11:予想外な展開になった…
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そして師匠からは、半分呆れられながらも軽く頭を撫でられたので、俺は一応誉められているのだと取ることにした。
タンコブは痛かったけど。
そして、折角なのでその妖精石を使って騎士団の中に居た風属性の人達により、俺達は無事家まで送り届けて貰う事になった。
そして去り際に、ランスから妖精石と交換するようにローブに包まれた例の梟を託された。
ランス曰く、自分は面倒みれるか分からない状況なので、どうにか俺に頼みたいとのことだった。
確かに、ランスの今までの状況を考えるとそれも理解できたので、結果忽ち梟は俺が引き取ることになったのだった。
屋敷に帰ってからは、とにかく大変だった。
まず大変だったのは心配した義母さんとクリスからの説教の嵐だった。
2人の説教嵐は一晩中続き、反省のため正座をさせられた俺の足は、説教が終わっても酷い痺れからしばらくその場から立ち上がる事が出来ず、横になりながら悶え続ける事となった。
そしてもう一つは、俺が帰ったと同時に無事だった安心感と待っている間の心配が落ち着いたアリスの大号泣だった。
義母さん達に叱られている間も、アリスはずっと俺の腰にしがみつき泣き続けていた為、俺は説教中ずっと宥めてはいたのだが、それでも決して泣き止まないアリスにはさすがに俺の良心的にも大変キツかった。
そして、説教後痺れて動けない俺にようやくアリスは離れ、泣き腫れた顔のまま無言で俺の介抱をしてくれた。
その健気で優しい様子は大変申し訳なく、いつかアリスに何かしら侘びを入れねばと深く反省するのだった。
前世ですら女の子を泣かすなどという事を体験した事が無い俺が、まさか齢7歳にしてこんなにも女の子(しかも義妹)を号泣させるという体験をするとは思わなかった。
そして、そんな反省心に追い討ちをかけるように、説教後一旦退室したクリスが戻ってきて、床に倒れた俺の腹に顔を埋めて静かに泣き出したのだった。
止めてくれ義弟妹達よ、俺のHPはもう0よ。
正直、自身に向けられた説教よりも、こちらの方が何倍も精神的に堪えた俺だった。
そしてその後、勝手に一人で行動した事に流石に遺憾とした父さんから自宅謹慎…という名の外出禁止令を告げられた。
更にその謹慎中は、誰かしら使用人がほぼ付きっきりに俺を監視するという、まるで犯罪者の様な扱いを受ける事となった。
まぁ室内だけなら自由に行き来は出来るので、犯罪者より扱いはマシではあろうが、それでもかなりの肩身の狭い状況になってしまった。
そしてもう一つ。
師匠も、監督不行届きという事で暫くの間減給を言い渡され、師匠の奥さんからも大目玉を食らってしまったらしい。
正直これに関しては、師匠に対し大変申し訳なく思い、父さんに異議申し立てたのだが、元凶である以前に子供である俺にはどうしようも無いことだと、逆にたしなめられたのだった。
師匠にも謝罪を述べたが「こればかりは、大人の事情だからな。反省してるなら、今度からちゃんとしろ。」と困ったように笑って返されてしまった。
精神は20歳以上だとは言っても、やはり自分はただ子供でしかないという、なんとも言えない歯痒さを感じたのだった。
そして話は変わるが、気を失っていた例の梟は、結果としてウチの一員になることとなった。
持ち帰ったその日は、説教の事もあり師匠とその奥さんに一時的に面倒を頼んだのだが、梟は結局それから一晩目を覚ますことなく眠り続けた。
それを心配した奥さんが、夜が明けてすぐに獣医師を呼んで診てもらったのだが、結果は軽い脳震盪だけで他に怪我などは見当たらなかったそうだった。
その時やっと足の痺れから解放された俺が、様子を見に行ったら丁度目を覚ましていたらしく、奥さんが用意してくれていたささ身を元気に平らげていたのだった。
あの魔力パンチを受けながらも、大して大きな怪我も見られないとのことで、一応処方された栄養剤を飲んだ後は、梟は呑気に「キィーキィー」と鳴いて奥さんに甘えていた。
…あれ食らってそれだけって、どんだけ丈夫なんだよお前。
と、俺は呑気な梟にホッとしながらも頭を抱えるのだった。
そしてそれから梟は、しばらく療養としてウチで過ごすことになったのだが、俺は野生の梟でもあるソイツが何かやらかすのではないかと少し心配していた。
けれど梟は、初対面のあの時以来特にデカくなることも暴れることもなく、時に飛んだり走ったりしながらずっと俺の側を無邪気にちょこちょこ付いてきた。
本当にこいつが例の巨大梟だったのか疑問な程だ。
というかコイツ、自分かやられた原因が俺だって気づいてないだろ。と少し別の意味でコイツの事が心配になるのだった。
そして事情を話した師匠により、コイツは『ウサミミフクロウ』と呼ばれる種族の魔獣である事が分かった。
その由来は、ウサギの耳みたいな羽根が頭部に二本程生えているかららしい。
俺の予想通り、体を大きく出来る魔法を使える魔獣らしいが、本来それは威嚇の為でありウサミミフクロウ自体は肉食ながら、そこまで凶暴な種族ではないとのことだった。
妖精石が側にあった事から妖精石を飲み込んでいたのではないかと伝えると、恐らく何かしらの理由で巨大になった際に飲み込んでしまい、直接取り込んだ妖精石の魔力の影響で凶暴化したのではないかとの見解だった。
そんな事があるのか、という質問に対しては「食あたりみたいなものだ」と返された。
只でさえ異物を取り込んだ上に、大きすぎる魔力が体中を巡った結果、精神にも影響を及ぼしたのだろうとのことだった。
実際に過去にも妖精石を取り込んだ魔獣による暴走はあったらしく、中には魔力に耐えきれず内から破裂する魔獣も居たらしい。
…よく無事だっなぁお前、と思いながら俺は肩に乗って寛ぐヤツの頭を撫でてやった。
師匠によると、恐らく取り込んでそんなに時間が経っていなかったのでこの程度ですんだのだろうとの事だった。
大変運の良いヤツである。
そして暫くして元気になったので、俺は専門機関に託すか自然に返すつもりだったのだが、予想以上にコイツが俺達に懐いてしまったのと、クリス達もコイツを大分気に入ってしまい、今後もこのまま飼うことになってしまった。
獣医師に相談したら、これだけ懐いていると人に慣れすぎて上手く野生に戻れないかもしれないという事と、恐らく還してもすぐ戻ってくるであろうという事なので仕方がない。
別になんかコイツ可愛いなってちょっと思い始めたからとか、そんな単純な理由じゃないからな、断じて。
因みに名前は『ラヴィ』にした。
理由はウサミミフクロウから。
ウサギ=ラビット→ラヴィである。
…悪かったな、単純で。
でもこの名前で呼んだらめっちゃ喜んだ様で、俺の顔に自分の顔を擦りつけてきた。
喜んでもらえて何よりです。
そんな訳で、ラヴィも結構早くに元気になり看病という看病をすることもなく、謎も結構早めに解けたので謹慎中のほとんどはラヴィも含めた義弟妹達と屋敷内でゆっくり過ごすしかやることがなかった。
しかし庭にすら出ることが出来ず、武術指導も暫く禁止されたので、体を動かす事も出来ず流石に室内で過ごすのにも早々に飽きてしまった。
一応筋トレはしていたが、筋トレだけでは流石にダイエット中の身としては物足りなさを感じたたので、もう少し体を動かしていたいと少し愚痴ったら、満場一致で「自業自得」と返された。解せるから黙るしかない。
そしてそんな退屈な2週間が過ぎた後、俺はまさかの我が国の王城に招かれてしまったのだった。
王様の勅命らしく、父さんに理由を訪ねると「王子の命の恩人に礼を伝えたい」との事だった。
…ランス、俺のことどんな風に伝えたんだ…
正直王族にする様な態度では決してなかったという自覚があるので、かなり不安要素しかなかった。
正直行くのを躊躇うレベルだったが、ランスも俺に是非会いたいとの事で、俺は父さんに連れられ久々の外出(行き先は王城)に向かう事となった。
出掛ける際には家族や使用人の各々から、神妙な面持ちで「失礼の無いように…」「身なりはちゃんと…」「なるべく静かに…」などなどかなり注意喚起をされた。
その注意を聞きながら、俺は無言でコクコクと頷きながらも、中々終わらない注意の中父さんに引き擦られながら馬車に乗り込んだ。
「(家から出られるのは嬉しいけど…王様に会うとかマジでどうしよう!?皆に言われた通り失礼の無いように大人しくしてよう!そうしよう!うん!)」
そう心に誓いながら、俺は折角の外出だというのに、王様の前で粗相をしないかという心配から全身カッチコチになり、外の風景すら楽しむことなく馬車の揺れに身を任すのだった。
そうして俺が緊張しているウチに、馬車は王城に到着してしまった。
俺は気の進まぬまま馬車から降りると、すぐに城の沢山の使用人の人達に迎え入れられた。
案内された城内の通路の端で、頭を下げながら出迎えてくれるその人達を見過ごしながら、まるで人で道を作っているようだとこの光景を見ながら呑気に考えてしまう。
父さんはやはり何度か来たことがあるようで、その足取りは迷うことなく王城の奥へと向かっていった。
俺はそんな父さんの後ろに、とにかく遅れないように付いていく。
しばらくそうして付いていった後に、ようやく父さんはその足を止めた。
俺も続いて止り、改めて正面を見上げるとそこには大きな門のような扉がそびえ立っていた。
あまりに大きな扉で、見上げた首が反りすぎて痛くなるほどだ。
そうやって見上げていると、頭上から父さんが声を掛けてきた。
「ギルバート、決して王と王子に失礼の無いように。いずれお前は長男としてこのオルコット家を継ぐ者なのだから、その自覚を持って謁見を行いなさい。」
いつもの優しい雰囲気とは違い、ピリッとした雰囲気の父さんに、俺は改めて首元のタイを締め、気合いを入れ直した。
「はい、父上。」
その返事を聞くと、父さんは少し微笑んで頷き、扉の前で控えて居た兵士に手を上げて合図した。
その合図に会わせ、兵士の人達が両側から扉を開けてくれた。
扉が軋む大きな音と共に開いたその先には、広い部屋が存在していた。
そして中心には、立派な装飾の施された王座に腰かけた、凛とした雰囲気を纏った中年代の男性が居た。
きらびやかな衣装を纏ったその男性は、ランスのような綺麗な水色の髪に、紫色の瞳をしていた。
王冠を被ったその姿からも、この人がこの国の王であることは一目瞭然だった。
王様は、俺達の姿を認めるとふっと微笑み「こちらに来るように」と声をかけられた。
父さんと俺は一礼をするとその言葉に従い、部屋に入り王の前で膝まずいた。
「お待たせしました陛下。オルコット公爵家当主、リチャード・オルコットと我が息子、ギルバート・オルコット。陛下の命によりこの場へお招きいただいたこと、誠に感謝致します。」
俺は父さんの言葉に続いて膝まずき、頭を下げた。
「うむ、遠い所御苦労だった。双方肩の力を抜きなさい。この度は我が息子ランスの命を、そなたの息子ギルバートが救ってくれた事に対する謝礼の場だ。感謝するのはこちらの方。改めて礼を言おう。」
「はっ、滅相も御座いません。」
「ランス。お前からも改めて彼に礼を言いなさい。」
「はい、父上。」
そう王様に呼ばれ、王様の横に設置された席に座っていたランスが立ち上がった。
「…ギルバート。君のお陰で…僕は、危ないところを救われた。…何度お礼を伝えても…足りない程。本当に感謝してる。」
「勿体無きお言葉でございます。」
俺は、頭を下げながらランスへどうにか返事をした。
正直緊張しすぎて、ランスの顔がまともに見れない程だったので、ランスがどんな顔をしているかはうまく確認出来なかった。
すると、ランスは何か思う事があったのか、驚きの提案をしてきた。
「…父上…改めて、しっかりと…お礼を伝えたいので、私の自室へ…彼を案内しても、よろしいでしょうか?」
え?ランスの自室?どういう事よそれ?
俺は予想外な展開に内心混乱状態だった。
「うむ、もう少し彼と話してみたかったが…良いだろう。『例の件』もしっかりと伝えてあげなさい。」
「分かりました。ありがとうございます。…ギルバート、こちらへ…」
「は、はい…」
ランスは俺の元へ駆け寄ると、俺の手を取ってそのまま出口まで誘導された。
「ギルバート、それではまた後程な。」
出る間際に、王様から一言声を掛けられ、俺はランスに引かれながらもどうにか一礼をすると、そのまま引かれるままに付いていった。
しばらく歩くと、どうやらランスの部屋に着いたらしく、ランスに中へ入るようすすめられた。
中はまるでウチのダンスルーム程の広さがあり、天涯の付いたベッドや勉強用の机、鏡など一般的に必要な家具の恐らく最上級品が設置されていた。
それも驚いたが、もうひとつ俺は沢山ある本棚の書籍の多さに思わず目を見開いた。
必要な家具以外は本棚で埋め尽くされたこの光景に、俺はキョロキョロと周りを見渡した。
「驚いた?本、いっぱいあるでしょ?」
「これ…全部ランスの物なのか…?」
ホケッとした顔で本棚を指差しながら問い掛けると、ランスは笑顔で頷いた。
「…ボク、力のせいで…いつもこの部屋に居ることが多かったから…お部屋の中で出来ることって、他にないし…」
そうだ。ランスは、暴走する力のせいで、ほぼ軟禁に近い環境で過ごしていたのだ。
俺は前世での入院中はゲームを持ち込んだり、兄さんが買ってきてくれた漫画や小説を読んだりと案外充実した入院生活を送っていた。
…そのお陰で『Favor princess』の事知れたんだけどな。
しかし、この世界にそんなもの存在しない。
となると室内で出来る事と言えば、勉強か読書くらいなものだろうからこの本の量も納得だ。
「…寂しくなかったか?」
「…寂しかった、よ。お父様やお母様にも、滅多に会えなかったし…使用人達も、ボクが怖くてなかなか相手してくれなかったし…」
確かに、制御のきかない力はいつ誰をどう傷付けるか分からない。
唯一出来る対策は、やはり近寄らないが正解なのだろう。
「…何人もの魔術師が…ボクの力を封じようと、あらゆる手段を試したけれど…毎度封じても、何故か自然に封印が解けて…どうしようも無かったんだ…」
やはり、ランスの力を封じようとかなり尽力していたらしい。
ランスは第一王子であり王の後継者なのだから、当たり前だろう。
「…妖精石を使ってもみたけど…この国に存在する妖精石じゃ、どうしても間に合わなくて…」
妖精石は、確かにほぼ万能ではあるが、使用の際には一個しか使えないという難点がある。
つまり、複数の妖精石を用意していても、その中の一つしか発動しないのだ。
理由はよく分からないが、今の時点の研究では、それぞれの妖精石には波長があり、同じ純度でもその波長が合わないので複数での発動は行えないのだろうとの見解だ。
強い術を使いたいなら、より強い力の妖精石がいる。
この国に現存する純度5の妖精石の大きさでは、ランスに安定した封印を施す事が出来なかったのだろう。
「そうだ。この間手にいれたヤツ、あれはどうだったんだ?」
「うん…実は、その事を君に伝えたくて、今日は来て貰ったんだ。」
ランスはとても嬉しそうな顔で、俺の手を握りしめた。
その手は、以前触った時とうって変わってとても暖かみのある手をしていた。
「あの妖精石のお陰で、ボクの力を半分だけ抑える事が出来たんだ。お陰で、こうやって普通に触れられるし、魔法も…まだ練習中だけど、使おうと頑張れば、使えるようになったんだ!」
「へー!そうなん…」
ん?半分?あの大きさの妖精石でも、ランスの力を抑えきれなかったというのか?
ヤバくね?ランス。
「それは、良かったけど…あの妖精石でも、やっぱり全部封じるのは難しかったんだな…」
「え…あ、ううん…違うよ。半分だけにして貰ったのは、ボクのお願いなんだ…」
ランスのお願い?どういうことだ?あれだけ怖がってたのに、なんで?
俺は思わず、首を傾げた。
「…ギルバート。言ってくれたよね。ボクの力は凄いって…自信を持って良いって…ボクそんなこと言ってもらったの初めてで…嬉くって…」
そう言いながら、ランスはズボンのポケットからあの時作った魔法の氷花を取り出した。
「その花、あの時の…」
「うん、見て…この花、あれから枯れることも溶ける事もなく、この形を保ってるんだ…こんなに凄い力が使えるなら、ボクもっとちゃんと力を使えるようになりたい。そう、思ったから…修行して、力を制御出来るように頑張りたいって、お願いしたんだ…」
大事そうに、その花をギュッと握りながら語るランスの表情は、以前のような何かに怯えている少年ではなく、とても活気溢れる少年へと変わっていた。
「…そっか、良かったな。」
「うん!」
俺は、そう無邪気そうに笑うランスを、これからも頑張って欲しいという思いを込めて、思わず頭を優しく撫でた。
「…ギルバート?」
キョトンとする王子に構わず、しばらく撫でていたが、俺は唐突に気づいた。
し、しまった~!アリス達にしてる癖で思わずー!!
カルロスはやれって言うからやってるけど!相手はこの国の王子だぞ!
あんだけ出る前に注意されたのに…いい加減にしろ俺ぇ!!
そう思い、俺はすぐにランスの頭から手を離した。
「?」
「…い、いや~、その、生意気に頭とか撫でちゃって…スミマセン…」
「??なんで…?」
「えーっと…義妹達にしてる癖で思わず撫でちゃったけど…嫌じゃ無かったかな~?…と。」
「…全然。もっと撫でて欲しかった…」
何故だかシュンッと音がしそうなほど落ち込むランスに、俺は逆に慌ててしまった。
そんな顔されたら罪悪感半端ねぇー!!何かゴメン!!
「…ボク、ね。あんまり、頭撫でて貰ったことないから…嬉しかったんだけど…ギルバートは…嫌…?」
少し涙を浮かべながら、上目遣いで控えめに問い掛けてくるランスに、俺は可愛さに思わず舌を噛み変な声が出た。
「…とんでもないれすぅ…むしろ光栄れすぅ…」
「そ、そう…?大丈夫…?」
噛んだ舌の痛さとランスの可愛さに思わず悶る気持ちに耐えながら、俺は何とか返事を絞り出した。
その返事を聞くと、ランスはとても嬉しそうな顔で笑ってくれた。
いや、本当に可愛いって最強だわ。男女関係なく、勝てる気がしねぇ…
高鳴る鼓動に耐えながら、俺はとりあえず再度ランスの頭を撫でると、頬を染めながらそれを享受してくれた。
あぁ…尊いわー…素直美少年尊い…
ホッコリしながら撫でていると、突然ランスが何か思い出したように声をあげた。
「あ、そうだ…あの、この間の鳥さん…大丈夫だった…?」
鳥さんとか、言い方可愛い過ぎないかい…?
「あぁ、大した怪我も無かったみたいで、今では我が家の一員だ。」
「…そっか、良かった。」
ホッとした様子のランスに、俺はホッコリしながらも、もう一つの要件を思い出した。
「そうだ…あの時預かったローブ。一応洗濯して持ってきたんだけど…あ、しまった、執事に預かって貰ってるんだった…」
「え、あれ洗ったの…?」
「いやー流石にゲr…野性動物が触れたまま返すのは気が引けて…不味かったか?」
流石に王子様に対し、ゲロまみれと言うのは気が引けたので言い直した。
あの後、包んでいたローブはラヴィのゲロ…否、胃の内容物が付いて大変な匂いになってしまった。
流石にそのままに出来ず、メイドにやり方を聞いて洗ったのだが、正直妖精石が埋め込まれた魔法具など大変貴重だし、洗っていいものか迷った。
が、匂いで駄目にするよりマシだと考え、俺は洗うことにした。
…茶色のローブが真っ白になった時は、このローブ何時から洗って無いんだろうと遠い目をしたものだが…
そして洗い終わった後はローブの効果を確認するため、アリスやクリスにも頼んで着用してもらった結果、どうやら魔法を使えなかったので恐らく効力に問題はないと思う。
なのでその午を伝えるだけはしておこうと思ったのだが、やはり洗っちゃ駄目だったかな。
「ううん、今まで洗ってなかったから、どうなのかなって思っただけ…大丈夫だった?」
「おぉ、確かめてみたけど、効果に問題はなさそうだったぞ。」
「そっか…一応くれた魔術師にも聞いてみるけど…あのね、そのローブ、良かったらギルバートにあげるよ。」
はい?
な、なんですと?
「いや!あんな高価そうなもの流石に…!」
「ボク、もう使わないと思うし…君が欲しいものよく分からないから…要らないっていうなら、どこがで売れば、それなりの価値があると…」
「いやいやいや売れない売れない。あれ結構貴重そうだけど!?」
「魔術師が…どこからか引っ張りだしてきたものらしくて…効果も『着た者の魔法の無効化』だから、使い勝手があまり良くなくて…ボクが使わなくなれば…ここにある意味が無いんだよね…」
いや、魔法の無効化って、結構ヤバイ気するけど、何でそんなにアッサリしてんの!
でも確かに、着たら魔法が使えなくなるなんて、ランスの様な理由がなければ誰も使う必要はない…のか?
「…じゃあ、遠慮なく戴くよ。」
「うん…それで…その…もう一つ…」
そう言いながらランスは、何やらあー、とかうー、と唸り声を上げながら悩んでいるようだった。
そして、意を決した様に俯いていた顔を上げた。
「あの、あのね…?よければ、ボクと…友達になって、くれない、かな?」
顔を真っ赤にしながらそう告げるランスに、俺はポカンとしながら、何だか告白シーンの様だな、と頭の端で思った。
今までの事から、人と深く接することは無かったランス。
この言葉も、かなり勇気を振り絞ったのだろうと思い、俺は何だか切なくなった。
そして、俺はランスの手をとり、しっかり握りしめながら応えた。
「もちろん。こちらこそ、よろしくな。」
俺の言葉に、ランスはキョトンとした後すぐに満面の笑みを浮かべた。
その笑顔を見たたけで、俺は何だか自分も自然と笑顔になるのだった。
それから少し他愛もない話をした後ランスは、「力をもう少し制御出来るようになったら、また遊びに行くよ」と約束し、俺は帰宅する事になった。
帰りの道中で、父さんから今回の件は十分反省したということで、外出禁止令は解いて貰える事を告げられた。
表情から察するに、王様と何やらやり取りをした様だが、俺は変に聞き出すことは止めておいた。
恐らく俺にはまだ分からない『大人の事情』とやらがあるのだろう。
その件に了承した後に、ランスと改めて友達になった事を告げたら滅茶苦茶ポカンとされたが、とりあえず今後も失礼の無いように、とだけ忠告された以外は何も言われなかった。
そこでふと、そういえばランスと友達になってフラグは大丈夫なんだっけか…と思い出したが、ランス王子はアリスともクリスとも関係性無かった筈なので全然問題ないという考えに至った。
そして久々の外出に、王との謁見、ランスとの会話だの色々な緊張がやっと解けたからか、俺は揺られる馬車の中で思わずウトウトし始めた。
そしていつの間にか寝入ってしまった俺は、父さんの「末恐ろしい子だな…」という何だか困ったよう様な呟きに気付くことなく、家まで爆睡するのだった。
ちなみに今回発見した妖精石は、ランスの力を半分封印した事で砕け散ってます。
「半分だけ封印」する事で、更に細かな術をかける必要性があったので力を使いきりました。
つまり、事前にあれだけ使っていてもそれだけの事が可能な程強い力を持った妖精石だったという事になります。




