1 辺境伯視点4
辺境伯視点です。
探索者ギルドのランク制度と子爵・村長の過去、マルグリアさんと村長との関係を書きました。
褒賞の受け取りその他もろもろを何とか終えて、ようやく自領へと帰って来ることが出来たのぅ。
本当に次から次へと来おってからに、正直胃が居たくなったわ。
領地や爵位といった動かせぬモノのみならず、大量の金板を褒賞として頂いたわけじゃが、それ以外にも非公式な褒賞として王家から数々の宝物・魔道具を頂いておる。財貨でも公式に下賜されたモノは用途をはっきりさせんといかん。後に報告書を求められる場合もあって不用意には使えんのじゃ。まぁ、今回に関してはそれを求められることは無いと思うがの。
しかし、非公式な褒賞での財貨の類は一旦下賜されれば、完全に我が家の物。わしの一存でどうにでもできることから、なんとかおこぼれを得ようと宴の後も押し寄せて来よった。一応、辺境伯となったわしよりも上の方々もな・・・おかげで予定よりだいぶ帰郷が遅くなってしまったわ。
隣の領主で昔からわしをライバル視して何かと突っ掛って来よるスーベラ男爵は、いつものごとく嫌味を言って来よったが、むしろいつも通りの反応で逆にホッとしたの。
戻った今は館の執務室で、王都にいた間に溜まった書類を処理しながら人を待っておる。
緊急連絡手段として通信用魔道具はあるが、音声のみの送受信な上、軽々しく使えるほど1回にかかる費用も安くは無い。従って王都滞在中は執務が出来んので書類が溜まるわけじゃが・・・
まぁ、税収関連をはじめ収穫期ではないので、量も急ぎの書類も無いと言って良い時期ではあったし、部下たちもそういった事情を理解しており緊急連絡は無かった。
しかし、緊急連絡が無い事と、急ぎ知っておきたい事項が無かったという事は決してイコールではないという事じゃな。なので、書類の処理を始めてから気になる報告書があったので報告を上げて来た者を待っておるところじゃ。
「旦那様、開拓村のヴァンダ村長と同村薬師が参りました。現在、控室にて待機しております。」
うむ、ようやく来た様じゃな。
「よろしい、執務室に通せ。」
「・・・よろしいのですね。謁見室ではなく執務室で。」
「よい。あと、警護も不要じゃ。警護の兵には席を外すよう伝えろ。」
「はっ、承知いたしました。」
普通なら謁見室を使うところじゃが、今回の場合余人に話を聞かれたくないことと、ヴァンダ村長を信用して執務室で警護を外し話を聞くことにした。
しかし、急ぎで使いを出したとはいえ5日で来るとは随分早かったのぅ。
「子爵様、またお目にかかり光栄にございます。開拓村村長ヴァンダ、薬師マルグリアを伴い罷り越しました。」
「よく来てくれた、ヴァンダ村長。ここからは、護衛も近くに居らんし、敬語も不要じゃ、隊長殿。まぁ、座ってくれ。」
「はい、恐縮です、子爵様。 っと、助かる。十年ほど村長やってるがお貴族様に対する敬語には未だ慣れんからなぁ。ジュリアムス分隊長殿、元気そうで何よりだ。」
「!!???? ????」
周りに人が居ないことから堅苦しくする必要もないため。隊長殿もとい村長へ楽にするよう促したわけじゃが・・・同行の薬師が驚いておるの。
「ああ、マルグリア。俺と子爵様はな、20年ほど前北の隣国との戦争で同じ部隊にいた戦友なんだよ。俺が傭兵部隊の隊長で、子爵様が分隊長でな、気心が知れてるってわけだ。で、今は人払いしてあるから多少敬語とか失敗しても問題無いってわけだよ。」
「は・・・はぁ」
「過日のような格式ばった慣れない物言いでは色々齟齬が出そうなのでな。村長のことは信用しておるから護衛も外し語らうことが出来るんじゃよ。」
「という訳だ。こちらの長椅子に座らせていただきます、子爵様」
「うむ、楽にしてほしいのぅ。まぁメイドらが茶を持ってくることも考えられるのでな。多少敬語か丁寧に話してもらえれば問題無いよ。」
「はい。分かりました。」
「しかし、子爵様の爺言葉も、元は威厳が無いとか気にして始めたものだが・・・癖になりましたかな?」
いきなり話を変えて来たのぅ・・・まだ薬師が緊張しきっておるから少し楽にさせねばの。
「仕方あるまい。20年来のものじゃしの。」
「えっと、20年と言いますと、先ほどの話の中で北の隣国との・・・」
「うむ、当時男爵家当主であった父と跡継ぎであった長兄が討死しての、次兄が多少病弱であったが男爵家の部隊を再編し戦場で活躍しての、子爵位を頂いたのじゃが、無理が祟ったのか帰郷後しばらくして亡くなってしまってな。家を出ていたわしが急きょ呼び戻されて家を継いだんじゃよ。」
うむ、あの当時は本当に慌ただしかったのぅ。
「まぁ、子爵様が家を出て何をしていたかと言えば、探索者だったんだが・・・確か総合Cでしたか?」
「いや、当時は探索者になって2年ほどじゃったからの、パーティでの評価で、戦闘力C 総合実績D 信用度B 貢献度Dで総合D+ランクじゃったよ。戦争後に総合Cになったがの。」
「で、緊急依頼で戦争での傭兵ってのがあって参戦。俺の下に配属されたってわけだ。」
「村長達は総合Aでしたからの。もめ事を極力無くすためには、当然と言えば当然の処置じゃのぅ」
所詮は寄せ集め。命令系統を確立せねば話にならん。下手な者には任せられんが、当時すでに狂獣相手とはいえ、複数パーティでの戦闘指揮経験を持ち、総合Aという上位者が居たおかげで隊長もすんなり決まったわけじゃ。そうでなかったらあの時の戦争で死んでいたかもしれんのぅ。
「そういえば、薬師殿も元探索者じゃったの」
「は、はい。総合Bのパーティーでした。村長には駆け出しの頃色々お世話になりました。」
「ああ、当時は引退間際でギルドで新人教官の真似事してたからな。そん中じゃ一番の出来だったよ、お前たちはな。」
「ふむ、信用できるというわけじゃな」
「ああ、俺が保証する。ちなみにこいつら、信用度がAと貢献度がBだったんだよ。」
「ほう!それはすごいの」
ギルドは探索者をランク分けして仕事の適性を見ておるんじゃが、4つの要素で総合ランクが計算される。戦闘力はそのままの意味で、狂獣討伐の内容などが反映され、総合実績は採取や護衛などといった仕事の内容ごとのポイント制で、成否で増減し計算・統合してランクが決定される。信用度は仕事の達成率や保障能力などが関係する。まぁ、仕事の難度も考慮されておるそうじゃが。貢献度は、まぁギルドへの貢献度でありギルドからの評価じゃ。他人が敬遠するような面倒な仕事を請け負ったりすると上がるそうじゃ。
そこで、総合Bはかなり上位じゃが、戦闘力・総合実績が高く2つがAでも信用度と貢献度の二つが低い連中も多い。総合ランク計算では基本的に戦闘力と実績を優先して計算するため、AADDでも総合Bになる。
逆にその二つが高く総合Bというのは、戦闘力や実績もそれなりにあったということで、守秘義務を課される様な仕事も請け負っておった可能性が高いの。
もっとも、貴族の子弟がおると信用度は上がってしまうがの・・・
「ならば、元から薬師殿を外して話すわけにはいかんかったが、これからの話も安心して参加してもらえるの」
まったく、頭の痛い話じゃが、直接本人たちに確認せねばの・・・
名前が、名前が付けられない・・・
男性名が特に!




