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スライム転生物語  作者: 黒頭白尾@書籍化作業中
幕間の部 その1

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幕間 小夜のこちらでの生活

お久しぶりです。リクエストがありましたので更新してみました。

ちなみにこの話は第七部のすぐ後の話です。

 ステータスにレベル。余りテレビゲームをやらない私でもそれが何であるかについての知識くらいはあった。もっともそれが本当に私の思うゲームの同じものなのかどうかはまだ自分ではよく分かっていないけれど。


 その理由は、


「……ああもう、いくら念じてもそんなの出ないじゃない」


 あれからカーラさんにずっと身を守るための護身術的なものを習っているのだが、それでもステータスなど出る気配すらなかったからだ。


「なんで魔法とか魔力は使えるのにステータスだけ出ないのかねえ?」


 カーラさん曰く、ただ念じれば自然と簡単に出てくるらしいのだがそれが私には難題なのだ。


 訓練のおかげで魔力は感じられるようになったし、それを使った回復系の魔法も幾つか覚えることが出来た。だというのにスキルやらステータスやらレベルといった肝心のものが見れないのだ。


 しかも困って他人のステータス見抜くことが出来るアイテムを試してみても結果は見れずじまい。その結果からギルドマスターであるランディさんは私にはステータスなどといったものがないのではという結論に至っていた。


「オズワルドの予想だと遥か昔には名付きもスキルもない時代があったと言う。それが正しいのならその更に昔はステータスなどもなかった時代があってもおかしくはない。そして君がその古代人と同じ因子を持っていると仮定すれば色々と説明が付くからね」


 私が元の世界を追い出されたのもその因子が原因ではないか、それが私の体を調べてくれているヘイズさんやランディさんの今のところの推測だった。


 でもそれだと私はどうすればいいというのだろうか。自分ではその古代人とやらの自覚なんてないし、もしそうでも自分でどうにかできる問題だと思えない。


(因子って要するに血よね? それをどうにかしろって無理でしょう)


 私が元の世界を追い出された原因とそれをどうにかする方法はランディさん達も調べてくれているようだが、普通に考えればそれが見つかる可能性はないに等しいと思う。


 ただ一つ、神様自身が提示した方法を除けば。


(オズワルドさんがその方法を探ってくれているけど、任せっきりでいいのかな……?)


 今の自分が付いて行っても足手まといになることは判り切っているし、そもそもその勇気は正直ない。魔物との戦いなんて想像するだけで足が震えるくらいなのだし。


(私、これから先どうすればいいんだろう?)

「あの、気分が悪い……んですか?」

「え、ううん、そんなことないよ。ただちょっと考えごとしてただけ」


 自分がどうなるのか。そしてどうしていったらいいのか。そんな先の見えない事を考えて暗い気分になりかけているのに気付いたのか同じく訓練中だったメイちゃんが心配そうに声を掛けて来てくれていた。


 カーラさん達の話ではとても優秀な子らしくて、更に憑依されていた影響か魔力量も獣人族にしては高いのだとか。流石に今はまだ未熟だけれど将来が楽しみ、それが周りの主な意見だ。


 お姉さんのネイがこの子は天才だとべた褒めしていたけど、それはあながち間違いではなかったらしい。あのデレデレ具合を見た時はてっきり身内贔屓というか親バカならぬ姉バカのように思ったのだけれど。


「そろそろ終わりにしようか。今日は小夜の調子も悪いみたいだしね」

「す、すみません」

「別に謝る必要なんてないさ。いざという時は旦那がどうにかするだろうし、これはあくまで保険みたいなもんなんだから」


 カーラさんはお腹に子供がいる状態なので流石に動くことはせず、見て指示を出すこととで私たちを指導してくれている。その傍には常にと言っていいくらいヘイズさんが付き添っていた。


「それより小夜はそろそろあの時間なんじゃないかい?」

「え、あ!」


 その言葉で気付いたが時間が来ていた。


「ほら、こっちは気にしないで行っておいで」

「す、すみません。失礼します」


 そうして私はある場所へと向かう。今の私が唯一、誰かの為になっていると言えることが出来る場所へと。


 その切っ掛けは些細なことだった。お世話になっているカーラさんにお礼をしようとした時に簡単な書類整理を頼まれたのだが、そこで私は向こうが思った以上の速度でそれを終えたらしい。


 ちなみにその書類の内容は書かれた数の合計を出すだけの簡単な足し算さえ出来れば十分な内容だった。


 だけどそれがこちらに人にとっては珍しいことだったらしい。貴族でもない限り学校には通えないから、簡単な計算が出来る人はあまりいないのだとか。


 これは自慢ではないが私は幼いころにそろばんをやっていたので計算だけは速い。


 まあその計算の速さは賢いとか知識があるというよりは慣れなのでそこまで自慢できることでもないが。向こうには勉強でも計算でも私よりできる人なんていくらでもいたわけだし。


 まあ要するに、


「あ、先生。ギリギリだよー」

「ご、ごめんね。でもギリギリってことはセーフだから。すぐに準備するから教室で待ってて」

「うん、わかった。先生も早くねー」


 そう、私は先生をやっているのだ。あくまで便宜上ではあるが。


 初めの内はカーラさんだけだったのだが、その話がギルドマスターに伝わり、気付けばこうしてとある部屋を借りてそこに集まったこの街の子供達に教えることになっていたのだ。


 そして最近ではギルドの職員の人まで何故かこの教室に来るようになっている。


 私が教えられることなんて簡単な計算くらいだというのに。


 でもそれでも私に教わると分かり易いとか勉強になると言ってくれるので未だに先生と言われるのにさえ慣れないけれど、その期待に応えるように私は頑張っている。


 これぐらいしか私には出来る事がないお世話になっているカーラさんやギルドの人達にせめてものお礼のつもりもある。


(本当はそろばんとかあるといいんだけどなあ。欲を言えば教科書とかも)


 もっともそんな物が異世界にある訳ないし、都合よく作れるとも思えないから無理だとは分かっているのだけれど。


 幸いだったのはミラが大量に買い込んでいた本を自由に利用できたことだろう。


 なんでもギルドは冒険者の荷物などを預かるサービスも行っているとかで、ミラはそのほとんどを本だけで埋めているくらいだったのだ。


 ランクが上がれば預かる量も増えるって話なのに常に満タンに近いって一体どれだけのペースで本を買っているのだろうかという疑問はあったが、まあそこは触れないでおこう。カーラさんの呆れ顔から何となく察せられたし。


 とそこで、


「「小夜、聞こえる?」」


 頭の中にとある人物の声が響く。噂をすればという諺のまさにその通りに。


「「聞こえているよ、ミラ。そっちの旅は順調?」」

「「色々あった事はあったけど、今は順調に馬車で次の街を目指しているわ」」

「「そっか、こっちはカーラさんも問題ないし特に問題はないかな」」


 こうして私とミラがテレパシーのように会話できるのは契約を結んでいるかららしい。原理などは説明されてもよく分からなかったが、ミラとオズワルドさんの契約に似た何かをしたらしい。


 何かが起こってミラに負担が掛かりそうな時に私の方にそれを肩代わりさせるらしいけど、ヘイズさんがそれでも危険はまずないと言っていたからたぶん大丈夫だろう。いざという時はヘイズさんがどうにかしてくれるって話だし。


「「それはつまり先生としても順調ってこと?」」

「「か、からかわないでよ。先生なんて分不相応な呼び方なのに」」

「「そうでもないわよ。オズさんもそうだけど異世界人であるあなた達はこちらの一般人よりもずっと教養があると思うし。オズさんは環境が全く違うからそれも当然って言ってたわよ」」

「「それでも先生って呼び方には慣れないよ。それに道具もないから大したことは出来てないし」」


 少し前まで自分が先生に教わる側だったこともあり、今の自分には違和感しかない。


「「道具? ……今ならそれもどうにかできるかもしれないわ」」

「「え、どういう事?」」


 そこで私はミラ達がメルクリウスという街で出会ったまた新しい異世界人のことを聞く。そしてその人が何でも作り出せる能力を持っていることも。


 だから駄目元でそろばんや教科書的なものは作れないかと聞いてみたら、オズワルドさんがすぐにその人に作らせると快諾してくれたとのこと。


 それで喜んでいた私だったけど、


「先生―、まだ準備してるんですか?」

「え、あ、ごめん!」


 ミラとの話に気を取られて自分が何をしにここに居たのかすっかり忘れていた。気付けば開始予定時間を過ぎている。これではギリギリ間に合ったとはいえないだろう。


「今度こそすぐに行くから!」


 慌ただしく準備を終えた私はミラにまた連絡すると頭の中で言いながら急いで教室へと走る。


 これが今の私の生活。向こうとは全然違っているし、やれている事なんてほとんどないと言っていい。周りの人にお世話になりっ放しだ。


 それでも私は自分に出来ることを探して生きている。いつかきっと元の世界に戻れる日が来ることを信じて。


 そうして私は五分ほどの遅刻をしてその教室へと足を踏み入れていった。まず初めに中にいる生徒の人達に謝る言葉を口にしながら。

あと一つで幕間の部は最後となる予定です。

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