21:説教と治療と優しさと
毎度閲覧等ありがとうございます。
更新がかなり遅いこの作品を未だ読んで下さり本当にありがたいです。
我に帰ったガイが顔を真っ赤にしながら俺をポカポカと殴って数分。
「~…!~~…!」
「む?」
俺の耳が、遠くから何かしらの音を拾った。
「何だ?」
俺の様子に気づいたガイがようやくポカポカを止めてくれた。
まぁこれしきの戯れ合いくらい痛かないんだがな。
「いや…なんか既視感が…」
「ギイイルウウウウバアアアアアトオオオオオオオ!!」
俺は聞き覚えのある声に思わず真っ青になり、全身が滝の様な冷や汗でビッシャリになった。
こ の 声 は ……
「また勝手な事しやがったな!!!この馬鹿者があああ!!」
「ギャアアアア!!!師匠ぉぉぉ!!」
まるで鬼のような形相の師匠が、土偶の馬みたいな気の抜けた顔した馬ゴーレムが引く馬車を操りながらこちらに向かってきた。
鬼気迫るとはこういう場面を言うのかと頭の隅で妙な考えが過ぎった。
「!!義兄さん居た!!居たよアリス!!」
「やっぱり…早速ペンダントが役に立ちましたわね!」
「今回ばかりはお手柄ですね、アリス。僕も魔力を貸した甲斐がありますよ。」
「…ギル、無事…安心した。」
「あわわ…が、ガイも無事そう…良かった〜。」
俺が真っ青な顔で眺めていると、その馬車の窓から他の皆がひょこひょこと小さな顔が出してきた。
皆の顔色は驚いたり泣きそうな顔、心底ホッとした様な顔など様々だ。
「(あぁ…鬼の後ろに天使が見える…)」
恐怖と可愛さが同時にやってきた状況に、俺の表情は乾いた笑みを浮かべるが思わず目からはホロリと涙が一粒溢れていた。
どっちの涙なんだこれ。
「……でも何で皆揃ってんだ?」
「…さー?オレ様の事が心配だったのか?」
俺の疑問の呟きに、ガイはフフンッと偉そうに腕を組みながら応える。
うーん、皆のあの初対面の様子だとそれは無さそうだけどなぁ。
あ、でもルーファスは滅茶苦茶心配してんだろうな。泣きそうになってるし。
「お前また失礼な事考えてるだろ。」
「え?何が?」
「………」
ガイに無言でめっちゃ睨まれた。
俺そんなに正直な顔してんのかな?
まぁそれは置いといて、なんかペンダントがどうとか聞こえたような…?
俺はシャツの中に入れ込んでいた胸元のペンダントを取り出すと、鳥の装飾部分を良く視てみた。
すると、ペンダントから微弱な魔力を感じられた。
更に良く見てみると鳥の目の部分につけられている翠色の宝石が、僅かに光ってチカチカしている。
……あれ?もしかしてこのペンダント、探知機能付き?
え?貰った時何にも視えなかったんだけど、そんなの有りなの?
そういえば風属性って、探知に優れた魔法も使えるんだっけ?
広い範囲の音を捉えて聞けるとかなんとかカルロスが言ってたような…?
俺は、アリスがペンダントをくれた時の笑顔を思い出す。
『義兄さまが必ず戻ってくる様に』
…………………………。
…アリス、まさかその為にこんなに難しそうな事やってのけたのか…?
感情発動型で魔力のコントロールも難しいのに…?
アリス、恐ろしい子…!
そんな風に驚愕していると、師匠が率いてきた馬車はあっと言う間に俺達の目の前に到着した。
そして師匠は、ヒラリと流れる様な動きで馬車から飛び降り俺の正面に着地した。
その光景がスローモーションで見えてくる。
年の割に滑らかな動きをする師匠のあまりの華麗さに、俺は思わず「バケモノ…」と声に出しながら呆けてその様子を見守っていた。
きっと疲れていたのだろう。
普段の俺ならこんな状況、師匠に背を向けて物凄い勢いで逃げ出した筈だ。
俺はその場から動けなかった、というかその発想が浮かばなかった。
頭が回ってなかったに違いない。
そしてそんな呆けている俺の脳天に、そのままの勢いで師匠の拳骨が下りてきた。
ガツン!という音と共に俺の目の前で火花が散った。
「いいいいいってええええええぇぇっ!!」
「この馬鹿!!また独断で勝手しやがって!この頭にはそんなに容量がねぇのか!?」
「だからってまた殴る!?また更にバカになるじゃん!」
「お前はもう救いようがない!死んでも治らん!」
「諦められた!ナンテコッタ!」
「治らんならもう仕方ないからな!私は遠慮なく殴る!」
「宣告もされた!逃げようがねぇ!」
ギャアギャアとやり取りをする俺達に、側にいたガイは俺達を凝視しぽかんと口を開けたまま固まっていた。
そんな様子のガイに、続けて馬車から降りてきたアリス達と、それに紛れていたルーファスが近寄ってきた。
そしてガイに自身の上着を着せると、泣きそうな顔をしながらペシリ、と頬を張った。
流石に予想外だった為、俺と師匠を含めその場に居た全員が驚愕した。
ガイ自身も何をされたのか理解できず呆然としていた。
「…ガイのばか!心配したんだよ!」
ルーファスは大きな眼鏡の奥に光る金の瞳から、大粒の涙をポロポロと流して大声を出した。
当のガイは、張られた頬を抑え呆けている。
ルーファスは眼鏡を外すと、グシグシと涙を拭った。
そしてガイに両手を伸ばすと、そのまま近づいてギュッ…とガイに抱きついた。
「無事でよかったぁ…」
グズグズと泣き続けるルーファスに、ガイは口をはくはくとさせ何か言いたげだったが、しばらくしてふぅと溜息を付くとルーファスの背中をトントンと叩き宥めだした。
「…ゴメン。」
そしてガイもポロリと涙を流す。
互いに熱い抱擁を交わしながら、2人は泣きながらも静かに無事を確認し合った。
…そんな優しい場面にその場に居る者達はホッとした表情を浮かべる。
そして俺は思わず。
「…ギルバート、どうした。物凄く気持ち悪い顔をしているぞ。」
ニヤニヤしてしまっていたらしい。
師匠が怪訝そうな表情で俺を見ていた。
スマン師匠。
いきなりの萌えに俺の表情筋が仕事を放棄したんだ。
疲れてる所で、可愛い子供達のこの挙動。
尊さが限界突破したんだ。
俺は思わず師匠から無言で顔を背けた。
そんな俺の気持ち悪い心情を知らないアリス達は、無邪気にも次々と俺に抱き着いてきた。
「義兄さま!ご無事で何よりですわ!」
「良かった…義兄さん…本当に…」
「ギルに何かあったらと思うと…生きた心地がしなかったよ…」
「…ギル…」
抱き着きながらもグスリと鼻を鳴らすアリス達に、俺は思わずウルッと目を潤ませた。
「皆ぁ…」
「…もし義兄さまに何かあったら…」
「義兄さんに危害を加えた奴ら…」
「絶対許さないよ…フフフ…」
「(無言の頷き)」
わお!超不穏なお顔!
無邪気な心配より相手の殲滅希望かな!?
「えーっと、うん。俺超無事。マジで。うん。犯人も一応は捕まえてるし。うん。心配しないで。ね?」
俺は多少片言にながらも自分の無事を4人に伝えた。
その言葉に4人の不穏な表情は成りを潜め、ウルウルと目を潤ませた可愛らしい表情に戻った。
う、顔が良い…可愛らしい…ここだけめちゃくちゃ煌びやかだな…
俺は思わず目をしばしばさせる。
そうしていると、少し離れた所で様子を見ていた水大蛇が頭にラヴィを乗っけたままニョロリと俺に近付いてきた。
「うわ。おぉ、お前か、ビックリした。」
「義兄さんこの蛇…」
「義兄さまの魔力を感じますわ。あと、他にも魔力が混じってますわね。」
「…あ、これ僕の魔力…?」
「あぁランスの魔力ですか。しかし何故この様なものが…?それに、中に人が居ますね。」
優秀すぎる弟妹と友人達により俺が作った水大蛇は恐れられることも無くあっという間に看破されてしまった。
そして俺はガイが攫われてから先程までの出来事を全員に説明した。
「まぁ!何て卑劣な!」
「つまり、この中の子たち皆連れ去られた子たちって事だね。」
「…酷い。」
「…人攫いの事件はままあるけど、実際に対面すると腹立だしいものだね。」
「…ああ、ガイと協力して何とか逃げ出せはしたけど…いつの間にか奴は姿を消してしまって、何処に潜んでいるか分からないんだ。」
「ふむ…その『骸骨男』に関しては一旦警備隊に任せた方が良さそうだな。とにかくこの子達に応急処置を行った方がいいか…ギルバート。一旦皆出してくれ、妖精石で治療しよう。」
師匠は胸元から妖精石を取り出し、指示を出す。
そしてその様子を心配そうに見守っていたガイとルーファスの二人に、師匠は近寄って腰を降ろしてガイの顔を覗き込む様に話しかけた。
「ガイ王子、お怪我は…」
「お、俺は平気だ。ギルのお陰でな。」
「そうですか、ですが疲労の色が見えますね。今回復を…」
「…いや、俺は少し休めば大丈夫だ。それより、傷付いた子達を治すのに使ってくれ。」
「…承知しました。お心遣い感謝します。では馬車の中へ、ルーファス王子、ガイ王子をお任せしても?」
「は、はい。大丈夫です。」
疲労が溜まっていたガイはルーファスに支えられながら馬車の中へ入っていった。
そして本当に疲れて居たのかガイはすぐに倒れるように眠ってしまったらしい。
「…さて、この犯人達はどうする?」
俺は2人を見送ると、師匠に判断を仰ぐ。
「見た感じまだ気を失っている様だな。クリス、アリス、私は治療をするからお前たちで一応気を付けながら縛ってくれるか?」
「「分かりました。」」
俺は水大蛇に指示を出し、体に取り込ませていた全員をその場に吐き出して貰った。
子供達はまるで体の下からすり抜ける様にゆっくりと降ろされ地面に横たわらせた。
そして犯人達は雑にペッと吐き出させた。
うう、とか唸ってるけど全然大丈夫そうだな。ヨカッタヨカッタ。
そして水大蛇は役目を終えたと言わんばかりにドロリと溶けて消えてしまった。
少し愛着が湧きつつあったので何だか少し寂しく感じた。
そしてアリスとクリスが3人を縛る間、師匠が一人一人を妖精石で治療していく。
「皆衰弱も酷いが、この子は打撲が酷いな…」
「治りそう?」
「あぁ、骨が折れてる様子は無さそうだし、傷そのものは持ってる妖精石で間に合いそうだ。…ただ問題は、精神的なものか。」
それはそうだ、小さな子供がこんな事件に巻き込まれ傷つけられた。
心に深いトラウマを植え付けられた事だろう。
妖精石は傷は治せるが精神的なものはどうしょうもない。
「とにかく連れ帰る。今は眠っているが、起きた時何が起きるか分からんしな。すぐに病院に連れて行こう。」
師匠は魔法で先程より大きめな馬車を作り上げると、一旦馬のゴーレムを人型のゴーレムに変え子供達を馬車の中へ運び始めた。
そして師匠は今度は俺の顔を覗き込む様に屈んで聞いてきた。
「ギル。お前は大丈夫か?」
「俺もちょっと疲れたぐらいだよ。怪我は…擦り傷がちょっとあるかな?まぁこれくらいならすぐ治るだろうけど。」
「そうか、ならお前もちょっと休め。…過程はどうであれ、王子を無事に守り通した事、子供達を救った事、どれもよくやった。無茶はし過ぎだがな。」
師匠はガシガシと俺の頭を撫でてくれた。
俺は、それに少し安心してしまったのか急に眠気が襲ってきた。
フラリとよろめいた俺に気付いたクリスとアリスが俺を支えてくれる。
「「義兄さん(さま)!」」
「んー…悪い、眠気が急に…」
「無理もないよ…ギル、魔力も大分使い切ってるみたいだし…」
カルロスが俺の髪を梳きながら顔色を確認してくる。
「ランス。ギルの側に居てあげてくれる?ランスは魔力量多いし、同じ属性同士が側にいた方が魔力の回復も早いと思うから…」
「ん…」
カルロスの言葉にランスはコクリと頷く。
俺は両脇をクリスとアリスに支えられながら馬車へと乗り込んだ。
そこには先に休んでいるガイと、その隣で肩にガイを乗せながらもスヤスヤと眠っているルーファスが居た。
ルーファスもかなり心配しただろうし心労が溜まったのだろうか。
そしてその隣に座った俺の隣にランスも座ると、ポンポンと自分の膝を叩いて促す。
俺は意味を測りかねて首を傾げる。
「ここ、頭乗せる。」
滅茶苦茶キラキラした瞳をこちらに向けながらランスは告げてきた。
…我が国の王子に膝枕してもらうとかかなりヤバイ状況だなこれ。
頭の片隅でそう考えるが、あまりの眠たさに俺は考えるのを放棄し、結局促されるままに頭を乗せた。
…何か気のせいか、3人が座る向かい側の席からギリギリ音が聞こえんな。何の音だろ?
「…ランス。」
「…ん?何?」
俺は妙な音が気になりながらも、眠気と戦いながらランスに謝ろうと声を掛ける。
「くれた腕輪…魔力勝手に借りた、でもちゃんと守ってくれたよ。ありがとな。でも本来の使い方しなかったから、なんかゴメンな…」
「…そんなのいいよ。ギルの役に立てた、ならよかった。」
「うん。」
ランスは俺の髪を梳くようにして頭を撫でてくれた。
俺は気持ちよさに何だか意識を保っているのが辛くなってきた。
「…おやすみ、ギル…いい夢を。」
「ん…」
眠りに落ちる直前、何か温かく柔らかいものが額に触れた気がした。
その後、結局主犯格の『骸骨男』については何も掴めなかった。
今回で一旦ガイ誘拐編は終わりですが、次回は後日談がまだ続きます。
本当は一話に纏めたかったんですがどうしても長々となってしまい二話に分けました。
なかなか話が進まずすいません…いつギル達は学園に入学出来るのか、そしてギルはいつ痩せるのか分かりません…。
※2020/02/17追記
新年明けすぎてすみません…生きてますm(_ _)m
どこにこれ書いていいのか分からなかったので今更ながらここにて生存報告しておきます。
現在執筆は続けていますが諸事情により恐らく4月までは更新が出来ないと思われます。あ、携帯の不具合は(多分)直りました。
また何かあれば恐らくここで報告させて頂きます。待ってくださる方申し訳ありません…。




