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16:そのフラグは早すぎではないか

※毎度閲覧等ありがとうございます。

今回気持ちグロ注意だと思われます(気にする程ではないかもしれませんが、一応です)。


ガイが何者かに拐われようとしているのを見た瞬間、俺はすぐに魔法で水玉を造り上げ犯人に向けて投げ付けた。

けれど、それは当たることはなくそのままガイは曲がり角に姿を消してしまった。


「ラヴィ!!」


俺は咄嗟に大声でその名前を呼ぶと、先程まで庭にいたラヴィが門を越えて飛んできてくれた。


「キィ!!」

「ラヴィ!!フライ!」


俺がそう叫ぶとラヴィは自身の体を大きく変化させ、俺の肩を掴んで飛び上がった。


因みにこの掛け声は「俺を連れて飛べ」という意味で躾た言葉で、何かあった際にすぐ逃げたり出来る様に練習したものだ。

そしてラヴィがその通りに俺の肩を掴んで飛び上がってくれたお陰で、屋敷の周りを取り囲んでいる柵と茂みによって隠れてしまったガイの姿を再度確認出来た。


ガイを抱えていたのは図体の良い男で、その男はそのまま荷馬車の様なものの中に乗り込み、馬車が走り出してしまったのが確認出来た。


「門兵!!ボサっとしてないで報告頼む!俺はガイ王子達の後を追う!!」


俺は呆然と何事か把握しきっていない門兵達にそう指示すると、やっと事の重大さに気付いた彼らは真っ青な顔で慌てて屋敷内に向かって走り出した。

そして俺はそのままラヴィに、走り去って行った荷馬車を追うように指示する。


「ギルバート!?」


すると、下からルーファスの心配そうな声が聞こえてきた。

ルーファスの顔を見ると、オロオロとした様子でこちらを見上げていた。


「ルーファス!!心配しなくても大丈夫だから、ここは俺に任せてくれ!あと、悪いけどこの事を中にいるクリス達に伝えといて!!」

「わ、分かったよ!!でもギル、無茶しないで…!」

「大丈夫!後を追うだけだ!場所を特定したら戻るつもりだから!(深追いすると師匠がキレるからな)」


俺は心配そうに見上げてくるルーファスにそう告げると、そのまま馬車に意識を戻し後を追ったのだった。


「…本当におっきくなった…」


そして取り残されたルーファスは、先程の梟が本物の魔獣だったことと、完全に信じきれてなかった例の話が事実であることに少しの間驚き呆然としていた。






そしてガイを追いかけている中、俺は内心滅茶苦茶焦っていた。


ちょいちょいちょい待て待て待て!!

何でガイが連れ去られるんだ!おかしいだろ!

確かに王子が幼少期に拐われる話は書いてあったけど、拐われるのはルーファスだった筈だろ!?

しかも何か早くね!?まだそんな時期じゃねぇ筈だろ!


俺は追いかけながらも自分の中で状況を整理する為に、小説で書かれていた『ルーファス誘拐事件』を思い返していた。




『ルーファス誘拐事件』


それはガイが自身の11歳の誕生会を開き、その場にはいつも一緒に居たルーファス、招待したカルロスも参加していたというその会で起きた事件だった。


ガイはその時期話題となっていた貴族御用達高級レストランを貸し切り、自身の誕生会を満喫していた。

と言っても実際は他の招待客達との挨拶などのやり取りで慌ただしく対応していた。


そんな中ルーファスは、ガイ以外に仲の良い者も居らず唯一の知りあいとも言えるカルロスは、他の女性達と話が盛り上がっており話し掛ける事すら出来ずに居た。

そして自身の出自の事もあり、客の中には好奇の視線を送る者も居りパーティにどこか居心地の悪さを感じていた。


その場に居づらくなったルーファスは、そのまま会場を後にし外の空気を吸いに出るが、その時を狙っていた誘拐犯に連れ去られてしまう。


たまたまその瞬間を見ていた参加者の娘からその報告を聞き、ガイは周りの止める声にも耳を貸さず振り切ってそのまま飛び出していってしまった。


本来なら見つかるハズもない話だが、ガイは連れ去った馬車の車輪の跡や聞き込みを続けなんとかルーファスを見つけ出した。


そこで見た光景にガイは言葉を失った。


そこに居たのは捕らえられ縛られたルーファスだけでなく、何人かの子供達も捕らえられておりその皆はどこかしら体の一部を欠損していた。

両目が無い者、肩から先の無い者、中には首から上が無い遺体と言える者も存在していた。


その光景にガイは思わずその場で嘔吐してしまうが、その隙に誘拐犯にガイも捕らえられてしまった。

捕らえられたガイは抵抗するが、その抵抗に苛立った犯人はガイを暴力で黙らせようとする。


殴られボロボロにされる瞬間をずっと見ていたルーファスは、ガイを救いたい想いと暴力に対する恐怖心から魔法で複数のゴーレムを産み出し、誘拐犯達を襲わせる。


その際に今までルーファス自身も気付かなかった程の強大な魔力を発現した事と、咄嗟に産み出したという反動から上手くゴーレム達のコントロールが出来なくなっていた。


暴走したゴーレム達は誘拐犯だけでなく、ガイや周りの子供達も関係なく暴れだし、その建物が崩落しその場に居る全員が命の危機に瀕した。


そんな危険な状況の中、ガイは命からがらその場から逃げ出す事が出来無事だった。


その後、ゴーレムが暴れたことで場所を特定されたルーファスは保護されるが、ゴーレム暴走の件やそれにより誘拐犯だけでなく他の子供達も瀕死の重症を負った事から、これ以上火の国に居続ける事が出来なくなった。


ルーファスはそのままガイに会うことなく土の国に帰る事となり、二人の仲はそれきりとなってしまった。


そしてガイの方もルーファスを置いて逃げた自分への苛立ちや、自信に満ち溢れていた中事件でルーファスの強大な力に触れ、自身の無力さや彼への恐怖心を感じ、自ら会いに行く事も出来なかった。


そして2人がそんな状態だった為に、カルロスも自然と疎遠になってしまい彼らは幼馴染でありながらも学園入学まで殆んど関わることは無くなった。


そしてガイはその苛立ちと無力感、そして喪失感を埋めるように我武者羅に強さを求めるようになり、武術や魔法の訓練などに飲めり込んでいった。

その後入学した学園内では、苛立ちを発散するかの様に喧嘩や決闘に明け暮れ、早々に番長の地位にまで上り詰めた。


対するルーファスも、これ以上誰も傷つけたくないとの思いや家族との一件もあり、以降はなるべく目立たず静かに過ごす事を心に決め、当たり障りのない人間関係を築きつつ図書室で1人過ごすという孤独な学園生活を送ることになったのだった。







そんな壮絶な過去を持つ二人の関係性に俺は思わず読みながら涙を流した思い出があるが、つまりは誘拐事件自体は11歳にならないと起こらない筈だった。

なのにまだ2人が9歳である今、しかもガイの誕生会でなく俺の誕生会でガイ自身が拐われるとは一体何がフラグになったというのか。


俺はいまいち理解できず頭を悩ますが、かと言って結論が出る事は無く、またこのままガイを放っておく訳にもいかず、ガイが拐われた馬車をこのまま追いかけるしか出来ることは無かった。






いくらか走った馬車はそのまま森の中に入っていき、じきに大きな古い屋敷に到着した。


そこは水の国よりどちらかと言うと土の国に近い方の森の中にあった。

小説で記されていた誘拐場所は、確か開催された誕生パーティの会場が火の国にあった筈なので恐らく別の場所のように思えた。


俺はラヴィに降りるよう指示すると、ラヴィはゆっくり下降し屋敷近くの草原に下ろしてくれた。

そして体を元の大きさに戻すと、すぐ俺の傍に寄り添った。

その草原から屋敷を伺うと、どうやら丁度ガイを下ろしている最中らしく気を失ったらしいガイを先程の図体の大きい男が抱き抱え、もう1人小柄そうな者がその男を中まで誘導していた。


実行犯は2人…と馬車の運転手も今中に入ったから3人か。

犯人がたった3人ならすぐカタをつけられるだろうが、もっと居る可能性もあるのでガイを人質にとられたらどうしようもない。


…一応人数を把握する為に中に入って様子を見るか。


俺は辺りを見回すと、どうやら屋敷の2階にある窓が微妙に開いているようなので、そこから入り込む事にした。

俺は屋敷周りに見張りなどが居ないことを確認すると、屋敷に近づき魔法で水の鉤縄を作り出した。


本来なら腰回りにベルト代わりとして縄を用意しているのだが、今回はカルロスが服を用意してくれたので持っていない。


今ではランスとの同調魔法をした影響か、手の平サイズなら魔法で氷などの固形体を作り出すことも出来るようになってきたので応用の幅も広くなった。


俺は、自分の魔法の使いやすさに思わず感謝した。

そして、ラヴィに元のサイズのまま窓の柵に鉤縄を運んでもらい引っ掻ける事に成功した。

そこから静かに縄を伝って登り、何とか2階から屋敷に侵入することが出来た。


「シー、な。」

「キィ。」


俺の言葉の意図を読み取ったラヴィは小さく鳴くと、俺の肩に乗りそのまま落ち着いた。


本当にコイツ頭いいな。でも助かるぜ相棒。


そうラヴィに感謝しながら、俺はその部屋を一通り確認する。

どうやら物置き部屋らしく、少し動くだけでもかなり埃っぽい。

物を動かした形跡や足跡も無いことから、恐らくこの部屋には誰も入ってきていないように感じた。


何か使えそうな物は無いかと探すが、逆に慣れない武器のせいで身動きが取れなくなる事を想定し、持ち出すのは止めることにした。


とりあえず救出の為にも人数の確認や、ガイがどの部屋に閉じ込められているか確認しないといけないので、この部屋から出る為に静かにドアに近づいた。


ドアに耳を当て澄ましてみるが、ドアの外からは特に物音は聞こえず、俺は慎重にド掛かっていたアのカギを開け出てみた。

廊下にはやはり誰も居らず、足元の確認もしてみるが罠も特に無さそうに見えた。

それよりも、建物が古い上に木造なので床が抜けないかが心配だった。


「そうなったらマジで間抜けだな…」


そう思いながら、俺はゆっくりと足音をなるべく立てないように四ん這いになりながら進んで行った。

階段に近づいた所で、漸く下の方から声が聞こえて来たので更に階段をゆっくりと降りていった。

降りてすぐの部屋が偶然にも開いており、人影が無かったので俺は一旦そこに入り耳を澄まして様子をみる事にした。


「~~~。」

「~~。」


誰かが話す声が聞こえるが、内容までは聞き取れない。

けれど少なくとも、人数は2、3人程の声しか聞こえないのでやはり先程見えた人数で間違いなさそうだ。


どうやらこの部屋の2つ隣の部屋で話しているようなので、このまま部屋に入り3人共はっ倒してもいいのだが、仲間が別の所に出ている可能性もある。

もし仲間が居て帰ってきたら時鉢合わせれば、俺はともかくガイの身が危ない。


とりあえず彼らがガイと共に居るのかも確認してみる必要があると考え、もう1つ隣の部屋に先程同様の動きでどうにか移動することにした。


移動した部屋の壁に耳を当ててみると、先程よりクリアな声が聞こえて来た。

俺は魔法でコップのようなものを作りだし、壁に当ててしっかり内容を聞いてみた。


「おい、コイツじゃねぇだろ!黒髪のガキって話だったじゃねぇか!」

「し、仕方ねぇべ!警備が居て全然中に入れそうもなかったんだぁ!でも手ブラだと、ボスに何て言われっか…」

「ちっ…まぁ調べりゃ何かしらの"部位"は使えるかもしれんが…ボスは『金目』をご所望だったからな…」

「くっそ…せっかく王城から出てきたチャンスだったのによ…」

「仕方ないじゃない…とにかく『金目』はまたどこかで狙って…」

「それが出来たら苦労ねぇんだよ!!」


ガシャン!と何かが割れる音の後に、隣の扉が乱暴に開く音が聞こえ、声と足音が遠ざかっていった。

声の様子からして先程の3人組はあの大男と馬車の運転手の男、それに小柄だったのはどうやら女性らしい。


話の内容を聞く限り"部位""金目"というキーワードが聞こえたということは、もしかしたら小説通りの奴等の可能性が高い。


確か奴等の目的は結局小説では明言されなかったが、読者間での考察でおそらく『人身売買のブローカー』だろうという説があった。


前世であれば人体の売買と言えば、臓器提供としてかなり高額収入とされているようだが、この世界の医療技術はハッキリ言ってそこまで高いレベルのものではない。


外傷や軽度の症状であれば妖精石で治せるし、レントゲン等もないので内臓の病の明確な判断も出来なければ、出来たとしても切開手術を行うという発想やそういった技術情報も無いので、臓器を取り替えるなどという(すべ)も恐らくまだ確立されていない筈だ。


だとすれば、ファンタジー的に考えれば…儀式関係か、と当りをつけた訳だ。


俺は海外のニュースでしか知らないが、ネットニュースで黒魔術の為に人の人骨や部位を材料として集める人間が稀にいるらしいと見た事がある。

前世の世界にはこの世界のような魔力は無さそうなので、恐らく妄信的な宗教観念からの凶行と報じられていたが、この世界では訳が違う。


魔力も魔法も、そして魔術も存在するのだ。

この世界の魔術とは、難しい術式と必要な呪具を組み合せる事で、呪具や自然界の力を引き出し行う魔法の発動方法だ。


水を操ったりする超能力的な魔法よりも、もっと凄い超常現象的な高等魔法が行える…と聞いている。


だが俺の聞いた限りでは、人体を使うといった恐ろしい魔術の話は聞いたことがない。

だがこの世界の童話や昔話で、悪役が臓物や目玉といった何かしらの気色の悪い材料を使っていたりする話もあるので可能性は無くはないのだろう。


まぁそれを再現しようとして本当に正しい術式なのかは理解できないが、こうやって人を誘拐し人体を使おうとしている時点でどの道完全に非道だろうとは思う。


まぁこれだけ考察はしてみたが、本当にそんな目的(魔術)の為なのかも分からないし、実際の魔術を目にした事も魔術師に会ったこと無いのでよくは知らない。

ランスのよく関わっている専属の魔術師の話はよく聞くが、会ったことは無いのでどのように行っているかは正直未知の領域だ。

無事に解決したら是非ともお会いしたいものだ。


「っと…んな事考えてる場合じゃない。このままじゃ見失うな。」


俺は一旦目的の逸れてしまった思考を振り払い、彼らの足音が向かった方向へと慎重に進んでいくのだった。


あっという間に一月が経っていました…。

相変わらずの亀更新ですが、今後ともよろしくお願いいたします。

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