表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/50

48.チェルニィ救出作戦⑧

「もしチェルニィが生きて帰らなかったら、その時は私の首でもなんでも持っていきなさいよ!けど、私を人質にしてチェルニィとの交換を申し出たら、チェルニィは助かるかも知れないわ。逃げも隠れもしないわよ。私はそのために来たんだから!!」

 怖すぎて声が出るか不安だったけど、それでも私は全力で叫んだ。

 私は本当に最初から、そのつもりだった。

 そうでなければこの状況で、こんなハッタリを言えるだけの度胸は私にはない。


「人間のいう事など信じられるか!」

 って言った人が大多数だったけど、中に一人だけ

「いや、一応族長に確認してみよう」

 って言ってくれた人がいて、何とか助かった。

 覚悟は決めてたつもりだけど、怖いものは怖い・・・。


 けど、私はようやくランドさん達に話を聞いてもらう機会をもらうことができた。

 始めから話だけでも聞いてもらえてたらこんなに苦労しなかったんだけど、それはもういいっこなしだ。


 私が立てた『自分で人質になってチェルニィと交換』って言う作戦は、十分に勝算があると思っている。

 なんでかって言うと・・・。


 みんな、『ラルフお兄ちゃんが私たちを手伝ってくれられなかった理由』覚えてる?

 そう。『人間たちの間ではダークエルフはモンスターって事になってるから、モンスターを助けるために勇者様が手を貸すことは出来ない』ってことだった。

 だけど、もしそれが『私を助ける為』だとしたらどうだろう?

 それならきっと、勇者様としての立場も損なわずに手を貸してもらえると思うんだ。


 だから、ラルフお兄ちゃんだけに『これはチェルニィを助けるためにやってるお芝居だよ』って教えてあげたら、きっとここまでチェルニィをつれて来てくれるはずだ。

 お芝居のはずがとんだ怖い目にもあったけど、これならきっと大丈夫なはず!

 そして私と入れ替わりにチェルニィがこの村に戻ってくればめでたしめでたし、だ。


 そしてもう一つ。

 なんと、この世界では歴代の勇者様のお嫁さんはみんな、勇者様に助けられた女の子なんだよ!

 ここ、すっごく重要だからね!!


 ランドさんも他のみんなも、この時点ではまだ100%信じてくれたわけではなかったかもしれない。

 だけど、私はどちらにしても逃げる気なんてないしもしその気があっても逃げることなんて出来ない。

 そのことは分かってもらえたみたいで、なんとか私の作戦に乗ってもらえることになった。


 はっきり言っちゃうと、私にできるのはここまで。

 この後活躍したのはこのことを伝えに街に戻ってくれたフタバと、偉い人に事情を話してチェルニィを穏便?に救い出し、ここまで送ってくれたラルフお兄ちゃんだ。

 私はただ、待っていただけ。

 そして結果は、全部私の狙い通りに行ったのだった。


「コラあんた、あたしの友達になんてことしてくれたのよっ」

 そう言ってチェルニィはさっき私に刃を向けてた人をポコポコ叩く。

叩かれた方も。

「あはは、チェルニィにはかなわないなあ・・・」

なんて言っちゃってて、この2人、じゃれ合ってるように見えるけど・・・ホントにシャレにならないぐらい怖かったんだかんね!

 今となってはそこを突っ込む気はないけど。


 それがひと段落すると、今度は私がチェルニィと抱き合って無事を喜び合った。

「もう無茶したらダメだかんね!」

 って私は言ったんだけど、チェルニィはウーン、と考え込む。

 そこ、考え込むところじゃないからね!

 今回は必死になって助けたけど、次はこんな怖い目にあうのはさすがにゴメンだもん。


「だけど・・・街に行かないとミルフィたちに会えないじゃん・・・」

 チェルニィは神妙な顔でそう言った。

 そっか。そう言われると確かに淋しいね。でも・・・

「それでもダメ!こんなことしてたら命がいくつあっても足りないよ!」

 命がいくつあっても足りないのはチェルニィだけじゃなくって、私もだ。

 あと、泥棒するのもダメだかんね。


 それから、チェルニィはランドさんの所に駆けて行って、2言、3言、言葉を交わすと何かを受け取ってすぐに戻ってきた。

「ハイ、じゃあこれ。あんたがこっちに来るようにすれば万事解決だわ。あたしがいる限り仲間があんたに手出しするようなことはないから安心して。あと・・・来るときは甘いお菓子をどっさり持って来るのよ!」

 そう言って手渡されたのはあの銀の笛。

 ランドさんも公認みたいだから、これで私もやっとダークエルフのみんなに受けいれてもらえたってことでいいのかな?


「どっさり・・・ってわけにはいかないかもしれないけど、お小遣いで買ってくるようにするね」

 私はそんな風に答えた。

 なんか良い方に行きそうでちょっとほっとした。


 その後ランドさんもすっごくていねいにお礼をしてくれた。

 最初の怖い印象とはえらい違いだからビックリした。

 いろいろあって人間とダークエルフはうまくいってないけど、いつかなんとかなりそうな気がする。

 私が楽観的なだけかな?


 それから、私たちはダークエルフの村を後にした。

 本当はもう腰が抜けてたのはなおってるんだけど、甘えたい気分になって私は今、ラルフお兄ちゃんにだっこしてもらっている。


「今日のミルフィはカッコ良かったな」

 ラルフお兄ちゃんは、そう言ってくれた。

 でも、カッコ良かったっていうのはちょっと・・・

 だって、むしろものすごくカッコ悪かったと思うもん。


「私は、ダメだよ全然。今日だって、ホントは何もできなかったもん。・・・ねえラルフお兄ちゃん、私の事、ちっちゃいからって馬鹿にしてるでしょ!」

 私はちょっと頬を膨らめた。

 本気でそう思ってるわけじゃなくって・・・だけど、ラルフお兄ちゃんを少し困らせてみたい気分だったっていうか。


「そんなわけないだろ?友達をあんな風に救うなんてそうそうできることじゃない。素直にそう思っただけだよ」

 ラルフお兄ちゃんには正論であっさり返された。

 ラルフお兄ちゃんの言い方に変な所はないんだけど、なんかずるいって感じた。


「ねえ、ラルフお兄ちゃんが私のことを馬鹿にしてないんだったら、一つだけお願い、聞いてくれる?・・・一生で、一つだけのお願いだから」

 ちょっと、沈黙の時間があった。

 さすがにラルフお兄ちゃんもビックリしたみたいだ。

「うーん、どうするかな・・・」

 私の『お願い』の内容も聞かないうちに、ラルフお兄ちゃんはそう言ってちょっと考えている。

 内容がわからないんだから、本当は考えようがないはず。

 それなのに考えてるってことは、まるで私が何を言うのかがわかっているみたい。


「じゃあさ、さっきの質問を逆に聞くけど、もし俺が、ミルフィよりもずっと小っちゃかったとしたらミルフィは俺のこと馬鹿にする?」

 多分この言葉にも、なんか深い意味があるのだ。

 そしてその意味は、今の私にはわからない。

 でも、答えは決まっている。

「ちっちゃくてもラルフお兄ちゃんを馬鹿にするはずないよ!」

 質問の意図がどうだったとしても、この答えで私の気持ちは間違いない。

 ラルフお兄ちゃんは、優しく微笑んでくれた。


「だったらミルフィのお願い、聞いてあげる」

 ・・・ホントに?

 ちょっと疑った。

 ううん、私がラルフお兄ちゃんを疑ったらダメだ。

 だって、私のお願いは・・・。


「じゃあ、言うね。一生でたった一つだけのお願い」

 私はそこで、一回言葉を切って深呼吸をした。

「いいよ、言ってごらん」

 ラルフお兄ちゃんはごく自然な感じで頷いてくれる。


 私の一生で一つだけのお願いは、ずっと前から決まっているのだ。

 あとはそれを、言葉にするだけ。

 心臓の鼓動が、信じられないほど早くなっている。

 意識が遠くなりそうなのを何とかこらえて・・・。

 それから冗談だと思われないように、ラルフお兄ちゃんの目をしっかり見て。


 そして一番大事なその言葉を、しっかりと伝える。


「私を、ラルフお兄ちゃんのお嫁さんにして下さい」


この所仕事が忙しく、こんなに間隔が空いてしまいました。

御免なさい。

いろいろ悩みましたが、一旦ここで完結にしようと思います。


そしてすぐ

ミルフィの日記帳2さつめ!~9歳の魔法少女が勇者様のお嫁さんになった結果~

で続きを書きたいと思います。


理由としては一応、1作品完結させたと言う実績がほしいのとエタるのが怖いからです。

ここまで読んでくれた皆さま、ありがとうございました!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ