転生(生誕)
ごぽり。
母なる海が我を包む。
陸の勇者に倒された海の魔王の我は、ただ深く海に沈む。
もう上も下も分からない。
温かく、ぼんやりとした光の中、ただ沈む。
ゴポゴポとした水の感触。一定のリズムで平衡胞をザアザアと鳴らす海流。
『イイコネ』
『ハヤクデテオイデ』
『カワイイ』
『カワイイ』
水妖の嘲笑か、たまに意味のわからないふしゃふしゃとした柔らかい音が混じる。
沈む。沈む。
無数にあった長い触手も、そこにびっしりと付いた強靭な吸盤も、勇者に切られてほとんど失った。我は身体を固定する術もなく、ただ流されるままに漂い続ける。
水圧だろうか、ぎゅうと全身に力がかかり、縮こまったまま身動きが取れなくなる。
これが、死……か……。
…………。
………………。
いや苦しいな!?
なんだ? なぜこんなにギュッと押し付けられる?
ううっ。狭い!
出せ! ここから出せ!
どばっ、と言う音と共に、我は空中に放り出された。
……空中?
沈み続けていると思っていたが、浮かび上がっていたのか?
まずい、水の外では息が出来ん。
魔王が命ずる! 海よ、出でよ! 我を包め!
眷属よ! 海の同胞たちよ! 我を助けよ!
我は海を揺らす咆哮を上げる。
「オギャァ! オギャァ!」
息が……吸えた?
ひとまず生き延びた……のか?
「おめでとうございます、元気な女の子ですよ!」
ホッとする間もなくただ息を吸って吐いてを必死で繰り返す我の頭の上で、少しクリアなふしゃふしゃとした音がした。
* * *
お産は大変です。母親も、赤子も。
こんなの、母も子も生きてるのが奇跡だよ。いやマジで。
日本の医療はすごいねえ。関係者の方々に心よりの感謝を。
まあ、私見てただけだけど。




