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Rain Drop  作者: 深蔭
5/7

1st

観察を続けて3週間、次の週の講義では彼がおきまりの席にいなかった。辺りを見渡しつつ出席簿を後ろの席に渡すと…


「あれ、金森さんじゃん。」

久しぶりー、と長年来の友人かのように、戸島は歩に手を振った。


終わった。

隠れストーカーの時代よさようなら。そして中途半端に面倒くさい人間関係よこんにちは。

ただし、そんな内心を表に出すほど空気が読めないわけではないので、歩は早速猫を装着し「久しぶり」と無難な返答をし、出席簿を押し付けて、まるで本日の授業が何にも勝る価値のあるものかというくらいに必死に聞くふりをした。


ノートを取っているはずなのに、内容はこれっぽっちも入ってこなかった。頭は今後の完璧な計画のためにフル稼働していた。


『え、ばれた?ばれてるの?私がずっと後ろから見てたことばれてる?そうしたらどうする?後ろから数週間も見てたとか。軽いストーカーじゃない、気持ち悪がられてるかも。そうでなくてもいままできづいてたならどうして話しかけてこなかったのかとか、聞かれるかも。とにかく話しかけられたらやばい。話しかけられないようにすればいい。いい?まず、講義が終わったら速攻で部屋を出る準備をする。逃げ出してるようにみえないように、片付けられるものは今のうちに少しずつまとめておいて、終わった瞬間、ケータイで次の講義室を探すふりをする。あくまでも、私は用事があって忙しいから話す時間とかはないのってわかるくらいに。他愛のない話をするような関係なのかわからないのだから私から話しかけなきゃいけないとかはないはず。とにかく自然に抜け出すことが大事。あとは、同じ方向でも見失える程度に早足で去ること。』


計画的ではあるが、そこに見え隠れする必死さは隠せない。

前方で恐ろしく別のことを考えている歩をよそに、戸島はいつも通りの気だるさで、前方の少女のせわしない動きを眺めていた。


ちなみにその日のノートは板書だけは完璧だった。

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