↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/28

≪小話≫7.5~11:ランス王子と保護者達の心情

毎度閲覧等ありがとうございます。

今回はランスが家出するまでの経緯や、その裏側の様子の捕捉のようなものです。

ランス・レインウォーターの理想


水の国に存在する王城の一室にて、この国の王子であるランス王子は読書を行っていた。


「…見終わっちゃった…」


パタン、と今まで読んでいた本を閉じたランスは、1人そう自室で呟いた。

ランスはいつもこの部屋に1人きりだ。

自身に宿る強い魔力をうまく制御出来ないでいるランスは、側にいること自体が危険とされている為使用人達も積極的に彼に近付く事はなく、最近は両親とすらあまり会えていなかった。

この部屋には強力な結界が施されているので、魔力の暴走を極力抑える事が出来る。

この部屋で、ランスは物心ついた時からずっとここに居るように言われてきた。


そんなランスが普段やることと言えば、出された課題を片付ける事と暇つぶしとして用意された本を読む事、そして運ばれてくる食事を摂ることぐらいだ。

食事は決まった時間に、使用人の誰かが部屋の前に置いてくれている為、お腹が空けばそれを摂るようにしている。

そして課題もとうに終えてしまい、残りは読書くらいなのだが、新しく提供された本をたった今読み終えてしまった。


外に出ることが滅多とないランスは、物語でしか人というものを知ることが出来ない。

例えそれが空想であろうとも伝記であろうとも、ランスにはすべてが新鮮であり、人生とも言える程の割合を占めていた。

それに、物語というものは誰かが書いたもの。

その物語を読むことで、誰かと繋がっている。

ランスはそんな気がしていた。

今回の本は、最強と呼ばれた1人の男が旅に出て、様々な人たちに触れあっていくという物語だったが、これがなかなかに面白かった。


「この人はいいなぁ…強くても、皆から慕われて…」


強い、という単語に、ランスは思わず自分の力と比較してしまう。

自分はこの主人公の様に強い力を持っているが、それは決して良いものとは言えなかった。

そこに居るだけで、全てを氷付けにしてしまうこの力。

この力が発現してから、何人もの使用人達が怪我を負ってきた。

凍傷はもちろん、意図せず床を氷付けにしてしまって転倒してしまう者や、凍った物で傷付いてしまう者達も居た。

それを恐れた者達からの訴えを聞いた国王は、国内の呼べるだけの魔術師を呼び集め、王子の力を封じようとした。

が、残念ながら一時的に抑えられても、すぐにその強い魔力により封印が耐えきれず解けてしまい、どうにも出来ない状況だった。


その結果、魔術師から告げられた解決策は「時を待つ事」だった。

暴走の原因は恐らく、まだ幼い王子の器に力が収まりきらないため何もしていなくとも魔力が溢れ出てくるのだろうという見解だった。

また精神的にも幼い為、少しの感情の揺らぎで魔力が暴走してしまうのも一因だった。

つまり、王子が成長し力を受け入れる器が完成しきるまで、どうにか待つ事しか解決策が見当たらないのだ。


本来の理論であれば、魔術で王子の魔力の器の力を強化出来れば良いのだが、現存している妖精石では安定した術が施せない可能性があり、逆に王子の命に関わる危険性があるのだ。

現在はとある魔術師が持ち寄った古くから伝わる『魔力を無力化』するローブを、王子に渡し着用する事で抑える事となった。

しかし、流石に四六時中ローブを羽織るのも難しいので、王子の部屋に少しずつ魔力を分解する術と魔力を封じる結界を施してある。

だが、それも一週間に一度は代えなければ綻びが出てしまう程に、王子の魔力は危険を孕んでいた。


「…よし、ちょっとだけ、お外行こ。」


しかし自分の力が強大であり、誰かしら傷付いてしまうのは知っているがそこまでに重大だとは知らされていないランスは、ローブを羽織りたまに城内を無邪気にも探索していたのだった。

探索と言っても、バレるとマズイとは分かっているので、近くの部屋をちょこちょこ覗いたりする程度なのだが。


ローブをしっかり着込んでいれば、多少の時間ではあるが周りに影響も無いので、なるべく物に直接触れない事を気を付けながら、ランスは隠れながら城内探索する事が密かな趣味になっていた。

そして、今日も暇を持て余してしまったランスは、軽い気持ちで城内探索に出掛ける事にしたのだった。

そして、いつも通り無邪気に探索していると、とある部屋で話し込んでいる使用人達の声が聞こえてきた。

ランスはその話し声の中に自分の名前を呼ばれた気がして、悪いとは思ったがその部屋までコッソリ近寄り聞き耳を立てた。


「見てこの傷、ランス様にやられたのよ!花が凍ってるとは思わなくって触れたらもう…血が止まらなくって…」

「私なんか転ばされたわ…見てよこの頭の傷!」

「怖いわね…」

「なんであんな恐ろしい力を持ってるのかしら。」

「化け物なのよ!きっと!」

「ちょ、ちょっと…声が大きいわよ…」

「でもランス様さえ居なければ、陛下も王妃様も良い方々なのにねぇ。」

「あんなんで、この国はこの先大丈夫なのかしら…」


部屋から聞こえたその言葉は、使用人達にとってはただの世間話程度のものだった。

けれどその言葉を聞いたランスは、すぐに自室へと駆け戻っていった。

そして、ローブを羽織ったまま布団に潜り込み、包まりながらガタガタと震えた。


『やっぱり、ボクは居ない方がいいんだ。』

『ボクは、化け物なのか。』

『皆ボクの事嫌いなんだ。』


一晩中、ランスは誰に気づかれることなく、1人で震え続けた。

そして、朝になり泣きつかれて寝てしまったランスの腫れぼったい目に、昨日読んでいた本が目に入った。

そして、ランスは思い至った。

「そうだ、旅に出よう」と。


この王城には、自分を嫌う者しか居ない。

もしかすると、外の世界には自分と同じ人が居て助けてくれるかもしれない。

そう思い立ったランスは、用意されていた朝食を取りすぐさま動きやすい恰好に着替え、小さなバックを掛けるとその上にローブを羽織った。

そして昨日の晩御飯を食べ損ねた為か、少し朝食が物足りなかった気がするな、などと考えているとそういえばやはり食料は持っていくべきだろうかと思い付いた。

そして、支度やら後片付けやらでバタバタしている厨房から林檎とパンをいくつか拝借した。


その後人目を掻い潜りながらどうにか裏口まで出たランスは、そこに見覚えのある馬車がありそれ目掛けて勢いのまま乗り込んだ。

確かその馬車は、ランスの部屋の窓からよく城内を出入りしているのは見ていたので、見た瞬間これに乗れば出ていけると思ったのだ。

残念ながらその馬車は、そんなに遠くには行かないのだが、外に出た記憶の無いランスにはもうすでに乗った事自体が大事だったので、一仕事終え一息つこうと拝借したリンゴを1つ食べる事にした。

そして食べきった事で満足したランスは満腹感と寝不足から次第にウトウトしだし、そのまま馬車の中で眠ってしまった。

そうして、小さな王子の冒険は始まってしまったのだった。


対して城内では、昼過ぎに王子の昼食が減っていないことの報告を受けた執事長が王子が昨晩も食べていなかった事もあり体調を確認する為、王子の部屋へ訪室を行った。

返事がない事に違和感を感じた事から室内の確認がされ、そこでようやく王子の脱走に気がついたのだった。

ちなみに、誘拐ではないことは王子の机に『探さないでください。旅に出ます。』という紙切れがあった事から、王子の家出であると判断が成された。


朝食が無くなっていた事や幼い子供の足ではそう遠く行けないと判断され、城の近辺を探すことになったが、残念ながらその頃王子はすでに馬車小屋までたどり着き、山の中に入り込もうとする所であった。

その時たまたま、馬車の清掃を行っていた男性が、走り去る小さい子どもの姿を見ていたことで、近辺を捜索していた騎士団の耳に入り、王子の探索範囲がその山へと切り替った結果、その後ギルバートを追っていた師匠(元騎士団長)と遭遇する事となったのだった。


そんな大捜索が行われていると知らないランスは、勢いで入ってしまったがよく分からない山の中をとにかく進み続けた。

しばらく歩いた後に、ようやく人の声(ギルバート達)を聞き、助けを呼ぼうとした際にその人達から『熊』の単語が聞こえ、急に怖くなったランスはそのまま来た道を逆走する事になった。

それが、ギルバートと出会うまでの道中であった。


そして、追いかけてくるギルバートを身体の大きさから子熊か何かと勘違いし全力で逃げたのだったが、鍛えている分ギルバートの方が足が速かったのですぐに捕まってしまった。

そして、ようやく熊でないことを確認したが、恐怖心から力が暴走してしまい、危うくギルバートを氷付けにしてしまうところだった。

そして、今の状況から自分がどれだけの事を犯してしまったかを自覚した。

こんな力を持つ自分が、外で誰かを傷つけてしまうという可能性にやっと気付いたのだった。


そんな罪悪感から混乱しているランスは、ギルバートから名前を聞かれた際に、何故彼が自分を知っているかに気付くどころの話ではなかった。

本来彼は表の場に出て来た事は無いので、ギルバートが王子を知っている筈がないのだが、様々な事に混乱していたランスにはそう考える余裕は無かった。

そしてそんな中、冷静に状況を確認するギルバートに、ランスもどうにか自分の状況を伝えようと必死に話した。


人と話すことも久しぶりだったので、言葉につまり伝わらないかとも思ったが、ギルバートはしっかり理解してくれたらしくとても助かった。

それも、ギルバートが小説で前情報を知っていたからなのだが、それもランスには知る由もなかった。

ただ、話の途中から事の重大さを知り真っ青になったギルバートに、ランスは思わず傷つけてしまったか心配になったが、体調不良ではないとのことでとりあえず安心した。

そして、状況を把握したらしいギルバートにいきなり抱えられた時は、初めての他人との接触に思わず驚いてしまった。

けれど、疲れきってしまった上に、どうにかしてくれると言い切るギルバートの頼もしさから、大人しく身を任せる事に決めた。


その後、まさか巨大生物に襲われるとは思わなかったが、そんな状況でもギルバートをとても頼もしく感じた。

ランスを宥めようとしてくれたその手はとても温かく、自分より少しだけ大きなその手に包まれていると何だか心が落ち着いてきた。

そしてその時、ギルバートから自分の力を認めて貰い、しかもその力で巨大生物を撃退出来た際には、ギルバートがまるで小説に出てきた主人公のように見えて、とても格好良いヒーローのように感じた。

そしてギルバートと別れた後は、握りしめてくれた手がポカポカと暖かく感じ、それはしばらく消えることは無かった。

こうして初めて、人の温かさを知ることが出来たランス王子の冒険は幕を閉じたのだった。


そして無事城に戻った王子は後日、国王である父直々に事の重大さを伝えられ、嗜められた。

また本当に心配した事も伝えられ、父は自分に興味がないと思い込んでいたランスは、思わずその場で嬉しさから父に抱きつき泣いてしまった。

それからは、ギルバートに言われた通りに魔術師に妖精石を渡し、無事に魔力の封印(実際に行われたのは王子の魔力保有耐性の向上と魔力発動量の制限であり、更に王子の希望から魔力の任意発動がある程度行える様にコントロール力の向上)が行われた事により、魔力の暴走の危険性は収まったのだった。


その事を、すぐにギルバートに伝えたくてわざわざ城まで呼び寄せて貰ったのだが、当のギルバートはかなり緊張していて話すどころの状態には見えなかった。

あの時は格好良く見えたギルバートも、普通の少年らしさがあると知りなんだか嬉しくも感じた。

そして、そんなギルバートともっと仲良くなりたいと思い、勇気を出して願い出ると彼は快く受けてくれたのでとても嬉しかった。

それからは、早くギルバートに会うためにも、自分の力を完全にコントロール出来るように頑張って指導を受ける事にした。


そしてまた、あの暖かい手に早く触れたい。

ランスはその願いの為に、今日も自分の力と向き合うのだった。




保護者達の苦悩


ギルバートが無事に帰宅してから一週間後。

ギルバートの父、リチャード・オルコットと師匠と呼ばれているザックは、とある一室にて2人きりで話し合っていた。

その話の中心は、勿論ギルバートの事だった。


「…リチャード。今回の件…本当に申し訳無かった。」

「…正直。執事からギルバートが行方不明と聞いた時は、心臓が止まるかと思ったよ…」


頭を下げて謝罪するザックに対して、リチャードはハァーと大きな溜息をつきながら頭を抱えた。


「すぐに君が見つけてくれてなかったら、一晩中心配で眠れなかったよ…私が自分で探しに行っていた所だ。」

「やめてくれ…お前は本当にやりそうだ…一公爵が山狩りとか…スキャンダルもいい所だぞ。」


リチャードの言葉に、今度はザックが大きな溜息をつく。


「でも、一概に君を責める気はないよ。ちゃんと、クリス達は屋敷まで送ってくれたみたいだし。」


ギルバートが姿を消した後、混乱し追いかけようとする2人をザックは取り押さえ、悪いと思いながらも気絶させた後に、待たせていた馬車の従者に2人と言伝を託したのだ。


「行方不明者を増やさなかったのは正しい判断だった。話を聞く限り、今回は大半ギルバートが悪いと私は思う。」

「…だが、私の監督不行き届きが一因でもある。ギルバートだけを責めないでくれ…」


申し訳無さそうな顔をするザックに、リチャードは少し困った表情で笑う。


「…分かってるよ。…君の処分については迷っていたんだが…君には暫くの間の減給を言い渡す。」

「…解雇でなくていいのか。甘いな、お前は。」

「甘くはないさ。言ったろ、今回は明らかに君の指示を無視したギルバートが悪い。君はギルバートを引き止められなかった分の責があるとして、これくらいと判断したまでさ。まぁ…ギルバートも無事に戻ってきてくれたし、説教はメアリと子供達が請け負ってくれたからね。今のところ、私からは暫くの間自宅謹慎と使用人達からの監視を受けて貰っているし、もう暫くの間は窮屈な思いをしてもらう事にするさ。」


基本的に自由に動くことが好きなギルバートにとって、監視される事は勿論自宅謹慎とさらに武術指導を受けることも禁止されており、それなりに堪えているようだ。

一応ザックの前では口には出さないが、やはりかなり不満そうな表情を浮かべている事が多い気がする。


「…お前が決めたのなら…私はそれに従うまでだが…」

「それより…私は、もう1つの件について相談があってね…今回はその事で相談がしたかったんだ…」

「もう1つ…?」


リチャードは溜息をつきながら、両手を顔の前で組み直し真剣な表情で告げた。


「陛下からギルバートへ謁見の令状が来た。」

「一大事じゃないか…!」


ザックはその言葉を聞き、真っ青な顔をして思わずその場に項垂れた。

いきなり行方不明になったかと思えば、ギルバートは何故か王子を連れており当時は正直混乱した。

さらに今回その父であるこの国の王に呼ばれるとは、色々有りすぎて展開に頭がついていかない。


「なぁ…一応は経緯は聞いているが…あの子、王子に失礼な事してない…よな…?」

「た、多分な…で、あちらは、何と…?」

「…『礼を告げたいのでまた一週間後に来城されよ』との事らしいが…あの子、正直礼儀関係微妙に怪しい気がするけど、大丈夫だと思うか…?」

「…クリス達ならまだしも、ギルバートは正直不安要素しかない…」

「だよな…」


あの性根が自由人のギルバートが、無自覚にも陛下に失礼な事をしかねない。

そう考えると二人はハァー、と大きな溜息をつき頭を抱えた。

当のギルバートは20+7歳の精神年齢ではある為、全くの良識がない訳ではないのだが、如何せん社会的な振るまいにかけては前世の境遇もあり経験不足な面がみられた。

所謂『世間知らず』というものである。

なので大人達からは、やはりまだ7歳という認識と今までの悪行(?)の数々から、心配の種は尽きないのである。


「ま、まぁ、当日ギルバートにとにかく大人しくするよう言い聞かせれば大丈夫…だと思うが…」

「そ、そうだな!話せばあの子だって分かってくれる…よな?」


二人はそう互いに言い聞かせると、ハハハ…と乾いた笑みを浮かべるしか心を静める方法を思い付かなかった。




そして当日、なんとか無事陛下との謁見を終え、そのまま王子に連れられて行ったギルバートを思わず呆然と見送っていたリチャードだったが、陛下から声を掛けられすぐさま膝まづいた。


「そんなに堅苦しくしなくとも良い。…リチャードよ、良き息子を授かったな…」

「は、勿体無きお言葉…」

「して、リチャード。息子達も居ないことだ。実は今回お主を呼んだのにも理由があってな…私は、王としてでなく個人的…父親としての話、いや相談がしたかったのだ…」

「?陛下が、私に…?お答え出来ることであれば、何なりと…」

「ふむ、相談というのはな…」


そしてリチャードは、息子との接し方や子供の趣味嗜好など、本当に父親としての相談を国王から本気でされた。

どうやら、とある事情から今まで王子と関わって来なかったらしく、今さら父としてどう接すべきか分からないとの相談だった。

リチャードは戸惑いながらも無難な受け答えを行うと、その事を陛下は真面目に受けとめ、それなりに納得したようだった。

そしていくらかの相談の後に、陛下から「最後に一つ言うべき事がある」と告げられる。


「此度の件、ギルバートを余り責めてやってくれないで欲しい。元より私が息子に上手く関わってやれなかったのが原因だ。ギルバートは今回それに巻き込まれただけ。息子の命を救ってくれた彼には、何と礼を告げれば良いのか分からぬ程だ…」


そう言いながら頭を下げてくる王様に、リチャードは思わずその場に跪いた。


「お顔をお挙げください陛下…!そのように申していただく事こそ私供には至上でございます…!」

「…そう言って貰えるなど、私は本当に民に恵まれたものだ…」


フッと微笑む王様は、リチャードにはどこか少し悲しげな表情に見えた。


「…恐れながら陛下。ギルバートは恐らく、あまり深くものを考えずにランス様に関わったのでしょう。あの子は打算など難しい事を考えるのはあまり得意そうではありませんから…此度の件、ギルバートにとっては、ただ目の前で困っている人を救っただけの事。陛下が気にされる程の事ではございません。」


その言葉に、王様は少し驚いた様子を見せたが、すぐに優しい笑顔へと表情を変えた。


「…困っている人…か。そうか…彼にとっては、特別な事では無いと…そういう子も居るのだな。ならばリチャード、ギルバートに伝えてくれ。これからも息子ランスと、仲良くしてやって欲しいと。」

「はっ!必ずや。」


そう国王とやり取りをした帰り道、まさかランスとギルバートが友人になったという話を本人から聞くことになるとは、リチャードは思わなかったのだった。


「末恐ろしい子だ…」


そう呆れた様子で呟いたリチャードだが、その表情は愛しい我が子を見るものであった。

爆睡している我が子を撫でながら、リチャードは心の中で考える。


「(この先もこの子は、きっと危ない目だとしても、今回のように人を助ける事に迷いなく向かっていくのだろう。)」


今回かなり灸を据えたつもりではあるが、ギルバートの気質上、彼はきっとこれからも誰かのために動いてしまうだろう。


「(…陛下に偉そうに語れる程、私もまだまだ父親として成熟してはいない…この先私は父として、この子に何をしてやれるのだろうか。)」


そう、リチャードは一人悩むのだった。


「(…分からない、この先のことなんて予想も出来ない。…けれど今はただ、お前がこれからも健やかに生きてくれることを私は祈っているよ。)」


リチャードはそう結論付けると、眠るギルバートの額へと祈りを込めて口付けた。


「無茶も程ほどにな、愛しい我が子よ。」


そう呟きながら、リチャードはムニャムニャと聞き取れない言葉で寝言を言うギルバートに大して困ったように微笑むのだった。



ランスが報告の際「力の半分を封印した」と話していますが、正確には魔力保有量はそのままであり、魔力の出力に制限をつけた(話の中の例えでいうと水道の蛇口の口を小さくした)というの説明をランスなりに解釈した結果、そう言う伝え方となっています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。