黒く塗って外側を白くして、ぐるぐる回すと…」


 くるくるくる


「うぎゃー目ができたー!」

「ぎゃーっ!」


 僕の周りに集まっていた子たちが、叫び声を上げて逃げてしまった。

 なんで…?


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 翌日もクナトルレイクの試合が行われたんだけど。

 昨日とは、ちょっと様子が違っていた。


 クナトルレイクの試合はますます白熱して、競った内容になった。

 父ちゃんたちが指導した戦術セッションのおかげもあってか、他所の村の子たちも、うちの村の攻撃に対応できるようになったからだ。

 高度な攻撃と防御の応酬と攻守が目まぐるしく変わる展開に、目の肥えた観客も大喜び。


 でも、変わったのは試合を待つ方の村の子たち。

 今行われている試合を見るだけじゃなくて、自作のトンボを飛ばしたりしてるんだ。

 クナトルレイクの試合をしに来たのに何事か、と眉をひそめる人もいるかもしれないえkど、僕は賛成派。

 この村に来た子には、いっぱい新しい経験をして欲しいからね。


 試合のことは審判をしている父ちゃんに任せて、僕はトンボを飛ばしている方の子たちが気になって見ていた。


「なあ、それってフギン様なのか?」


 今日は肩にムニを載せていたからか、不思議そうに聞かれた。

 昨日の挨拶のときには載せていなかったら、僕のことは貴族だと気づかれてないみたい。格好も普通の村の子と同じだからね。


「いや、ただの拾ったカラスだよ。猫が咥えて持ってきたんだ」


 するとムニのやつが不満そうにバサバサと羽を広げて叫ぶんだ。


「むに!むに!ふぎん!ふぎん!」

「…うわぁ!やっぱりムニ様なの?」


 僕は大きく頭を振る。


「いや、まさか。これは単に餌を欲しがってるだけなんだ。ほら。ちょっと食べさせてあげて」


 僕はナッツをズボンのポケットから出して、腰がひけた子どもに渡した。


「わあ。食べた」

「ね?普通のカラスでしょ?」


 僕たちがムニに餌をあげてると、他の子もやってきた。


「お前、面白い服を着てるな?」

「僕が?」


 仕立ては良いかもしれないけど、特に装飾品とかつけてないけど。


「それ!ポーチのついたズボン!」

「ああ。うちの村で流行ってるんだ。小さいナイフを入れたり、食べ物を入れたりとか。便利だからね。

 ポーチをいちいち肩からかけるのは、ちょっと面倒くさいでしょ?」

「へえー!」


 ズボンのポケットも、他所の村でも流行るのかなあ。

 男の子だし、ファッションには疎いから流行らないかもなあ、とぼんやりと考えていたら、また別の子が話しかけてきた。


「お前達、いつもパンを食べてるのか?」

「ええとね。水車が新しくできたでしょ?お客さんに出せるようになったから回数は増えたよね」

「…?」


 この表情は、あんまりわかってないな。僕の言い方が悪かった。


「いつもじゃないよ。週に3回ぐらい」

「すげえ!なんでだ!ヴァルハラだからか?」

「いいや。水車があるからだよ。水の力で石臼を代わりに回してくれるんだ」

「へえー」


 僕は風車を手に持って、回してみせた。


「この棒の下に石臼がついていて、回してくれるんだ」


 この説明でわかってくれたかなあ。わかんないかな。


「なあ。この村の家は、どうしてみんな白いんだ?雪でできているのか?」


 また別の子に聞かれた。

 ああ。それは不思議に思うかもしれないね。


「あれはね、貝殻を焼いてから砕いて海水で溶かした粉を塗ってあるんだ。木の柱や土の壁についた虫を殺してくれるから、家が長持ちするようになるんだ」

「へえーっ!すげえな、お前、詳しいな!」

「うん。まあね」


 また別の子が質問してきた。


「じゃあ、泊まっている大きい家が白いのも?」

「そう。同じ理由で塗ってあるんだ。それと家の中が明るいでしょ?家の中が白いと夜の蝋燭を節約できるんだ」

「へええっ!なあ、そういうの肩のムニン様が教えてくれるのか?」

「うん…そう…かな?」


 僕が返事に困っていると。


「むに!むに!」


 冬羽だけではない理由でまんまるな、職業食っちゃ寝の子カラスが、上機嫌な声で鳴いた。


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― 新着の感想 ―
つまりこの村の発展はムニ様の助言ということか……。 おい野郎ども、トールというガキに助言をするムニ様を攫ってこい!ムニ様がいればうちの村は繁栄間違いなしよ! トールというガキか?そいつも色々と知ってそ…
既にヴァルハラ呼ばわりされているw w w
ムニはともかくポーチや家なトンボつくったの全部トールだと知ったらびっくりだろうは
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