15:チョロくないですか?
※毎度閲覧等ありがとうございます。
あけましておめでとうございます。
早速今年の希望である早めの更新は叶いませんでした。申し訳ありません。
そして気がついたらブクマが100件となっていました!
こんな亀更新でもブクマ閲覧して頂けて光栄です!
今年もなんとか少しずつでも更新していけるよう頑張っていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
結局ガイは、しばらくの間「公爵家程度で調子に乗るな」だの「オレは騙されない」だのギャーギャー騒いだ後、肩で息をしながら「外に出てくる!」と拗ねてどこかへ行ってしまった。
どうやらガイは、やたらと俺とカルロスが仲良くする事に反感を抱いているようだ。
何故そんなにも反感を抱いているのかは分からないが、この様子だと正直クリスの破滅フラグうんぬん言ってる場合じゃない気がする。
それに当のクリスは、俺を嫌っている様子のガイの態度に対して大分不機嫌になっている。
加えてアリスまで物凄く不機嫌そうに何やらブツブツと呟いている。
小説と違い2人は俺に好意的なので、そんな俺を侮辱されて優しいこいつらは俺の為に怒ってくれているらしい、純粋に嬉しいものだ。
落ち着けアリス、兄ちゃんは気にしてないよ。
だからその殺気のような魔力抑えなさい。
さっきから家具や食器が微妙にカタカタ鳴ってて、ポルターガイスト状態になってんだよ。
とにかくこの様子じゃ、クリスがガイに心酔する事はほぼあり得ないだろう。
だが、心酔はせずとも何かの切っ掛けでグレてしまう可能性もある。
そうなると、小説通りガイの子分に成らないとも限らない。
やはりある程度ガイとも良好な関係は築いておくべきだろうな。
そう結論付けた俺は、どうにかガイと良好な関係を築けないかを考えることにした。
さて、まずは機嫌を直して貰わない事には話にすらならないな。
ではどうやってガイのご機嫌取りをすればいいのかと頭を悩ませていると、申し訳なさそうな表情を浮かべたルーファスがこちらを伺っていた。
「すみません…来る前から何かと貴方の事を気にはしていた様だったんだけれど…まさかこんなにとは…せっかくの誕生会なのに本当に申し訳ない…」
「いや、ルーファスが謝る事じゃないよ。それに、ガイ王子の言ってることは半分は当たってるだろうし…」
「半分…?」
「確かに噂通り魔獣は倒したけど、それはランスと一緒にだったし、騎士団を伸したのは普通に訓練してただけの事だし…あるにはあったんだけどどこか間違って受け取ってる所があるみたいなんだよな。」
「え…?あ、あの話って、本当にありはしたの…?私はてっきり創作的な話を君がカルロス王子に取り入る為に噂として流したとガイが誤解しているのかと…」
んー、そうだよなー、そんな話聞いたら普通にそう考えるよなー。
しっかし、何でガイはこんな噂話知ってたんだ?
まさか、知らぬウチに俺王族内では有名人になってたり…
「あ、その話って僕がガイに手紙で伝えた内容かな?」
カルロスがあっけらかんとした表情で告げていきた。
お前かよ。本気でどう伝えやがったんだ。
「僕、嘘なんか書いてないのになぁ…結構具体的に書いたつもりだけど何で嘘だって疑われたんだろ…」
カルロスは不思議そうに首を傾げた。
いや、さっきガイも言ってたろうが。
お前が疑われたんじゃなくて、俺がお前にホラ話吹き込んで取り入ろうとしたって勘違いされたんだろ。
まぁコイツがどう伝えたとしても、普通に子供が魔獣を倒すなんて事信じられる訳ないしな。
俺がどう伝えるべきかと頭を悩ませていると、カルロスが笑顔で告げてきた。
「ギルは本当に凄く強いんだよ。この間なんか、50人の団員をいっぺんに相手して…」
「いやだから…そんな風に大袈裟な風に伝えるから、皆誤解して伝わるんじゃないのか?」
「でも事実でしょ?」
「うぅん…まぁ…多少は…?」
あんまり広められると、俺の周りの評価がちょっとおかしい事になりそうだからあまり広めないで欲しい。
俺は、ただのモブとして皆の恋愛模様を見守れたら充分なんだよ。
フラグが回避出来そうな今、俺の目的は最早そっちなんだから。
「…本当に凄いんだね…あの、魔獣ってどんなのだった?」
「え?あー、大きな梟の魔獣で…今家で飼ってる…。」
「飼ってる!?魔獣を!?」
俺は驚いて大声を上げたルーファスの口を思わず手で塞いだ。
雑談をしていた周りの少年少女達が一瞬静まる。そしてその後再開した会話では端々に「やっぱり…」「噂は本当…」「強い…」などの単語が聞こえてきた。
あぁ…また変な噂立ちそう…
そう肩を落としながらも、俺はルーファスにコソリと耳打ちした。
「今は大人しい普通の梟なんだよ。多分外にいると思うけど…」
「可愛いんですのよ?名前はラヴィと言いますわ。」
「…最初会った時は、あのテーブルくらいの大きさで…凄く、怖かった…」
「今もなろうと思えばなれるんだけど、義兄さんが言わないと大きくなってくれないんです。」
わいわいと当たり前のように魔獣について話す皆に、ルーファスは驚いたまま頷いて聞いていた。
「本当に飼ってるんだ…ギル凄いね。」
「いや…凄いと言ってもらえて嬉しいんだけど…なんか、化け物扱いされてるみたいでちょっと複雑…」
「そんな事ないよ!魔獣倒して従わせるなんて、勇者みたいで格好いいじゃないか!」
「え?そ、そーかぁ?」
勇者という単語に思わず照れる俺だったが、魔獣を従わせるというのは勇者より魔王のする事のような気がする。
けどとりあえずは誉められてはいるみたいなので、ここは素直に喜ぶ事にした。
「ただの誤解に腹を立ててるのかと思ってたんだけど…この状況だとやっぱり勝手に勘違いして八つ当たりしたガイが悪いよ。私、少しガイの所に行ってくるよ。」
「え?あー、なら。俺も行ってもいいかな?このまま誤解させとくのも何だし、行きそうな所を教えてくれれば案内するよ。」
「そっか…何だか色々すみません…」
この子本当に根っからの苦労性だなぁと、俺は思わずルーファスに同情した。
それに同情しただけでなく、俺は本当にガイとこのまま仲違い?の様な状態で居たくないというのも理由だった。
仲良くなれるならなりたい。
…ちょっと個人的な理由でもあるが。
「多分、ガイならこういう時外に出たがるから庭の方に居ると思うよ。いっつも、拗ねたらそうなんだから。」
おー、そこも小説通りだな。
小説でも、ヒロインと出会って改心したものの、元不良という立場もあってどんな事をしても周りには好意的に映らないという状況にガイが苛立つというのがあった。
その際はルーファスがヒロインに「奴なら校庭で不貞腐れてる事でしょう…行ってやって下さい。私はもう、どう接すれば良いのか分からないのです…」と、促しつつも自身の葛藤を告げるシーンがあった。
「そっか、ならもしかしたら、一足先にラヴィに会ってるかもな。アイツ元野性にしては妙に人懐っこいし。」
「へー、私も会いたいな。ガイが居なくても先に紹介してくれないかな?」
「おう、ラヴィも喜ぶと思うよ。じゃあ皆。俺らちょっと抜けてくるから。」
「うん、ガイの事よろしくね。」
「行ってらっしゃいませ。義兄さま。」
「…早く帰ってこないと…料理、冷めちゃうからね…」
「ある程度は取り分けておくけど、主役なんだからなるべく早くね。」
各々から返事を受けた俺は、ルーファスと共に会場を後にした。
俺はルーファスを庭まで案内すると、そこには体育座りで頬を膨らませながら、庭の草の上に寝転がったラヴィの腹を撫でているガイが居た。
あー、可愛いが過ぎる…この光景…
俺は思わず空を仰いだ。
てかラヴィ、お前起きてんのはわかるけど、知らん人間に子供とはいえ容易に腹を見せるんじゃないよ、猛禽類どうした。
そう内心ツッコミながらも俺はあまりにも可愛すぎる光景に悶えつつ、一人と一羽の方へ向かった。
「ガイ!もう、何不貞腐れてるのさ。」
「ルフ…げ、デブ男…」
はいはいデブ男ですよ。そんなに嫌な顔すんなよ、まったく…お兄ちゃんも拗ねちゃうぞ?
「何しに来たんだ。」
ガイがこちらを睨みながら唸ってくる。お前は猫か。
「いえ、わざわざ遠くから来ていただお客様に、パーティー中ずっと外に居させる訳にはいきませんので迎えに来ました。」
「誰がお前の誕生日パーティーになんか参加してやるか。」
頬を膨らませながらプイッとそっぽを向くガイに、俺は内心穏やかでは居られなかった。
全く、本当にクソガキだな。
しかし、このクソガキ感が良い!!
そう、これなんだよ!俺が登場人物達に求めたのは!!
俺がガイを嫌えない理由の一つ。
勿論、大好きな小説の登場人物というのも大きい。
だがそれ以上に、ガイは他の皆よりずっと小説のガイに近い所を感じるのが主な原因だった。
勿論皆にガッカリしたとか、皆と嫌々付き合ってるとかそう言うんじゃない。
ただガイは、小説に登場しているガイをそのまま小さくした様な、俺が皆に感じてしまった微妙な別人感が無かったのだ。
何というか、映画やらドラマで好きになった役の役者が、そのまま目の前の現実でも役そのままの状態で目の前に居たら…ちょっと興奮しないか?
目の前にっ!本物がっ!居るっ!!ってな感じで。
それなんだよ。
何かやっと本物に会えた~って感じで、変な感動を覚えてしまったんだ。
ただでさえ皆と会えた事自体奇跡かつ現実見がない時があるのに、こうやって目の前に正に本物です!ってのが現れちゃうと、かつての一ファンの身だったって事を自覚してしまったんだよな。
だからか何かちょっとぐらい失礼な事は許容出来そうだ。
我ながらチョロいなぁ俺。
そう自分の気持ちを整理していると、俺が返事しないことに苛立ったガイが更に吠えてきた。
「何だ!何か言えよ!王族と友人だからっていー気になんなよ!」
「え、いや、そう言うんじゃ無くてですね。何だかガイ王子と出会えて嬉しいなー、って思ってたらつい和んでしまって…」
あ、やべ、気が緩んで本音が。非礼を詫びて(何に腹を立ててるかは分からないが)和解を求めるつもりが、これじゃあ更に怒らせる事に…
「は?なご、和むって何だ!馬鹿にしてるのか!」
顔を真っ赤にしながら怒るガイは、そう言われて嫌と言うより照れている様にも見えた。
お?なんだなんだ?案外褒められる事に慣れて無いのか?
偉そう気にしているから周りからチヤホヤされてるかと思ったんだがな。
どうやら、あれだけ貶した俺からの好意を向けられる事自体に嫌悪感は無さそうだ。
ならもうちょい正直に答えてみるか。
「えーっとですね、カルロスからお話を聞いてどんな方なんだろうって思って会えるのを楽しみにしていたので、実際に会えてとても勇ましい方だなぁと思い格好良い人だなって思ったんです。」
「な、な、な、かっこい…」
ピンクな顔がさらに真っ赤になっていくガイに、褒める作戦は成功したように見えた。
チョロい。俺よりチョロ過ぎてちょっと心配になってきたぞ。
「そそそそそんな事でオレが!騙されると思うなこのデカ男~!!!」
「「あ。」」
顔を真っ赤にしたガイは、そのまま門の外まで走り去ってしまった。
あー、そういえば、小説でもヒロインから「格好良い」って言われて同じ反応してたな。
全く、本当に可愛い奴だな…
ん?
門の外に、出た?
「わー!!ガイ王子!!一人で外出たら危ないからーー!!」
俺は慌ててガイの後を追いかけた。
通常この門は、今日は出席者に王子達も居ると言うことで門兵を配置し閉じられている筈なのだが、その王子達が遅れた事によってどうやら開いたままにしていたらしい。
到着次第閉めれば良かったはずだが、恐らくそれなりの警備体制も敷かれていたことから、門の開閉に関してはそのままでいいと判断されたらしい。
ぶっちゃけ気の緩みだ。
この緩すぎ門兵はあとでシバく。
いや、一応カルロスん所の門兵だからカルロスに報告しよう。
然るべき処分を降してくれるだろう。
そんな中いきなり走り出してしまったのが王子と気付かなかった様子の門兵達は、注意していた外からではなく中からの脱走者に即座に対応できずそのまま見逃してしまった様だった。
マズイと判断した俺達は、門兵に先程の少年がガイであると伝え、そのままガイを追いかけた。
出遅れてある程度の距離は開いてしまったが、俺の速度なら追い付けるだろう。
そう思い、俺は塀の曲がり角を曲がろうとするガイの元まで速度を上げた。
もうすぐ追くと思ったその瞬間、ガイは曲がり角から急に現れた何者かに引き込まれて捕らえられていた。
今回はちょっと区切りが難しかったので気持ち短めです。




