14:人づての噂とは、何故脚色されやすいのか
毎度閲覧等ありがとうございます。
一通りの『挨拶周り』を終えた俺は、とりあえずカルロスやクリス達からもなんとか及第点を貰えた。
と言っても、最初は挨拶中にどもったり敬語が抜けたりソワソワしたりと落ち着かない状態ではあったが、何度か仕切り直しをしてもらい、どうにか形にはなったとも言えるレベルであった。
切り上げの際、カルロスから
「これから僕が、手取り足取りしっかり教えてあげるから、心配しなくても良いよ。」
と笑顔で告げられ、更にクリスやアリスからも
「これだけ出来ていれば後は僕達で仕上げられます!ご心配なく!」
と宣言されたので、どうやら今後も練習は続くらしい。
本当に情けない男で申し訳ない。
仕方ない、皆の手を煩わせないようにも執事達や家庭教師に自主連を願い出よう。
そう、俺は心の中で決意するのだった。
そして未だガイ達が来る様子が見られない為、それまでの間他の子達とも交流を図る事にした。
最初は、こちらに遠慮しているのかあまり積極的に話を続けようとされなかったのだが、流石はカルロス。持ち前のキレイな顔と巧なコミュニケーション能力を用いて、まず女の子達から落としに、いや、話を進めていった。
というか今回Pを担っていた事もあり、事前にそれなりのコミュニケーションは図っていたようで、和やかに会話に突入できた。
彼女達は小さくともやはり女性なので、そんなカルロスと話そうとすぐ周りにきゃいきゃい言いながら集まっていった。
カルロスがまるでホストのようだ。
また、クリス達は元々平民の出なので、ほぼ難なく会話にすんなり入っていってしまった様だった。
アリスも、普段同年代の女の子と話す機会があまりないので、同性の友人を作るには良い機会だろうと思う。
そんな皆を、前世からコミュ障な俺と同じくコミュ障なランスは、2人で話に花を咲かせる彼等をボケッと見守っていた。
そんなコミュ障組な俺達をさりげない流れで紹介してくれたカルロスに、俺は思わず「神かよ…」と呟いてしまった。
そうやって話をした所、どうやら今回参加した子達の殆どは魔力を有していない子ばかりらしく、残念ながら魔法学園で一緒にはなり得そうも無かった。
けれど、彼らの友人の中には魔力を有している子も何人か要るらしいので今度その子達も誘って遊ぶことになった。
子供達のフットワーク軽いな。
俺が関心していると、子供の一人が「でも…」と何か言い淀んだ。
何だろうと思いそちらの方向を見るが、他の子達から何やら口止めをするように促されていた。
…?一体何だろうか。
俺は疑問に思ったが、すぐに話題を変えられてしまい問い掛ける事は出来なかった。
こうして一般の子達と話してみて分かったが、案外子供達の中で魔力を持っている子は少ない様だった。
40人のクラスに3,4人程居るか居ないかくらいの割合らしい。
俺の周りには魔力持ちばかりなので、まさかこんなに少ないとは思わなかった。
…まぁ小説の登場人物ばかりなので当たり前ではあるが。
また、そういった一般の学校にいる子は、魔力を持っていてもそんなに強い訳でもないので、普通の子達とほぼ変わらない生活をしているらしい。
以前聞いた話だと、この世界で魔力は15歳までに発現はしても特段大きな成長はしないので、魔法学園も魔力が成長し出すくらいに大方入学するように設定されている。
稀に強い魔力を持っている子も居るが、そういう子は専門の機関に通っているらしいので、あまり会ったことはないとの事だった。
一般の基準をクリス達に当て嵌めていたが、どうやら稀な例だったらしい。
貴族に入れたのでこうやって適切な指導を受けられているが、そうでなかったらその機関とやらに入っていたのだろうか。
そんな事を考えていたら、いつの間にか側に居たウチの執事からガイ達が到着した事を告げられた。
ついに、ガイ達との対面か。気を引き締めよう。
「やっと来たみたい。僕、ちょっと席外すね。」
「え?俺も行くぞ?一応今回の主人だし…」
「いいから、ギル練習で疲れたでしょ?少し何かつまんだら?…こんなに遅れた理由も問い詰めたいしね。」
「ん?」
何だ?最後の方聞き取れなかった。
「何でもないよー。それじゃ、行ってくるね。」
そうカルロスは言い残すと、執事と二、三言話した後そのまま外に行ってしまった。
「あの、ギルバート様。ちょっといいですか?」
「ん?」
カルロスを見送っていると、不意に一人の女の子から話しかけられた。
「さっきも少しお話聞かせて貰ったんですけど…ギルバート様って…とっても強いんですね!」
「へ?」
「自分より大きな鳥を、素手で倒されたとか!」
「は?」
「大きな岩を真っ二つに割られたって本当ですか!?」
「んん?!」
「ゴーレムを100体いっぺんに倒せるなんて凄いですね!」
女の子達は目をキラキラさせながら問い掛けてきた。
待て待て、なんでそんな話になってるんだ。カルロス達は何を話した。
ちなみに多分その鳥、さっき庭で肉食って寝てたヤツだし、殴ったの素手じゃねぇし。
岩は岩でも俺の身長の3倍くらいの高さのを切れ味の良い剣で切っただけですし。
ゴーレム100体もいっぺんに倒せる訳ないし、俺だけでやったんじゃねぇし、せめて50体ぐらいしか…ん?もっといけるか?
「あら、おじさん達から聞いた話だと、魔法で鳥倒したんじゃなかったかしら。」
「おじさん?」
「この子の家、飲み屋をしてるんです。よく騎士団のおじさん達が、仕事終わりに飲みに来るらしいですよ。」
ははぁ、なるほど。
これは酔っ払った騎士団の人たちからのハンパな情報を、話好きな少女達がなんとなく聞いて鵜呑みにした感じだな。
実はランスの事件以来、たまに師匠に会いに騎士団の方々が何人かウチに来るようになった。
どうやら騎士団の方々が、やはり師匠から直々の指導を受けたいという希望が殺到したらしく、何人かで直訴に来た様だった。
そして何を考えたのか、師匠は騎士団の方々の指導に俺達も巻き込みやがった。
つまり、俺達は騎士団の方々と一緒に師匠から指導を受ける事になったのだ。
まぁ今までの指導メニューも、子供にするにしては可笑しな内容ではあったが、場所がほぼ限られていたので、やれる事も必然的に限られていた。
しかし、騎士団の方々も指導を受ける事になり、結果騎士団の演習場を使用しての本格的な演習が行えるようになってしまった。
しかも、国王直々に演習場の使用許可が出てるのだ。
そこまでされては父さんも何も言える筈もなく、俺達はそのまま騎士団の鍛練に参加する事になってしまった。
そうなると、これは完全に『指導』というより『実戦』のレベルになってしまった。
強くなりたいとは言ったが、別に戦闘員になりたい訳ではなかったんだが。
俺達の方向性がおかしい。
まぁそんな訳で、今では俺達兄妹とたまに参加するランスやカルロスを含めて、皆騎士団の方々とそれなりには仲良しなのだ。
…仲良しだけで終われば良かったんだが、実は俺達が興味本位で騎士団の人達から師匠の昔話を聞いていたのに気付かれてしまい、恥ずかしがり屋の師匠が仕返しと言わんばかりに騎士団の人達や俺達の色んな恥ずかしい話だの何だのも暴露しやがり、結果互いに殆ど隠し事無しの深ぁい仲まで発展し、妙な連帯感を感じる関係にまでなってしまった。
そんな超体育会系な人達が、更に呑みの席で話す事など、いくらか尾びれがついてしまってもおかしくない。いや、おかしいけど。
てか、騎士団の方々よ、あんたら本当に何を話してんだ。
それを鵜呑みにしたらしい女子達が、妙にキラキラした目で俺を見てきてんだけど。
そんな穢れ無き眼で見ないで、体育できる男子カッコいい系の視線送らないで。
確かにそれなりに形にはなってるけど、俺なんて大したことないですから!
正直内心俺のモブ化が遠のいてる気がしてるけど、ちゃんとモブなんで!!訂正させてくれ!
そんな彼女達のキラキラオーラに圧倒されながらも適度に返事して過ごしていると、後ろから扉の開く音が聞こえた。
「お、おー!き、来たんじゃないかなー…ちょっと行ってくるなー…」
耐えきれなくなった俺は、女子から逃げるように扉の前へ近づいた。
扉からはカルロスが入って来たようで、俺に気付いたカルロスがこっちに近寄ってきた。
「ギル、皆と話できた?」
「う、うーん。ま、まぁそれなりに?」
「?そう?」
「おい。そいつがギルバートか?」
すると、カルロスに続いてもう一人が中に入ってきた。
視線を扉の方へ移すと、その方向には大変ご立腹な様子の少年がこちらへ向かってきていた。
そして少年が俺達の近くまでくるとその足を止め、ジーッと俺を睨み付けてきた。
そんな俺も、少年の様子を確認するために少年を全体的に見てみた。
まず目に入ったのは、俺の周りにはあまり居ない褐色の肌だった。
俺も含めて周りの人は基本的に白い肌の人が多く、日焼けしている人は見たことがあるがこんなにキレイな小麦色の肌は初めて見た。
恐らく日焼けで焼けたものではなく、元々の肌の色なのだろう。
そして短めの赤髪は何故か左だけ長めに切られており、その長い髪には僅かに白くのメッシュが入っている様だった。
それは赤色の髪に混じっているので薄い桃色にも見えた。
睨まれているからか少しキツめに見える緑色の瞳が、少々意地悪そうな印象を与えるが全体的に整っており問題なしの美少年である。
うん、見た目の特徴完全に小説と同じです。
子供だからか、小説ではあった右耳のピアスが無い点を除けば完璧に小説のガイ王子そのままを小さくした感じだ。
「ガ、ガイ…待ってよ…」
そんな王子様に睨まれていると、さらに続けてもう一人が眼鏡を掛けた少年が入ってきた。
王子を呼び捨てにするって事は、多分もう一人の土の国の王子ルーファスだろう。
「遅いぞルフ!お前の準備が遅いから、オレ様まで遅れたじゃねーか!」
「ガイが全然プレゼントとか用意しないから、代わりに私が色々用意したからじゃないか。」
「ふん!たかが一市民の誕生日に、王子のオレ様がプレゼントなど用意するわけがねーだろうが!」
なんじゃこのテンプレオレ様坊や。
というか、その用意させたルーファスくんも王子様だろうが。
「相変わらずだね。大変でしょ?ルーファス。」
「うぅ…」
本当に大変なのだろう、肯定的な様子を見せながらルーファス王子も疲れた様子だ。
…本当に王子なんだよな?同姓同名の使用人じゃないよな?
俺は改めてルーファス王子らしい少年を見つめる。
小説ではダークブラウンの髪を前髪ごと後できっちり一つでまとめ、眼鏡の奥に光る金の瞳が印象的なキャラクターだった。
別名『執事王子』ともファンの中では呼ばれていたほど、王子というより完璧執事のような見た目だった。
目の前の少年の髪は黒っぽく見えるが、光が当たると明るい茶色に見えるのでダークブラウンなのだろう。
全体的に長めの髪はそのまま伸ばしっぱなしのようであまり整った印象はなく、前髪も長めなのであまり顔立ちが確認できない。
けれどたまに眼鏡の奥でキラリと金色に光る瞳が見えるので、恐らく本人だろうとは判断できた。
…ガイは見た目そのままなのに、ルーファスは随分印象が違うな。
ランスは性格が違うだけで見た目そのまんまだったけど、なんというかルーファスは全体的に別人感が半端ない。
「えっと…」
「あ、あぁ、すみません!んんっ…私、一応土の国の第五王子でルーファス・マントルと申します。以後お見知り置きを。」
ペコリと頭を下げるルーファスだったが、大きな丸眼鏡がずり落ちそうになっている。
「あ、えっと…僕はオルコット公爵家長男。ギルバート・オルコットと申します。この度は僕の誕生会に出席いただき、感謝します。」
「こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。…ガイも。」
「…ガイ・レッドマン様でーす。よろしく。」
「もう。練習したのに…すみません、すみません。」
「い、いえ…あの、ルーファス様…頭を上げてください…」
使用人にしか見えないが、一応は王子であるルーファスにこのまま頭を下げさせる訳にはいかず俺は困った。
…カルロス、この世話焼き人のどこが『人見知り』なんだ。
寧ろ、全然挨拶しないガイの方が問題ありだろ。
そう思いながらカルロスを見ると、耳打ちで「二人とも一応練習したんだよ」と言われた。
「様なんて…私は、ただ国王の血を引いて産まれただけで…王子なんて大した物じゃないんです…」
その言葉を聞き、俺はルーファスの生い立ちについて思い出した。
ルーファスには上に兄姉が四人居り五番目の子の王子だ。
確かそれぞれ二卵性の双子の男女でルーファスは第三王子となる。
しかし実は、ルーファスは他の四人の兄姉と母親が違うのだ。
王が下町にお忍びでいった際に、たまたま出会った一人の女性を見初めた。
そして二人は愛し合ってしまい、その結果産まれたのがルーファスだった。
よくありがちな泥沼不倫というやつである。
一国の王が何やってんだ。
無論一緒には暮らせないので、ルーファスは産まれてしばらくは母親と二人で暮らしていたが、ある日母親が仕事中に事故に巻き込まれて亡くなってしまう。
その為ルーファスは魔力を有していた事もあり、父親である国王が引き取る事になるのだが、王妃は勿論大反対。
王妃の実子であるW双子達も母親の指南によりルーファスを毛嫌いするので、あまりにもルーファスが可哀相な状況になってしまう。
その事を、昔から交流の深かった火の国の王に相談した所「学園に入学する迄うちで預かろう!うち同い年の息子居るし、丁度良いだろう!」てな感じで一旦火の国の王城で引き取る事になる。
その同い年の子とは、このオレ様王子ガイであるのは大変分かりやすい事だろう。
そんな生い立ちなので、ルーファスがこんな性格なのは当たり前と言えば当たり前かもしれない。
「ルフは本当に気が小せーな。こいつはお前より下位の者なんだから、好きなだけ様付けさせとけばいーんだよ。」
さらにガイの性格がこの様にオレ様王子様な大変いい性格の様なので、さらにルーファスの王子感が育たないのだろう。
本当に良い性格してんなこの坊。
けど…嫌じゃないんだよなぁ。
…これがファンの欲目って奴かな。
「もう、そんなの無理に決まってるでしょ。あの、そういう性格なので、ギルバート…くん?よろしければ私の事は気軽に名前で呼んでください。」
「ギルでいいですよ。うーん。気軽に、と言われるのでしたら…お互いに敬悟、止めようか。」
俺の顔は結構キツイ方なので、なるべく脅した形にならないように微笑みながら伝えると、ルーファスはホッとした様で笑顔で頷いた。
「あ、ギル。ひょっとしてそれ僕の真似?」
「お黙りください。まったく、人が折角格好つけたつもりなのに。」
「フフッ仲良いんだね。」
「勿論。親友だからね。」
「…ふん。黙って聞いていれば…随分腑抜けたよーだな。カルロス。」
俺達がホンワカと話していると、不機嫌そうなガイが腕を組み仁王立ちで俺を睨み付けていた。
「おいお前。親友だかなんだか知らねーけど。王族に対してその態度は何なんだ!」
ガイはビシッと勢いよく俺を指差しながらそう告げた。
「お前ごときの身分が、王族にそんな口聞いて良いと思ってるのか!」
「いえ、普通に駄目だと思ってます。」
「え?そ、それなら、ちゃんとオレ様達を敬え!」
「本人から許可を頂いているので、多少の無礼を承知の上でこのように接している次第です。それに、カルロスは大変心が広い方なようですので、僕の方はとてもカルロスの事を誇りに思っていますよ。」
俺はとても良い笑顔を浮かべながら、使えるだけの敬悟でガイに対応する。
「ギル…そんな風に思ってくれてたんだ。」
カルロスが目を潤ませながら俺を見てくるが、残念ながらお前さんを喜ばせる事が目的じゃないんですよ。
まぁ本心だけど。
「ふ、ふざけるな!そんな事言って、カルロスを誑そうとしてるんだろう!何を企んでんだ!」
「特に無いですけど…?例えば何ですかね?」
「た、例えば…カルロスにあること無いことなんでも吹き込んでいるんだろう!」
「…あること無いこと?」
「そうだ!魔獣を倒しただの騎士団の連中を伸しただの…お前のようなデブにそんな事出来る訳がない!!嘘をついて、カルロスの気を引こうったって、そーはいかないんだからな!」
…うーん、それ嘘って言うより少しの誤解と君の曲解の結果なんじゃないかと思うんだけど…
噂って…なんでこんなに面倒な事にしかならないんだろう。
何とか年内にもう一本上げられました…(汗)
来年はもっと速度が上げられればいいんですが…
ここまでお付き合い下さっている方々、ありがとうございます。
宜しければ来年も気長に宜しくお願いします。




