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転生したらヴァイキングの農民でした。文化勝利を目指します  作者: ダイスケ
第7章:トールステイン大王伝記征討編

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第113話 子供達が働いて守る村 7歳 夏

「うーん眠い…エリン姉、朝の見回りいくよー」

「はーい。馬の方準備するから、先に出ててー」


 村の男衆が大民会で出払っている間は、子供達だけで村を警備する。

 僕もエリン姉と馬に乗って朝の見回りだ。


「出かけるよ―」

「…」

「出るよ―」

「…むに」


 部屋の隅の黒い羽毛の塊に声をかけるけれど、返事が鈍い。

 ムニが止まり木で拗ねてるんだ。


「トール、ムニったら大変だったのよう。あなたに置いて行かれた、って昨日はもう拗ねて拗ねて。大好きな干したヘイゼルナッツまで食べなかったんだから」


 母ちゃんが昨日のムニの様子について教えてくれた。

 昨日は疲れて遅く帰ってきたから、そのまま寝ちゃったのも良くなかったんだなあ。


「母ちゃん、だって昨日は村長さんの長屋敷で大人達との大事な話し合いだったんだもの。ムニを連れて行ったらなんて言われたものかわからないじゃない」

「それはムニにはわからないことじゃない?」

「そうなんだけどさあ、ムニよう。機嫌なおせよ。次からはもう置いていったりしないから。な?」

「…ふぎん」


 懸命におやつで機嫌を取ったら、不承不承という感じで肩に乗ってきた。

 まるで子供だなあ。いや子供なのか。

 考えてみれば、猫のベーグルが咥えて来てから、まだ大して日にちが経ってないものなあ。

 すっかり家に馴染んでいるので、ずっと昔からいるような気になってた。


「にゃん」


 とうのベーグルは、と言えば。

 誇らしげにネズミの死骸を3匹分、寝台の傍に綺麗に並べていた。


「…偉いぞ、ベーグル」


 僕は家猫の働きに報いるため、母ちゃんから貰ったおやつを与える。

 ベーグルは、ご苦労、とでも言いたげに僕を一瞥すると、長い尻尾をぴんと立てたまま外へ出ていった。

 おそらく冬の家の巡回へ向かうのだろう。

 ベーグルは自分の仕事に誇りを持っている猫なのだ。


「トールー!馬の準備できたわよ―!」

「はーい!今行くー!」

「ふぎん!むに!」


 我が家の朝は喧しく忙しい。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 ぷらん。ぷらん。


 馬での見回り。

 僕は相変わらず鐙に足が届かないので、エリン姉の前に載せてもらっている。

 その右手の視界には、さっきから長い棒がぶらぶらと揺れていて危なっかしい。


「エリン姉。その槍、ちょっと持ちにくそうだね」

「…そうね。大人達って槍を運ぶ時どうしているのかしら?」

「どうだろう?石突を鞍とか鐙に引っ掛けて縦にして馬に乗ってるのを、長屋敷の綴織壁掛タペストリで見たことがあるような…」

「こんな感じ?」


 エリン姉は、馬場の見回りに短槍を持ち始めた。

 ただ、短い槍とは言っても2メートル近くはあるものだから、子供の片手保持ではなかなか安定しないので苦労しているみたい。


 左手で手綱を持ち、右手で槍を持つだけで精一杯という感じだ。

 それなのに意地でも槍を手放さないのは、先日のはぐれ狼相手に何もできなかったことが、よほどに悔しかったらしい。

 僕も石袋と石投げ用の棒を持たされてる。


「なにか変わったことはあった?」

「なかったよ!」

「ありませーん!」


 馬で見回りながら、地区を警備する少年戦士団のリーダーから報告を受ける。

 村を5区に分けたうち、僕達の担当はムニン区とフギン区だ。


「おーれたちは フギン隊! フギン隊!

 盾を叩け!敵を追い払え!

 フギン!フギン!

 村を守る 戦士だ! 戦士だ!

 フギン!フギン!

 オーディンのカラスのように!

 怪しい影を見つけたら 角笛吹いて知らせるぞ!

 フギン!フギン!

 おーれたちは フギン隊! フギン隊!」


 盾を叩き、勇ましく歌いながら少年戦士団が去っていく。

 あの歌は僕が一晩で考えました。

 単純な歌詞なので心配だったけれど、それが良かったみたい。

 あんまり難しい歌にしても、子供達は憶えられないからね。

 勇ましく盾が叩けて満足らしい。

 

 他の4隊分も曲は同じで、少しずつ歌詞を変えるだけで勘弁してもらった。

 気に入らなかったら自分たちで変えればいいし。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 一通り見回りを終えると、浜で選抜投擲手の子供達と一緒に訓練をする。


「そーれ!あたれーっ!」

「あたり!逃げろ―っ!」


 浜から船で上陸してきた山賊を想定した人間大の藁人形へ遠距離から両手を使い長い棒を用いて皮のボールの投擲を行い、命中結果を待たずに走って逃げる。

 生石灰を使い相手に嫌がらせを行うための、ヒットアンドアウェイの訓練だ。


 今日は、僕とエリン姉も馬上で訓練に加わる。

 エリン姉は左手で手綱を操り、右手の槍を構えたまま藁人形に近づき、サッと槍を投げたら左旋回して逃げる。

 カンタブリアン・サークルと呼ばれる槍投げ騎兵の基本運動だね。


「あー!あたらなーい!」 


 当たり前だけれど、簡単にはいかない。

 熟練の騎馬戦士だけが出来る戦術だもの。昨日今日、乗馬を始めたばかりの女子供に出来るはずもなく。


「トール、あなたが石を投げなさい!私が馬を操るから!」

「えー!?」


 投げ槍が難しいとみるや、エリン姉は僕に攻撃担当になれと無茶を言う。


「はい!今投げて!」

「えーい!」


 馬の勢いを利用して棒を用いて投擲した石は思いのほか勢いよく飛び…


 ぽちゃり。


 海に落ちた。


「…わたし、槍投げをものにするわ」

「そうだね…」


 我ながら、ここまで的を外すとは思わなかった。


「ふぎん!ふぎん!むに!むに!」

「…ぐぬぬ」


 ムニのやつめ。

 そういう態度を取るならまた家に置いていくからな。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


「ああ疲れた。ちょっと休憩」


 長時間しゃがんで草刈りをしていると腰と膝が痛くなる。

 どさりと座り込んで休憩していると、夏の爽やかな風がさわさわと吹き渡る。


「あー涼しい」


 ぼんやりと馬が遠慮なくシロツメクサをモリモリと食べている様子を眺める。

 夏は草刈りの季節。畑の雑草を抜き、牧草を刈って冬の家畜のための干し草を出来るだけ沢山作っておかないといけないのだ。

 今年は馬も増える予定だし、なおさらだね。


「うーん手が足りない…」


 農作業に手が足りないし、牧草づくりにはもっと手が足りてない。

 村長さんのところの奴隷の人を貸出して欲しいけれど、あちらも手が足りていないだろうしなあ。


 誰だよ、こんな季節に大民会をやろうとか言い出したのは。

 きっと手を動かさない貴族様達だな。

 まったく。貴族の我儘で迷惑をするのは、いつも庶民なんだから。


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯


 懸命に働いているうちに夕方になる。

 北方の夏は、夕方でも日が高いので時間経過がわかりにくい。

 だんだんと青い夕方の時間になってくると、シロツメクサの花の白い絨毯がよく映える。去年、意地になって植えたものだけれど、今年もよく咲いてくれている。

 蜜蜂が夏の豊かさを逃さないよう懸命に花の蜜を求めて飛び回っている。


「そろそろ蜜蜂の巣箱から蜂蜜をとるかなあ」


 交易用に薬草蜂蜜酒と医薬品を増産する時期かもしれない。

 全ては父ちゃん達が帰ってきてからのことになるけれど。


 僕はいっこうに暗くならない北方の空の、南東の方角を見やる。

 たぶんあの方角の空の下に、父ちゃん達がいるはずなのだ。

 今頃はクナトルレイクの試合をして、片端から他のチームをやっつけて無双している頃だろうか。

 それとも他の村からの逆恨みの報復に備えて、村長達が盾を構え斧を研いでいる頃だろうか。


「さあて。夕方の見回りに出かけるかな」

「ふぎん!ふぎん!」


 僕は尻についた土をはたいて立ち上がる。


 フィヨルドに点在する家々からは炊事の煙が立ち上り、 遠くからは子供戦士団が盾を叩きながらの歌声が聞こえてきていた。

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― 新着の感想 ―
まぁ、子どもだよね~って腕前で、微笑ましい日常(笑)
そういえば他の家にあげたクローバーの種は実ったのかな?
またなんか「思いつく」のかと思ったけど無かった。 良かったね
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