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転生赤子の人間観察記  作者: 青風ぱふぃん


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新たな故郷

 何とか息は出来るようになったようだ。

 体内に大気を取り込み、吐き出すこの感覚は不快でしかないが、慣れるしかあるまい。


 しかし、陸というのはしんどい場所だな。全身にずしりとのしかかる重力で、息を吸うのも一苦労だ。


 ……うん、疲れるな。

 ちょっと休むか。


 …………。


 ………………。


 バンバンバン!

 不意に身体を叩かれた。

 びっくりして思わず息を吸う。


 もの凄く驚いたぞ! 魔王たる我に何たる狼藉か!

 が咆哮を喰らえ!


「ほえええええ! ほやあ! ほやあ!」


「息できたねー偉い偉い」


 ふしゃふしゃとした妙な音を立てながら何か大きいものが動き回る気配がする。だが、地上では目が良く見えぬ。この大きいものの正体は何だ?


 念波で眷属に呼びかけても返事は無いし、咆哮を上げても手応えは無い。我の咆哮は小さい生き物ならば消し飛ばすほどの威力があるはずなのだが。


 まあ、仕方ない。今のところ我を害そうとする気配は無い。ならば少し様子を見るか。


 ……と思ったのに、なんだなんだ!


 我の身体の粘液が拭き取られる!?

 我は身体が乾いたら死んでしまう!

 やめろ! が触手で絞め殺されたくなければ、今すぐその手を離せ!


 ……くっ、触手が思うように動かん!

 せめて吸盤がどこかにくっつけば……。

 ぬう、くっつかん!


「はい、おかあさん。お疲れ様でした。元気な赤ちゃんですよ」


 ……む?

 何か柔らかいものの上に乗せられたぞ?


 これは……。


 懐かしい、我が故郷の音がする。


 ゆらゆらと揺れる……母なる海……その海流の音……。


「初めまして、私の赤ちゃん。ふふっ、可愛い」


『カワイイ』。

 ふしゃふしゃした音はあまり聞き取れないが、この音には……聞き覚えがある……な。

 海の中で漂っている時……何度か聞いた……水妖の、声……。


 我の意識はそのまま遠ざかる。


 ついに終わり、か。 だが、この安心感の中でなら……、安らかに眠っても……いいな……。


 この後すぐにこの場所から引き離されるとは思ってもおらず、我は心地よい眠りに深く深く落ちていった。



   *   *   *


カンガルーケア:お産のあと、すぐに産婦の胸の上に生まれたばかりの子を乗せてくれるやつ(赤子は色々べしょべしょなので軽く拭き取って、健康状態を確認してから)。

赤子もおかあさんも精神的にとても安定する。可愛い。多少血とか付いてるけど。

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