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12:初めての出会い、新たなるフラグ

毎度閲覧等ありがとうございます。


ランス王子行方不明事件から約半年が経ち、ランスの魔力コントロールがそれなりに安定してきたこともあり、三週間に一度くらいだった我が家に遊びにくる頻度が、なんと一週間に一度くらいに来れるようになった。

そうなると、今まではたまたま会うことが無かったカルロスともいずれ鉢合せする事になるだろう。

風の王子と氷の王子、この2人が出会うという事自体は俺自身特に反感は無いのだが、少し思う所があるので俺は敢えて2人の出会いの場を作ろうとお互いに提案することにした。


小説でのカルロスとランスは、本来なら学園入学まで全く接点を持たないまま、ヒロインのサラを通じて漸く知り合う流れのはずだった。

その話では、サラがカルロスにランスを友人として紹介しようとするのだが、馴れ馴れしくサラの腰を抱きながら(牽制の意味も込めていたのだろう)紹介されたランスに対して発した礼儀正しい言葉とは裏腹な真っ黒笑顔で応えた。

それに対してランスは、カルロスのそんな態度に完全敵対体勢をとり、いきなり魔法勝負を仕掛けるという修羅場シーンを展開したのだ。

サラ曰く、その時の2人の背後には睨み合う竜虎の如し鷹と狼が見えたという。


結局サラの乱入で勝負は有耶無耶になってしまうのだが、とりあえずお互いは相手を恋敵と認めながらも、愛するサラの為に表面上は仲良くしていくといった感じでその場は収めていた。


まぁ腹黒王子と一匹狼が本気で仲良くなど出来るはずもなく、サラの見えない所では常に修羅場っていたが。

その上更に後程2人も王子が加わり、睨み合いの牽制し合いが倍増し、かなりド修羅場っていくのだ。


まぁ俺としては、その王子達の修羅場とサラへのド甘な対応という妙なギャップ感も面白さの一つとして楽しんでいた。

そういえば兄さんはその王子達のド修羅場を、何やら別の観点で楽しんでいたらしく、兄さん曰く「ドSとツンドラ…滾る!!」との事で大人の女性とやらからの人気要因の一つとなっていたらしい。

しばらく熱弁されたのだが、残念ながら俺はさっぱりその観点では楽しめなかった。


そんなドSとツンドラな2人なのだが、俺がランスとも友人となった事で、本来はヒロインが行う重要なシーンとなる王子達のファーストコンタクトが、我が家の庭でただモブであるはずの俺の紹介で知り合ってしまうという、ドラマチックさの欠片もないショボい舞台となってしまった。


因みに何故室内ではないかというと、これにもちゃんと理由がある。

小説の初対面を知っている俺としては、サラが居ないとはいえ何かしらの切っ掛けで修羅場が展開した場合、被害を最小限にする為に提案したのだった。

室内の場合、修繕費が大変になる上に義母さんの心労がピークに達する可能性もあるからだ。

出来ればこんな我が家で国際問題を起こしては貰いたくはないのだが、起こるならば致し方ない。

ちゃんと近くに師匠も待機するように伝えて居るので(ランスの力を理由に依頼したらOKしてくれた)、何かあればすぐに対応して貰えるはずである。



そんな訳で一応万全を整えた出会いの場だったのだが、それでも俺の内心はかなりハラハラしていた。

だが実は、ハラハラよりも王子達の初対面に立ち会える事にワクワクしている方が正直強いというのは、ちょっと気付かないフリをしておこう。

これは仕方ない、オタクの性だ。


そんな俺だけハラハラワクワクな幼少期の王子達の出会いだったのだが、展開したのは大修羅場…ではなく、思っていたより数倍もあっさりとしたものとなった。

最初こそ互いに他国の王子と言うことで驚いていたが、引っ込み思案で俺の後ろに隠れていたランスに対して、カルロスは相手を怖がらせないように優しく接してくれた事で、警戒していたランスも徐々に自然な会話出来るようになっていった。

因みに、すでに俺を介して知り合っていたクリスとアリスは、ランスとは既に良好な関係を築いていた為あっという間に4人で和やかな雰囲気を漂わせていた。


小説では、まさに水と油の様に相容れぬ関係に見えた2人だったが、今の目の前に居る2人は普通に良い関係を築けているように見えた。

その様子に、俺は構えていたその体を緩めて一息ついた。

そういえば小説のランスは、サラ以外に心を開かな過ぎてカルロスだけでなく、他の2人の王子と出会ってもまともに会話をするタイプではなかった。

触るもの皆傷つける、尖ったハートの持ち主だった。

だが今のランスは羽毛のようなゆるふわハートの持ち主なので、こうやって普通に関係を築けるのは当たり前の様に感じた。

何故小説のランスはあんなに荒んでしまったのか、今となっては本当に疑問である。


そんな訳で、無事に初体面を終えた俺達は、それからもよく5人で遊ぶようになり、それはそれは仲の良い友人グループとして認知される様になったのだった。


ランスとは俺が元々読書好きだった事もあり、頻繁に本の貸し借りをする仲になった。

カルロス達も本は読むのだが、ランスはストーリー性のある本をよく読んでいた事もあり、色んな話を薦めてくれた。

お陰で漫画やネットが無いことに少々燻っていた欲が、程よく解消されたので俺にとっても良い影響になったと思う。


ただランスは、引きこもりだった事も要因なのかファンタジーを鵜呑みにしている節が多々見受けられたので、それを訂正するのに結構頭を悩ませた。

俺も多少世間知らずな面がある事は自覚しているが、ランスのは何というか度を越しているというか天然というべきなのか。

この間こっそりと「ギルバートって本当は天使なんでしょ?」と自信満々な顔で耳打ちされた時には、一瞬言葉を解釈できず呆けてしまった(どうやら本に書いてあった天使が金髪に青い目だったのでそう解釈したらしい)。


他にも「ギルバートは勇者の生まれ変わり(自分を救ってくれたから)」だとか、「ギルバートはボクの運命の人(似たような話の本があったらしい)」とか、「ボクにとってのギルバートみたいな人の事を恋人っていうんだよね(同調魔法を恋人や夫婦だけが使える魔法と記述した本があったらしい)」等々、そんな感じの事を当たり前のように皆の前で告げ、毎度俺達を凍てつかせた。

流石は『氷の王子様』である。

そしてその度に俺やカルロス達が必死に訂正するというのが、ある意味お約束みたいな感じになっていた。


妙に真剣な表情で、毎度ランスに訂正してあげている3人は、本当に友達思いな良い子達である。



そしてそんなこんなで約2年の時が経ち、俺は今年で9歳となった。

精神年齢は29の筈だが、体が若い事もありあまり自覚は湧いていない。

こうやって29年生きても、何だが大人になれた気がしないのが不思議な感覚だ。

…まぁ、本当にまだ子供なんだが。






「ギルもそろそろお茶会デビューかぁ。」


今日は俺達の授業がお休みと言うことで、俺達はカルロスのタウンハウスに招かれ、まったりとお茶をしていた。

すると、いきなりカルロスがそんな話題を持ち出したのだった。

あ、ちなみにギルとはもちろん俺の愛称である。


そんなカルロスはこの2年で身長は勿論、この中では年長者(数ヵ月違いだが)という事もあるのか、声変わりも早々に終え一段と大人の色気が出てきた。

声もだが、何というか纏う雰囲気がなんかエロスになってきた様に感じる。

9歳にしてエロス王子とは、これ如何に。


「何だよ藪から棒に。」

「いや、ギルももうすぐ9歳になるじゃない?そろそろだなー、って思ってさ。」

「んー、まぁ基準としてはそろそろだけどさぁ。」


その話を聞くと、何だか気が重くなる気がして俺は思わず溜め息をついた。

この世界では、10歳を越えるとそういった社交の場に出向くことが許される。

だが、それまでの準備期間として、大体の子が9歳から親戚や知り合いの家のお茶会などに参加し、社交のマナーなどを学ぶ機会が用意されている。

どれにどう参加していくかは本人の実力と意志が反映されるのだが、俺はすでに父さんからそういったお茶会に積極的に参加させられるという事が義務付けられている。


父さん曰く、「演習なしの方がよっぽど心臓にくる」だそうだ。

確かに俺は、クリス達に比べてそんなにマナーが出来る方ではないが、そこまでか。

仕方なかろう。中身はアラサーだが、前世では病気の事もあってほぼニートに近かったんだから。

敬語が使えるだけまだマシな方だろう。


「お偉いさんとか、どこぞの坊ちゃんだのにニコニコ挨拶し回らなきゃならんと思うと、気が重い…」

「義兄さん、堅苦しいの嫌いだもんね。」


俺の様子に、クリスは困ったように笑う。

元々落ち着いた性格ではあるが、この2年で大分身長も伸びてきており、頭一個分小さかったはずのクリスは俺と同じくらいの背丈になった。

それも関係しているのか、最近少し大人びてきたように見える。

…兄ちゃん、ちょっと寂しい。


「…でも、ギルは長男…なんだから。ちゃんと…しなきゃ…」


そう言いながら、ランスはカリカリとクッキーを頬張っていた。ハムスターか。

ランスは男の中では1番背が低いが、それでも以前に比べれば結構伸びており俺の鼻ぐらいはある。

以前より人と話す事も増えたからかよく人を見ており、その場でゆっくりながらも思ったことを素直に発言するようになった。

…たまに背後に音もなく居る時があるが、その際にはかなり驚くのは恒例となりつつある。

王子が隠密力高めてんな。もっと存在感だせ。心臓に悪いから。


「そうですわ。オルコット家長男として、しっかりと責務を果たさなければなりませんわ。」


そう言いながら、アリスは優雅に紅茶を口にした。

アリスは女の子という事もあり、5人の中で1番小さく俺の肩くらいではあるが、その所作は本当に立派な淑女に成長していた。

以前は遊ぶ時にはもっと無邪気にしていたが、最近は少し落ち着いたのか以前より優雅さを感じる方が多い気がする。


…気が強いのは相変わらずであり、男に混じって遊ぶことを止めては無いし、相変わらず俺達の稽古にも参加しているので、可愛い見た目に反してかなり逞しい系女子ではあるのだが。


端から見るとこの場は、美しい少年少女達がまるで絵画の一枠のような美しい所作で、行儀よくお茶をして居る情景なのだが、その中で唯一俺は机に肘をつきながら、だらけた様子でもぐもぐと茶菓子を頬張っていた。美しさ台無しである。

まぁ例え俺が行儀良くしていたとしても、未だぽっちゃり体型からは抜けきれていない俺が居るだけで、すでに美しいお茶会とやらは台無しだがな。


けど、当初のデブ具合からは大分マシにはなったのだ。

バランスに気を付けた食事、適度(?)な運動、健康的な生活リズム。

好きな時に好きなだけ好きな量を食べ、さらに好きな時に寝るような生活を改めた事で、時間はかかるがこんなにも健康的に減量が行えている。

残すは顔と腹の肉が減れば、無事平均体型となれるはずだ。

ま、俺は皆と比べて美形じゃないから、痩せたところでただのモブ男でしかないのだが。


「あ~~貴族社会面倒ぉ~。クリス、今からお前長男やって~。」

「えー…そうなると僕、義兄さんの弟じゃなくなるから嫌。」


よく分からない理由で断られてしまった。

どこに突っかかってんだお前。着眼点可笑しいぞ。

ハァーと大きな溜め息をつく俺は、俺達の近くで茶菓子の代わりに用意された、小さな肉の欠片を美味しそうに啄むラヴィにチラリと視線を移した。


「ラヴィはいいよな。狩りをしなくてもそうやって飯にありつけて。」

「キィ?」


呼んだか?と言わんばかりに首を傾げるラヴィは、猛禽類とは思えないほど呑気にしていた。


あれから我が家のペットになったウサミミフクロウのラヴィは、別にリードなどで繋いでいる訳でもないので勝手に逃げても構わないハズなのだが、まったく脱走する様子も無く我が家に定住していた。


たまに散歩(散飛行?)の様に近所を飛んでいるらしいが、それもすぐに帰ってきている。

どうやら自然に帰る為の練習などではなく、近所の人達やうちの使用人達などからエサだのなんだのを貰いに行っているだけらしい。

しかも梟は夜行性と言われている通り、本来ラビィの種族も夜行性のハズなのだが、ラビィは俺達の生活サイクルとほぼ同じ生活を過ごしていた。


昼間は俺達の近くで授業中は大人しく席に着いており(部屋の隅だったり窓際だったり場所は様々だが)、遊ぶ時は側で一緒に遊びに参加し、夜は俺の部屋に用意した鳥篭(ちょっと大きめ)に自ら入り就寝する。

猫の様に狩ってきた獲物を持って帰る事も覚悟していたが、まったく狩りに出る気配すらない。

この間なんか、仰向けでひっくり返って呑気に寝てたぞコイツ。


…お前、もう完全に野性に戻る気ねぇな。戻ったら一発でやられるわ。


そうやって規則正しい生活な上によく食べ、よく寝る生活をしている為か、ラヴィの体は以前より一回り大きくなっていた。


一応言っておくが、別にデブった訳ではなく成長して大きくなったのだ。

飼い主に似てデブるなどという事態を、俺が許すハズはない。

定期的に獣医師に診て貰い、ちゃんと健康には注意を払っている。


初対面が大きかったイメージもあるのでしばらく勘違いしていたのだが、ラヴィはあれでもまだ子供なのだ。

獣医師曰く、恐らくまだ成長するらしい。

…今でも日本の梟ってこれくらいで大人だった気がするのだが、一体どこまでデカくなるのだろうか。

俺は再度、大きな溜め息をついた。


「こらこらギル。そんなに溜め息つくと、幸せが取られちゃうよ?」

「取られるじゃなくて、逃げるじゃなかったか?」

「え?そうだっけ?まぁどっちでもいいけどさ。とにかく元気出しなよ。初めてのお茶会なんてそんな気を張るようなものでもないし、軽く考えなよ。」


カルロスが先輩風を吹かせるように、俺を宥めてくる。

と言うのも、この中ではカルロスが一番誕生日が早いので、すでにお茶会デビューは済ましているのだ。

なのでお茶会に関しては、元々マナーに厳しい王族の講習を受けている事もあり、かなりの腕前となっているらしい。


けれど、礼儀の完璧なカルロスと底辺の俺のレベルの差はかなりあるので、そのアドバイスはあまり参考にはなりそうもない気がする。

するとカルロスは、いきなり何か思いついたように語り始めた。


「そうだ、来週のギルの誕生日。僕に企画させてよ。」

「は?」


唐突な提案に、俺だけでなくその場に居た全員が理解できないといった表情を浮かべ首を傾げた。


「ほら、僕は一応お茶会の雰囲気が分かってるからさ。今度のギルの誕生日に、ついでにその場を設けて練習すればいいんじゃないかな?」

「誕生日会に練習とか…」

「練習と言っても、参加するのは僕達やウチの使用人達の子供に限れば、そんなにギルも緊張しないでしょ?とりあえず場の雰囲気に慣れるって事を目的とした。気負わないお茶会だよ。」

「なるほど…」


確かに、参加者が爵位や高位な立場で無い者達なら、立ち振舞いに失礼があっても大した問題にはならないだろう。

その場で注意して貰えば、今後の振舞いに注意すべきところも気付けるので問題点を改善しやすい。

予行練習としては、確かに悪くはないのかもしれない。


「…でも、相手役は本来、参加出来ない立場の子達なんだよね?…そんな子達で、本当に練習になるの…?」


ランスの言葉に、「確かに」とカルロス以外の全員が頷いた。

一般階級の子供達が参加しても、ただの無法地帯になる可能性が大な気もする。

俺としては、そちらの方が楽っちゃ楽だが。


「心配ないよ。事前に立ち振舞いの審査を通過した子達に頼むようにするから。彼等だって、僕達貴族のお茶会に参加して、わざわざ失礼を働くような真似をしようとは考えないだろうからさ。」


審査って…アイドルか子役のオーディションかよ。

…とは思ってしまったが、案外子役と言うのも間違ってはない気がしたのでスルーする事にした。

それに、学園に入学すれば平民も貴族も関係ないのだから、この世界のそういった立場の子達とこれを機会に交流を持つのも良いかもしれない。

ここはカルロスP(プロデューサー)に従ってみるか。


「うーん、それなら大丈夫そう…かな?」

「じゃあ決まりだね!あ。あと2人程皆に紹介したい人が居るんだけど、その子達も呼んでもいいかな?」

「別にいいけど…どんな子達なんだ?」

「2人供王族なんだけど、彼等も僕らと同い年の魔力保持者だから、いずれ学園で会うことになるだろうし、この機会に是非とも君達に紹介しておきたくてね。」

「へぇー、王族…」


ん?王族?同い年?2人?

カルロスと知り合いの王族…学園で出会う…つまり幼馴染…


ま さ か


「…カルロスさんよ。その子達のお名前聞いてもよろしいかい?」

「ん?あぁ、1人目は火の国の王子でガイ・レッドマン。もう1人は土の国の王子、ルーファス・マントルって言うんだよ。」


やっぱりかい!!


まさか、学園まで会わないだろうと踏んでいたのに、まさかの伏兵だ!!

小説のクリスの破滅フラグ、ガイ・レッドマン。

学園入学時の時点で、すでに喧嘩では無敗を誇る実力を発揮し、不良の頂点に君臨した男。

そのガイ率いる不良集団に所属することが、クリスの破滅の第一歩になる。


何で…


何で…


何でこうもフラグやハプニングに見舞われるかなぁ~!!??


我モブぞ?小説で合計1頁弱しか出ぬモブぞ?

王子ももう2人出会ってるんだからさぁ~これ以上出さないでいいだろーー!!!




相変わらずの更新頻度で申し訳ありません。

こんな感じですが、ちまちまでも進めていきますので気長に、お付きあいくださる方はよろしくお願いします。

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