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Rain Drop  作者: 深蔭
3/7

コンタクト

気づいたのはこちらが先だった。


必修でもなんでもない、単位のためにとなんとなく選んだ退屈な講義。3列前に座ってパソコンを広げていた一人の男子学生がちょうど目に入った。彼が出席簿を後ろの席に回すとき、偶然ちらっと見えた横顔にデジャ・ヴを感じた。

閉じかけていた瞼が、途端、ぱっちり開き、男子学生を観察しだす。頭が目まぐるしく回転し出し、眠気が一気に吹っ飛んだ。


彼をどこで見たのだろう。

他の授業で見た生徒だったか。発表のときに、目立つような発言をして覚えていたのだろうか。食堂ですれ違っていたとか。それともよく通っていた図書館で見たことがあったのか。もしかして、サークルで自分が認識していないメンバーの誰かなのだろうか。


統計の講義も何処へやら。思考はさらに過去へと遡る。


一年の頃の選択体育の授業で同じだったのだろうか。それとも必ず出席を取る語学か。電車でよく会う人かもしれない。実は入学式で首席だったから顔だけおぼえていたのだろうか。


誰だ?


後ろ姿に再びデジャブを覚える。

これだけ何か強烈に記憶に引っかかる、ということは、後ろ姿を見る機会が少なくなかったはずなのだ。



不意に、男子生徒サイドの髪をくるくると指で弄んだ。


あ、思い出した。

こいつ、戸島だ。


回ってきた出席簿を確認する。

ーあった。筆跡も覚えている通り、角張らない斜め上に流れる様な、走り書きなのに丁寧な文字で、"戸島 遊歩"とある。

間違いない、彼だ。


一気に彼に関する痛い記憶がよみがえる。

一度も同じクラスにはならなかったが、"歩"という名前で、からかわれることもあった。幾度となく図書委員会をすっぽかし、同じく図書委員だった歩が探しに行っては、名前の通り何処へでもふらりと行ってしまう彼を追っている姿を見られて、からかわれることもあった。相方がさぼったことがバレると、司書の先生にチクリと嫌味を言われるから、単純に仕方なかっただけなのに。名前をもじってユーホー(UFO)と呼ばれていた彼とセットにされて、UMAと影で言われたこともあった。気にしないキャラを貫いていたおかげもあって、それほど流行りもしなかったけれど。

何が面白くて、自分の自由時間を割いてまで、未確認飛行物体を追わなければならないのか。受験を視野に入れていた歩にとって、彼を探さなければいけないことは全く不愉快であった。

ぼーっとしていて不安定、どこを見ているのかまるでわからない。彼のつかみどころのない厄介さに問題児のレッテルを貼られるかと思いきや、ーこれまた歩を不愉快にさせることにー彼は成績だけは良かった。


てっきりその頭脳を生かして、都心の医学部にでも行ってしまったのかと思っていたが、まさかこんなところに現れるとは。



歩は逃げる様に頭を机に伏せた。



気がついてしまえば意識せざるを得ず、伸びたサイドの髪をくるくると指に絡める彼の、相も変わらない仕草を目で追っていた。


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