18:この状況、ピンチです
※毎度閲覧等ありがとうございます。
相変わらず話が飛び飛びで申し訳ありません。
声の方向へ一目散に走って行ってしまったガイを追いかけ、俺達は更に奥へと向かっていった。
ガイの足は確かに早かったが、持久力は師匠に鍛えられた俺の方が上だった為、追い付くことは容易かった。
本当ならここでガイを止めてすぐにでも逃げるべきだったのだが、ガイに近付くにつれ助けを求める声も先程より鮮明になってきたのが分かり俺は思わずそのまま走り続けていた。
恐らく声の主にかなり近づいてきたのだろう。
そう思うと、このまま逃げるという選択肢に少しの迷いが浮かんでしまった。
そう考えてしまったらもう腹を括って助けに行くしか無いかと思い、途中からはガイと並走する事を決めた。
ちなみにラヴィは、途中までは元の大きさに戻りは飛んでいたのだが、この通路は狭く天井もそこまで高く無いせいか飛びにくかったらしく、俺がガイに追い付いた時にはすでに俺の肩に体を縮こませて張り付いていた。
やれやれ、賢い奴だ。
そうして走り続けていると、奥の方に分厚い鉄格子のような物が見えてきた。
更にその鉄格子の小さな隙間からは、恐らく子供であろう小さな指が少しだけ出ているのが確認出来た。
しかしその手はスルリと内側に消えていってしまった。
「あそこだっ…!あの中に…捕まってるんだ!」
ガイは息を切らせながらもそう告げ、鉄格子へとどうにか近付いた。
ようやくそこへ到着したガイは、普段こんなに走ることがなかったらしく、乱れた息を整える為その場でゼーゼーと深呼吸を繰り返していた。
「だ、大丈夫です?」
ちなみに俺は、このくらいなら息を切らせる何て事はありえないので息を切らしているガイを気遣い背中を撫でていた。
「ぜー…ぜー…おま、なん、いき…っ…」
ガイは息を切らせながらも俺に問いかけてくる。
そりゃ、師匠のあのメニューに比べりゃこれくらい散歩レベルさ。
走り込みなぞ、ウォーミングアップで10キロなんて基本中の基本だ。
…まぁ最初は2キロ程でグロッキーになってたけど。
運動なんぞまともにしてこなかった最底辺持久力は勿論、体のムダ肉の重みが更なるウェイトになり、普通より負荷が上乗せされた状態で走ってたからな。
…いやぁ、よくやりつづけたなぁ俺…
お陰で素早さより持久力自慢なデブになったよ。
そんな事を考えながらトレーニングを思い出し、思わず遠い目をするのだった。
そんな俺は息を整えているガイから鉄格子の中へ不意に視線を動かした。
「……!!」
その隙間の中が見えた瞬間、思わず俺は息を呑んでしまった。
「はぁ…はぁ…な、なん…?」
俺の様子に顔を上げようとしたガイの目を、俺は反射的に塞いだ。
「ブフッ…!何すん…!」
「見るな。」
「はぁ…!?」
「これは…さすがに子供にはまだ早い…」
「なっ、お前だって子供…」
「いいから、とにかく…見ない方が良い。」
俺が見たもの。それは、数人の子供達だった。
しかしその肢体はガリガリに細って壁になだれかかっている者、ボロボロの体に顔を腫らし横たわっている者、部屋の隅で踞ってすすり泣く者などあまりにも凄惨な状況だった。
小説の内容から多少は予想していたものの、実際にこんな風に目の当たりにするとかなり冷や汗が止まらなかった。
「…け、て。」
その中の内のすすり泣いていた少女が、こちらに気付いたのか声を上げた。
どうやら鉄格子の隙間から手を出していたのはこの娘だったらしい。
「た、す…け…ぉ…ち…か、ぇ…て…」
少し掠れたその声や真っ赤に腫れたその目からも、その少女がずっと泣き続けていた事は確かだった。
俺は、あまりの痛々しさに胸がきゅう、と締め付けられるようだった。
「…うん。助けに来たよ。早く家に帰ろう…」
そんな状況を目の当たりにしてしまったからか、俺は少女の言葉に思わずそう返事を返してしまった。
少女はその言葉に目を見開くと、驚いた様子でこちらをずっと見つめていた。
すると、目隠しをしていたガイが俺に話し掛けて来た。
「…おい、いい加減手を離せ。」
「けど…」
「…お前はオレがショックを受けるだろうと思ってるだろーが、あまりオレを舐めるな。今の話し声を聞いて、酷い状況である事くらいは理解できる。…早く助けないといけねーんだろ。」
その言葉を聞き、俺は思わず目を見開いた。
糞ガキと言える部分も確かにあるが、やはり彼は一国の王子なのだと感じた。
それに、確かにこのまま彼の目を隠し続けたままでは、彼らを救う事など出来ないだろう。
そう感じた俺は、仕方なくガイの目隠しをとることにした。
「ではガイ…王子。今から外しますよ。」
「あぁ…」
ガイの返事を聞くと、俺はゆっくりとその手を退かした。
ガイがその光景を見た瞬間、あまりの光景に息を呑んだのが感じられた。
そして、両手を力一杯握りしめた。
「クソッ…何でこんな…!」
「ガイ王子。気持ちは分かりますが、今は…」
「分かってる!!こんな所からはさっさと出るぞ!」
ガイは悔しそうな表情を浮かべながらも、やたらと当たり散らすような事はしなかった。
小説で前情報を得ていた俺でさえ一瞬ショックで血の気が引いたのだから、本来普通の子供なら泣き出しても不思議ではない。
彼はなかなかに気丈な人間なのだと感じた。
「とにかくすぐにでもここから出すぞ!」
そう言うと、ガイは檻に取り付けられた南京錠を開けようとした。
「…ックッソ!コイツ中々外れねー!」
ガチャガチャと我武者羅に動かし外そうとするが
、その南京錠は大人の手より少し大きめな物であり、子供の手で多少手荒にした所で全くビクともしなかった。
「畜生…こんな物…オレの魔法で吹き飛ばして…」
「わー!王子待った待った!!」
挙げ句鍵を魔法で爆発させようとするガイを俺は慌てて止めた。
「爆発させて子供達が怪我したらヤバイから!爆発はダメ!絶対!」
「む、ならどうすんだ。」
「う~ん…」
剥れるガイはとりあえず置いておいて、俺は南京錠をしっかり確認してみた。
どうやら鍵穴式南京錠らしく、下の方には鍵穴が見えた。
「(ピッキングでもしてみるか…?いや、そんなのした事ないし、上手く出来るか…鍵を複製…いや元の鍵のイメージが無いから出来ないよな…)」
しばらくうんうん唸って居たが、俺は一つ案が閃いた。
「そうだ、壊そう。」
「あ?だーかーらー、壊すもんなんか…」
俺は、ガイが言い終わる前に自身の魔法で丁度良いサイズのトンカチを作り出した。
無論、硬さはかなり高めの物だ。
「手首のスナップを利かせて…フン!!」
俺はそのトンカチを南京錠の接合部目掛けて振り下ろした。
ガキンッと大きな音は立てたが、南京錠はまだ壊れない。
「もういっちょ…フン!!」
再度振り下ろすと、ガキンッという音と共にガチャンッという鍵が開いた音を立てた。
「おー、開いた開いた…」
俺は、ブラリとただ引っ掛かっているだけとなった南京錠を外すと、そこら辺に投げ捨てた。
「開きましたよ、ガイ王子。」
俺がガイの方を振り返ると、ガイは口をあんぐりと開けてこちらを見ていた。
「??どうしました?」
「おま、詠唱…そういえばさっきも…」
「ん?あぁ、俺は基本詠唱はしなくても出来るんです。魔法ってイメージさえ出来てれば詠唱は特に必要無いので。」
「そ、れに、それって氷で作ってんだよな?何で氷がそんなに固くなるんだ!」
ガイは壊れて拉げてしまった南京錠を手にしながら問うてきた。
「えー?そんなに驚く事です?凍ったバナナで釘が打てるんだから、そんなに驚く事無いと思うんですけど…」
「凍ったバナナ…?ってか、城の兵ですら魔法で武器を形作るのは魔力のコントロールが高度であり至難とされるんだぞ!?それをお前みたいな奴が、こんなに簡単に作り上げるなんて…」
……え?そんなに難しいもんか?
まぁ確かに、俺もランスとの協調魔法で感覚を掴んだからなんとなーく出来るようなものだし、普通は難しいものなのか?
こう、ランドセル大の水を思いっきりギュッと圧縮するイメージをするとこんな風になるんだけど、他の人はやり方が違うんだろうか?
「とにかくそれは今置いておきましょう。今は彼らを助けることが先決です。」
「お、おー…」
釈然としない様子ではあったが、子供達の事を話題にすると、ガイは大人しく檻の中に入っていった。
そして俺達は、それぞれ手分けしてその場にあった布の切れはしなどを使い簡素な手当を施した。
ざっと見た感じ、殴られていた子以外はそれほど目立った外傷はなく軽度のすり傷ぐらいな物だった。
それよりも、皆酷く喉の渇きを訴えていたので俺は魔法でコップ入りの水を作り与えた。
恐らく皆栄養失調だけでなく、脱水症状も起こしていたのだろう。
一人だけ自分は良いと断った子供も居たが、その子はどうやら嘔吐していた様で傍に吐瀉物が見られた。
俺は慌ててその子の顔を支えながらしっかりと確認する。
先程の返事も呂律が上手く回っておらず、目の前にいる俺の顔を見るように伝えても曖昧な返事しかしない。
明らかにこの子の方が恐重度の脱水を起こしているのだろう。
実はこういった知識は前世で仲の良かった看護師さんから、調子が良い日に調子に乗って外で遊んでいる際脱水症状にならないようよく脅され…注意されていたのだ。
その忠告の直後に、夏によくある脱水症状で病院に運ばれてきた患者さんを見たので本当に怖かったのを覚えている。
救急隊員に運ばれていった焦点も合わず、腕がダラリと脱力していたあの光景は小さかった俺にはトラウマ物だった。
あの時の患者さんとこの子の光景がダブり、少し血の気が引いた。
だが怖がっている場合では無い、どうにか対処しなくてはと考える。
恐らくだだの水を与えただけではミネラル等が足らないハズだ。
本来なら経口補水液があればいいのだがそれもない。
どうするか考えた結果、俺は一か八かの試みをしてみる。
俺の属性は水、そして人間は約80%は水分と聞いたことがある。
つまり俺の体の水分からミネラルを取り出すという事だ。
本来俺の体内から抽出したものなど気持ち悪いだろうし、かなり馬鹿げた事出来るとは思えないが、補水液が無いとこの子はきっと危ないだろう。
俺は人差し指の先を水の入ったコップの上に持っていき、そこに魔力を集中する。
「(血流を…俺の指先に集めて、ミネラル…塩分…集める…)」
そうやってしばらく集中していると、ポタリと指先から水が垂れてきた。
「…!で、出来た…?」
俺は出てきた水を少し舐めて確認してみると、よく飲んでいたスポーツドリンクの様な甘じょっぱさを感じた。
どうやらちゃんとイメージ通りうまく抽出されたらしい。
手応えを感じた俺は、このまま続けて先程の通りの魔法を行った。
そうして出来上がった補水液をその子に飲ませようとしたのだが、上手く口を窄める事が出来ない様で口の端から溢れ落ちていってしまっていた。
どうにか出来ないかと思った所で俺は、コップの形を急須の形に作り直す事にした。
入院中、起き上がれない時に用意してもらった『吸飲み』と言う容器を再現したのだ。
そのお陰か最初は口の端から溢れていたが、どうにか口の中に入れる事は成功した。
後の飲み込み自体はどうにか出来ている様なのでホッとした。
もし少しでもここに来るのが遅れたなら、この子は危なかったかもしれない。
そう考えると、もしかしたらガイの判断の方が正しかったのかもしれないと思えた。
けれど、この水だけではしっかりと脱水症状に対応する事は出来ない。
妖精石さえ手に入れれば、もう少しましな治療が出来る筈だ。
とにかくなるべく早くにここから出なくては。
そして他にも、強く殴られていた子はどうやら顔を中心に殴られていたらしく、体には大して怪我はなかった。
周りの子達の話を纏めると、どうやらこの子は2日前に捕まった子供らしく、気の強いこの子は拐ってきた男の一人に食って掛かり返り討ちにされたらしい。
あの3人かと聞けばどうやら違うらしく、皆一様に『骸骨男』にやられたとの事だった。
『骸骨男』
その名称には聞き覚えがあった。
『骸骨男』とは、この世界の絵本に出てくる悪役の名前であり、子供を拐って食べてしまうというよくありそうな話の怪物だ。
俺も子供…物心ついた時ぐらいから「悪い事をすると骸骨男に食べられちゃうわよ」としつけで言い聞かせられていたくらい有名な話だ。
その骸骨男の容貌は顔が骨で出来ており、体は腐っているゾンビのようなものだという。
俺的にはモンスターのスケルトン+ゾンビって感じのイメージだ。
その殴ってきた男は物語の骸骨男の様に、顔面に骨のマスクを被った男らしく、どうやらその男と先程の3人組が今回の犯人グループらしい。
つまり骸骨男がボスで、さっきの奴らはその手下っていう訳か。
その3人は基本は拐ってくるだけで、子供達には手を上げたりはしないらしい。
寧ろ骸骨男が何かする前には止めるような言動も聞かれたそうだが、結局逆らえずそそくさと何処かへ消えてしまうのだそうだ。
なるほど、アイツら典型的な子悪党タイプって所か。
その他にも骸骨男について聞きたかったが、その話をしようとすると皆一様に真っ青な顔で震えだし、聞き出す所では無くなってしまった。
これ以上はこの子達の精神的にも辛いだろうと判断し、俺は一旦詮索を止めることにした。
そして、改めて周りを見渡し脱出法を考え始めた。
「(出入口は他になさそうだな…壊せそうな所も…壁は、完全に地面を掘って固めましたって感じだ。結構ボロボロでそのまま全体が崩れたら終わりだな。)」
俺は、壁に軽く触れてみるが触れた所からポロポロと石が崩れてきた。
この鉄格子は天然洞窟のような中に無理矢理捩じ込んで作り上げた様子で、岩と深く差し込まれた鉄格子の接合部はヒビ割れが出来ている。
正直頑丈とは言いづらい出来のように見えた。
「(問題はどうやって運ぶか、だ。子供の合計は6人程、全員をラヴィに乗せる事は流石に出来ない。俺が2人とガイが1人背負って半分運んだにしてもラヴィが飛んで逃げるのは難しいし…)」
俺は顎に手を当てながらしばらく熟考する。
そこでふと、自分の腕に嵌まっているバングルがキラリと光ったのに気がついた。
「(…ランスのくれたバングル…そういえばこれってランスの魔力が込められてるんだよな…?)」
俺はそのバングルに手を添えてみると、以前ランスと協調魔法を使った時のような魔力の流れを感じた。
「…この魔力を引き出せれば…うん、やってみるか。」
俺は1つ頷くとバングルに触れながら、試してみたかったことをイメージしてみる。
試したイメージとしては、妖精石から魔力を引き出す感じに近いかもしれない。
けれど、そのイメージではイマイチ上手く引き出せそうになかった。
そもそも願いに合わせて大抵の事は何でも出来る妖精石と違い、これはランスの願いから魔力を直接吹き込まれた物なので、本来の使い方が違うからだろう。
「本来の…」
そうだ、これはランスが『俺を守りたい』という想いが込められ作られている。
「(守る…俺を…そう俺だって…この子達を…守りたい…)」
そう考えていると突如、バングルから熱が発せらるのを感じた。
「(…!!これは、いけるかも!)」
俺はそうやって感じた魔力を、体に取り込む様に思い浮かべ、取り込んだそれをそのまま放出するようにイメージし、手を前に翳した。
すると少しずつ地面に水の塊が形成され、ボコボコと音を立てて数珠のように連なりながら、それぞれが徐々に大きくなっていった。
そのボコボコと形成されている水の塊は、暫くするとようやく形が定まりだし、最後には大きな大蛇が出来上がっていた。
その大蛇はシューシューと音を立てており、まるで本当に生きているようにも見えた。
…ただ、本物よりかなりデフォルメされており、全体的にまるっとした可愛らしい感じの蛇になっていた。
「おぉ…思ったより完成度高くね?さっすがランスの魔力…ハンパねぇな。」
俺は大蛇を見上げながらうんうんと頷いた。
しかしこれで判明したが、どうやらこのバングルのように想いの込められて作られた魔法具には、作り手と同じ『想い』を抱く事で協調魔法と似た効果が得られるようだ。
これは中々に有用性のある物だ。
ただ恐らくこれはランスの本来意図した使い方では無いだろうから、そこに関しては大変申し訳無い。
しかも緊急事態とはいえこんな風に魔力を使った事で、本来の用途として発動しない可能性もある。
これは後でランスには謝らなければならないかもしれない。
そんな事を考えていると、作り上げた水大蛇が俺の指示を促す様にシューシューと鳴きながら舌で頬をペロリと嘗めてきた。
なんだか蒟蒻みたいにツルリとした感覚である。
生体ではないので唾液はつかなかったのが妙な感覚だ。
「…ななななっ!?」
「ん?」
すると、先程まで不思議なくらい大人しかったガイが、大蛇を指差して顔を真っ青にしていた。
「何でお前、こんな、え?生きて?」
「?どうしました?あ、心配しなくてもコイツ噛みませんって。」
「そっちじゃねーよ!何だコイツ!生きてるみたいじゃねーか!」
どうやら、魔法で大蛇を作り出した事にかなり驚かれたようだ。
「そんなに驚く事ですかね?原理としてはゴーレムと変わりないんスけど。」
「は??ゴーレムだと?」
ガイは目を見開いて大蛇を見上げた。
「ゴーレムって、使用者の意思に従って動く云わば人形のような物、だよな?」
「そうですね。意思を持たない自立型人形って感じになるんですけど、コイツもそんな感じですよ。」
「けど本当に生きてるみたいじゃねーか。それに、オレが知ってるゴーレムって土属性の奴しか使えねー筈だけど…どうなってんだ?」
「土属性の人しか作れないってのは、単純に形が固めやすいのが土属性ってだけです。風や火は形が定まりにくいから見たこと無いかもしれませんが、水属性は固体としても扱えるので作れなくはないんですよ。で、ゴーレムの姿って結局は使用者のイメージなんで、イメージを固めるに当たって基本系が従来のゴーレムの形であるだけであって、形なんてイメージ1つで変わるもんなんですよ。」
俺はある日、ふとよくこの世界で見るゴーレムの形は、皆ほぼ代わり映えのない見た目の煉瓦を積み上げた人形のような姿ばかりなのに疑問を持った。
それで、思わず師匠に聞いてみた所『これが基礎型として習ったからなぁ、あと強そうだろ?』との答えが帰ってきた。
つまり、世間一般的なイメージのゴーレムを作る様に教えられ伝えられ続けた結果がその形らしい。
つまり、イメージ次第では形状を変えられるという事ではないだろうか?
という訳で試してみた。
俺じゃなく、クリスに試して貰ったのだ。
俺はクリスに、拙い絵心のまま描いた大まかなロボットの様なものの図を見せた。
ぶっちゃけ●ン●ムだ。
●ン●ムの強さや動きについて、クリスに身振り手振りを加えながら語ってみたのだ。
ちなみに、この世界にアニメは無いので夢を見たという事にしてある。
「夢を実現してみたい」とクリスに言うと、クリスは二つ返事で了承してくれた。
そして、互いに試行錯誤の末に完成したのだ。
…ちょっと体のバランスが悪く顔がイケメンなゴリラの様な造形になってしまったが、それでもロボットを作ることには成功した。
しかし、全長が3メートル程の大きさに作ってしまい、執事にバレた時には「こんなに大きな物作って!どうするんですか!」と怒られてしまった。
つまり、ゴリラ…じゃなくロボットみたいなのも作れる。
この世界の魔法は、属性に関係なく結構創造性の自由度が高い様なのだ。
なので、好奇心から俺もやってみたのだが、俺は魔力保有量も魔力の出力も程々なので(10段階でいうとクリスが6か7、俺は辛うじて3か4くらい)、頑張ってもランドセル大しか操れず、さらには形を作るのも結構複雑で、それを維持して固めておく事がなかなかに難し過ぎたので『人形の何か』しか出来なかった。
何か、こんなクッキーあったような気がする。
そして眺めていると段々形が崩れ、ウネウネしているその姿が何となく蛇に見えてきた結果、出来たのがこの水蛇だった。
俺は、どうやら想像力は高いらしいが、創造力はあまり高くはないらしい。
クッションやトンカチ、縄などは単純な形なので象りやすいが、自分でイメージした物は一から創造するのが中々難しい。
つまり単純な形は出来るが、それが複雑になると微調整が効かず形が保てないのだ。
大変残念だったが、それでもこういった物が作れたので結果オーライである。
「なのでイメージと創造力さえあれば、どんな物だって作れるんだと思います。」
「…ふーん。」
ガイは俺の説明に納得はした様子だったが、何故だか気に入らないような表情を浮かべていた。
「…"形有りの魔力"ってのは、色々出来んだな。」
「?"形有りの魔力"?」
「"水"と"土"の属性の事だ。逆に"火"と"風"は"形無しの魔力"と呼ばれる。」
「触れるか、触れないか?ですか?」
「知らん。オレの国では昔からそう言われてるらしい。」
「へぇ…何でですかね?」
「だから知らんって言ってんだろーが!!さっさとソイツでどーにかしろ!!」
いきなり不機嫌になったガイは、水大蛇を指差しながら怒鳴ると外方を向いてしまった。
何故か聞きたかったが、確かにモタモタしている場合ではないので、俺は脱出作業を再開する事にした。
何とかギリギリ平成最後の更新となりました。
相変わらずのドン亀更新となりそうですが令和もよろしくお付き合いお願いします。




