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17:ジャストミイイイト!!

※毎度閲覧等ありがとうございます。

毎度タイトル何にするか迷いながら、結局よく分からないタイトルになってる気がします。

息を殺し、物音を立てぬよう慎重に奴らの後を付いていった俺だったが、誘拐犯達はとある一室に入っていったようだった。


離れた場所からでは様子が分からず上手く声も聞こえないので、俺は意を決して物音を立てないようにその部屋の前まで移動する事にした。

そして部屋の前に着くとすぐにドアを背にして貼り付き、その態勢で中の様子を伺う事にした。

すると中ではガチャガチャという何かの金属が擦れ合う音がした後に、一際大きい音でガチャンッと何かが外れた音が聞こえた。


そしてギギィッ…ガタンと何か重い金属が擦れる音と何かが嵌まった音が聞こえると、話し声と共に物音が段々小さくなっていくのを感じた。

俺は完全に物音が聞こえなくなったのを確認すると、ゆっくりとドアを開けた。


その部屋の中は、壁にある古い燭台に蝋燭が立てられており、その僅かな灯火による灯りがユラユラと揺れていた。

その灯りのお陰で窓もない部屋の中がある程度確認出来る程度になっており、俺は床に存在する黒く大きな金属の扉の様なものをしっかりと認める事が出来た。

先程の金属音はどうやらその扉を開けていた音だったらしく、階段が存在するその穴の中から僅かに冷たい風が溢れだしているのが分かった。


「(こんな木造の古屋敷に不釣合な重量感のある金属扉…地下室…いや、地下牢かもな。)」


俺は明かりの少ない暗い階段を覗き込みながら、喉をゴクリと鳴らした。

それは恐怖からではなく、屋敷に忍び込んでから今こうやって見たこともない金属扉を前にして、こんなミステリー小説のような環境が本当にあるのか、という妙な興奮を覚えたからである。


こんな状況で不謹慎かと思うかもしれないが、むしろこんな状況だからこその感情なのである。

病弱だった前世は勿論、転生し未だ10歳にも満たない貴族の少年がこんな体験をする事など滅多と無いので少しは多目に見てほしい。


「…なんか、肝試しみたいだな。」


そういえば前世では小学生位に一度した事があったが、その時ちょっと色々あって…いや()()()()()()か、俺以外皆ビビって大惨事になったんだったなー。

仕方ないよな、()()()()()()()()なんて小さい子に出来る訳ないし。

…そういえば、転生してからそういうの全然無い気が…。


「(…っと、今はそんな事考えてる場合じゃないな。)」


俺は脱線した思考を振り払うと、改めてその階段を見据えた。


正直迷ったのだ。降りるべきか、このまま報告しに戻るべきか。


小説の内容を知っている身としては、相手が人体を物としか見ていないであろう人間なのだという認識もあるので、もう少し冷静になるべきだと頭の隅で考える。


しかし、そんな奴等の所にガイを放置して行って良いものだろうか?

もしかしたら、小説の様に暴力を振るわれ、最悪の場合になる事も考えられる。


しかし、確かにこの状況は小説とよく似ているが、ここに居るのはルーファスでは無く俺であり、拐われてしまったのはガイの方だ。

この差異がこの状況にどう作用するのか、正直俺には検討がつかない。


…やはり、少し無茶かもしれないが、せめてガイだけでも連れて逃げよう。


そう結論付けた俺は、軽く深呼吸する事でどうにか冷静になれるようにと息を整えた。


「…よし、行くぞラヴィ。しっかり掴まってろよ。」

「キィ。」


俺の言葉に、ラヴィは理解したと言わんばかりに一鳴きし、さらに体を縮込ませた。

俺は物音で奴等に気づかれぬよう、なるべく足音を立てないようにゆっくりとその階段を下りて行った。





中はやはり地下という事もあり、かなり暗くひんやりとしていたが、どうやら奴等が着けたらしい蝋燭の灯りがほぼ一定の間隔で置かれていた。

一応俺も以前ランスとの一件があってからは火種を持ち歩くようにはしているが、ここで火を着けると奴らに気付かれる可能性があるのでこの灯りは有り難かった。


ちなみに火種とは、この世界で自生している植物の事だ。

『ホッカシソウ』という名前らしく、強く擦るとその擦った物が発火するという云わばマッチの様な働きをするものだ。


本来は葉を乾燥させ粉にする事で、冷え性などに効果がある生薬の一種として使われるものたが、この世界では葉っぱを持ち歩き火種としても使う事がある。


因みに自然界に自生しているが、他の木と擦り合うとその木が燃えるので、必然的にホッカシソウだけの群集が存在していると聞いたことがある(ホッカシソウ同士が擦れても発火はしないらしい)。


一定の強さで擦らないと発火はしないが、取り扱いには注意が必要だ。

因みに俺は、手の平サイズなら魔法で凍らせる事が出来るので、葉巻の様に丸めた物を凍らせて持ち運びしている。


「ん、あそこから話し声が聞こえるな…」


階段が終わった先には、古びた木枠が施された出入り口らしきものが見えた。

そこから話し声が聞こえた為、奴等の視線に入らぬようなるべく壁に沿うようにゆっくり降りる事にした。


「っお前ら…!オレが誰だか知ってんだろーな!?王子にこんな事して、無事で済むとでも思ってんのか!?」

「うるせぇ!!黙ってろ糞ガキ!」


俺はどうにかガイ達の姿が見える位置まで来ると、どうやらいつの間にかガイが目を覚ましたらしく、誘拐犯達に大声で怒りをぶつけていた。


「(いやいや、この状況でそれはいかんて!相手を録に知らん内からそんな喧嘩腰になるなよ!!)」


俺は無謀にも、誘拐犯相手に声を荒げているガイに対し内心ヒヤヒヤだった。

もしガイの態度に腹を立てた奴等が、ガイに対して何かしら手を出すようなら、流石に俺も黙って見ている訳にはいかない。


しかし、相手の力量も分からぬうちに手を出す事はなるべく避けたい。

何か、速やかにガイを救い出す良い手は無いかと俺は思考をフル回転した。


「貴様ら…!『我が火の力よ…!』


俺がそうしている間にも、ガイはずっと誘拐犯達に対し声を荒げていた。

だが、そんなガイをガキだからとマトモに相手しようとしない誘拐犯達の態度にガイはどうやらキレたらしく、縛られたまま自らの魔法を発動しようとしていた。


「(って、お前が先に手を出すんかーい!!)」


火の国の王子であるガイの魔法は無論火属性。

しかも小説通りなら、ガイは任意発動型ではあるが、基本的に爆発系の魔法を操るタイプの筈だ。


その圧倒的な火力により、入学して早々『爆炎番長』と恐れられ、不良達のトップに立っていたガイ。

そんな魔法を操る加減を知らない子供が、こんな狭く暗い場所で怒りに身を任せて魔法を発動しようものなら、こんな古屋敷瞬く間に崩壊するだろう。

つまりどういうことかと言うと、完全なる死亡フラグである。


「ちょー!ガイ待っ…!」

『キイイイッ!!!』


ガイを止めようと声を上げた俺より先に、先程まで俺の肩で息を潜めていたラヴィが、突如ガイに向かって飛び上がった。


「な…!?」

「何だコイツ!?」


飛び上がったラヴィは、ガイの前まで飛び上がり近寄るとその前に立っていた誘拐犯達に向かい始めた。


「(おお、ラヴィ!ナイス!!)」


俺は、密かにガッツポーズを決めた。


「!お前…あの時の…」


どうやらガイの方はラヴィに気付いたらしく、先程まで発動しそうだった魔力の流れが霧散した。


「くっそ…この…邪魔くせぇバカ鳥が…!」


誘拐犯の一人が何やら棒状の武器を腰から抜きラヴィに振りかぶった。


『ギイイイイッッ!!』


しかしどうやらラヴィの方が一枚上手だったらしく、その武器が当たる前にその姿を大きく変化させていた。

その巨大化の反動で、振りかざした武器がバッキリと壊れていた。

わぁ、うちの子(ラヴィ)つよぉい。


「うわああああ!!」

「な、何だコイツ!?ま、魔獣かぁ!?」

「に、逃げるぞ!!流石にやべぇって!!」


どうやら魔獣の姿を見た事が無かったらしく、奴等は混乱しながらバタバタとこちらに向かって逃げ出した。

しかしラヴィの姿を見ても魔法を出さない所から、恐らく奴らは魔法を使えないようだ。

それならと思い、俺は自分の体より少し大きめな水玉を頭上に作り出し持ち上げた。


「…オラァ!!」


そして俺はそれを思いきり振りかぶると、こちらに向かってきた誘拐犯達に向かって思いきり投げつけた。


「「「ガボオオオ!!?」」」

「しゃあああっ!ジャストミイイイト!!」


俺は思ったよりキレイに決まった事に思わずガッツポーズをとり喜んでしまった。

大きな水玉は上手く3人にまとめて当たり、誘拐犯達は訳も分からぬまま当てられた水玉が体に纏わりついてもがき苦しんでいた。


「な、なんじゃこりゃあ!?ううう動けねぇ!」

「粘着性が高い作りにしてあるからな!もがけばもがくほど体に引っ付く仕様だ!!」

「「「っは!?え?誰!?」」」

「ただの通りすがりの少年ですが?どうぞよろしくモブ三人衆?」

「モブの意味は分からんが、絶対ぇバカにしてんだろテメェ…」


馬車の運転手だった男が、俺よりも悪い目付きでこちらを睨み付けて来た。

はっはっは、見た目と違って勘がよろしいようで何よりだ。


「お、前…?何でお前がここに…」


そうやって内心で奴らをバカにしていると、状況についていけてないガイが俺を指差して問いかけてきた。


「何でって…王子が連れ去られたので慌ててラヴィと追いかけたんですが?」

「は?じ、じゃーやっぱりこの魔獣は…」

「王子が庭で拗ねてた時に一緒に居た梟くんです。」

「すすす、拗ねてねーし!!てか、マジかよ!?」

『ギイー。』


驚いたガイに対し、ラヴィは足で誘拐犯達を押さえつけながら爽やかな笑顔(俺主観)を向け返事をしていた。

本当に有能なやつである。あとで絶対にご褒美に高級肉をやろう。


「マジです。けどご覧の通り、賢すぎる事と大きくなる事以外は普通の梟だから、怖がらなくても大丈夫ですよ。」

「それ普通って言わねーだろ。」

『ギィー?』


ガイの言葉にラヴィは首を180°曲げ、まるで「何で?」と言いたげにガイの方を見ていた。

いや、ガイの反応が普通だよ。

まぁ魔獣って時点で普通じゃねぇよ、お前は。


「ラヴィの事はともかく、こいつらの動きを封じてる間にさっさと逃げましょう!」


というか、それが目的だったのだからこうやってガイを無事保護できた今、さっさと逃げるが勝ちである。


「!いや待て!さっき聞いたんだ!!コイツら、他にも子供を捕まえてるって!」

「な…お、オメェやっぱり聞いてたんかぁ…!」

「ちょ、馬鹿!何認めてんの!」

「ちっ…面倒な事になりやがった…」


ガイの言葉に対し、誘拐犯達は俺達を口封じするべきではないかと相談を始めているが、水玉に囚われもだついてる状況では、全くこちらは緊張感を感じない。


「知ってますよ。おい、あんたらが最近、珍しい毛色の子供達を拐ってるっていう誘拐犯だろ?目的は金か?それとも黒魔術か?」

「はっ!誰が言うか…」

「あー、やっぱ良いわ。後でじっくり聞くから、寝てろ。」


そう言うと、俺は誘拐犯達の顔面に手の平サイズの水玉を押し付けた。


「ガボボッガボッ!!」

「ウガッボッガボボ!!」


水玉は顔についた瞬間に薄いラップのようになり、誘拐犯達は息が続かずもがき苦しみ始めた。


「お、おい!何やってるんだ!」

「え?酸欠にさせようかと…」

「さ、サラッと恐ろしいことを応えるな!」

「いや、これが正しい気絶のさせ方なんですよ。腹や首を殴っても人って案外上手く気絶出来ない事もあるし、下手に殴って当たりどころが悪ければ簡単に死んでしまう事もあります。ここはある程度、酸欠にさせた方が上手く気絶出来て比較的安全なんですよ。」

「何冷静に説明してんだ!!お前怖ぇーよ!!」

「俺だって本当はやりたくないんですよ!でも、コイツらにはどうやらもっと上がいるらしいし、放っておく方がこっちが危ないんですって!」


こうやって案外簡単に捕まったから勘違いしそうだけど、コイツらは人の体を売り物にしている極悪人だ。

気を緩めると、こちらの身が危ないのでこれくらいでギャーギャー言わないでほしい。

ちゃんと気絶したらすぐに魔法が解除されるように設定しているので、脳へのダメージの心配だって無いはずだ。

まったく、人を考え無しに痛め付ける極悪人のような目で見ないでほしいものだ。

俺は内心少しだけ怒りながら、ずっと縛られていたガイの縄を解いてやった。


「とにかく、ガイ王子。他の子達の事が気になるのは分かりますが、今はご自分の事を考えて下さい。俺達がすぐにこの場所の事を大人達に伝えれば、確実にその子達も助けられます。早くここから逃げる事が最優先です。」

「くっ…お前、たかが貴族の分際で、王子のオレに指図するのか?」

「はい、しますね。先に無礼を承知で言っておきますけど、貴方は今『皆に愛される王子』ではなく『拐われたか弱い子供』なんですよ。現にさっきあいつ等に何も出来なかったじゃないですか。なので、例えどれだけ貴方が偉ぶろうが何しようが、俺は貴方を引き摺ってでも連れて帰りますからね。」

「…っ!」


まぁ、偉そうに言いはしたが、ガイが何かしようとしたのを止めてくれたのはラヴィだし、俺だって結局はただの子供でしかない。

けど、とにかくこのワガママ王子を納得させるには、今の現状を正論で力強く伝えるしかない。


生意気なガキンチョとは、普段甘やかされてる分案外こういう雰囲気そのものが苦手なハズだ。

前世でも病院で巫山戯て暴れまわるクソガキンチョが『鬼の看護長』と呼ばれる看護師のおばちゃんに、こってり絞られてるのを見たことがあるのだ。

めっちゃ号泣させてその後親からクレームが入ったらしいが、逆にそのアホ親をやり込めたと別の看護師から聞いた(ちょっと師匠の女性版みたいなイメージだ)。


それに本気のクソガキであれば「知るかバーカ!う○ち!」等と生意気な態度をとるのだろうが、コイツは恐らくそこまで愚か者じゃない。


小説のガイ王子は、荒くれ者ながら人に慕われる心意気を持った男だった。

ヒロイン(サラ)がクリスに襲われた時は、身を呈しながらヒロイン(サラ)を魔法で守り、クリスを説得しようとした男気溢れる男だ。


猪突猛進な所はあるだろうが、やはり王子だけあってそれなりの器量は持ち合わせているのだろう。

それに、他の子達の事を知り救おうと考える所から、このガイもただのクソガキとは言えないだろう。

俺がそう考えていると、ガイは悔しそうな顔をしながらも頷いた。


「…分かった。今回だけはお前に従ってやる。」


やはり、ガイは愚か者ではなかったようだ。


「ただ、今回だけだ!オレは王子だからな!帰ったらキッチリお前の生意気な態度を父さんに伝えてやる!」


…いや、やはりこの王子、クソガキか。

俺は殴りたい気持ちをぐっと堪えながらも、とりあえずは納得してくれたガイの手を引き立ち上がらせた。


「では、とにかくここから出ますよ!逃げ道は分かるので、俺に着いて…」

「ーー……。」


ガイにこれからの行動について説明していると、奥の方から何かの音が聞こえてきた。

先程もがいていた誘拐犯達がいつの間にか落ちた事で雑音が無くなり、辺りが静かになった事でようやくこの音を拾えたようだった。


聞こえたその音はか細く、何かの動物の鳴き声ともとれそうな不明瞭な音だった。


「…?何だ、この音…?」


どうやらガイにも聞こえたらしく、2人で視線を合わせると声を抑えて聞こえた方向に耳を凝らした。


「ー…て…ーーか…ーーー。」

「!?人の声!?あれ人の声じゃねーの!?」


ガイは驚いた様子で、俺に同意を求めるように聞いてきた。

確かに、これは動物というより人の言葉のように聞こえる。


ガイのあの証言からも、もしかしたら他の子達の声かもしれない。

か細すぎて言葉は聞きとれないが、明らかに大人の声には聞こえない。

可能性は高かった。


「!やっぱそうだ!きっと、助けてくれって言ってるんだ!早く助けに行くぞ!」

「あ、ちょっと!まだそうだとは…」


俺が引き留める間もなく、ガイは屋敷で見せた瞬発力で奥の方へ向かってしまった。


「あ゛ー、もう!…やっぱあいつクソガキだ!!」


俺は頭を抱えると、とにかくすぐガイに追い付くために、ダッシュでガイの後を追うのだった。


●毎度気長に待ってくださり感謝です。

この地下室は、扉だけ金属で出来ておりあとはほぼ自然素材なイメージで書いていますが、お伝えするのが中々難しいです。

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