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22_呪いを解くのはファンの言葉

 九月二十日。


 誕生日になった俺を祝うのはいつもミコト一人だ。

 俺がミコトに日付が変わったと同時にメッセージを送るのと同じように、ミコトも同様に毎年俺にメッセージを送ってくれる。


 今年は日曜日で俺の仕事が休み。 そして互いに活動が休止中なので、ミコトは朝から俺の家に来て一緒に過ごしてくれている。



 誕生日配信の待機所は作っていない。

 SNSに誕生日の投稿もしていない。



 そう言った行動をして、自分が祝われないことを可視化するのが怖いから、俺はずっと何もしてこなかった。



 エゴサーチや各種ハッシュタグの設定、匿名で投稿できるマシュマロなどのサービスも利用しなかった。

 Youtube以外での交流を増やすことでファンを呼ぶのも、一つの手段とわかっていながらそれが出来なかった。



 ミコトに言われて『誕生日のプレゼントを募集する』『誕生日から活動を再開する』と投稿はしたものの、どのような配信をするとは結局記載しなかった。

 どうせ送られて来ないと思っていたから。



 ミコトは少し何かを言いたそうにしていたが、それを尊重してくれた。



 そして、朝の十時。

 ミコトと二人でいると、インターホンが鳴った。 宅配便らしい。



 俺は普段ネットで特に買い物をすることがない。

 そんな俺に、今日何かが届くということは……あのオシカツ代送による、リスナーからの贈り物なのだろう。



「結構多いので、ちょっとお待ちください」



 配達員がそういって、次々と玄関に物を運び込んでいく。

 小さいものだと、一辺三十センチ。 大きなものだと、一辺六十センチほどの段ボールが次々と運ばれていく。


 最終的に全部で十四個。 受取のサインを行って、段ボールをリビングの方まで運び込む。



「だから言ったでしょ? ちゃんと送られてくるって」

「この中にお前のは……」

「サクラなんてしないよ。 それに、ボクはキミに直接渡せるんだからね」



 少し呆れたように笑うミコト。



「早く開けてあげなよ。 冷凍のものとか生菓子とかはないだろうけど、ファンの贈り物だからね」

「……あぁ、わかった」



 段ボールを開けると、贈り物と手紙がセットで入っていた。

 そこでようやく、本当に贈られてきたんだと実感して、それぞれの手紙と贈り物が誰からのものかわかるように、写真を撮りながら開封していく。



 冷えピタやホットアイマスクと言った、こちらの健康を気遣ったもの。

 クッキーやのど飴といったお菓子類。

 紙カクシをデフォルメした小さなぬいぐるみや、絵と言ったファンアート。

 他にもおすすめの本など、皆が思い思いの贈り物をしてくれていた。



 同封されていた手紙を一通一通丁寧に読んでいく。



『いつも動画を楽しみにしています、知らない話を紹介してくれて楽しいです』

『好きな本の話を拾ってくれて、お話が出来て最高です。 沢山人は増えたけど、これからも推していきます!』

『まだ二年弱の新参ですが、作業のお供にしています。 あまりコメントはできてないですけど、復帰を楽しみにしてます。 お体に気を付けて』



 印刷したものもあれば手書きのものもあり、短いものから数枚に及ぶもの。 それらの贈られた言葉を読むうちに、自然と目から涙がこぼれて、手紙に落ちないように慌てて涙を袖で拭う。



「……ミコト、俺」

「配信、したくなった?」



 ミコトの言葉に俺は黙ってコクリとうなずいた。


 朝から一緒にいてくれたミコトには本当に申し訳ないが、リスナーと話したくなった。

 贈られた手紙にも、プレゼントにも、それぞれ感謝を伝えたい。



「本当に、ミコトの言う通り……、俺は愛されてたんだな」

「……うん。 そうだよ、それがわかったのなら。 それを受け入れられるようになったならよかった」



 ミコトはそういって俺に笑いかける。



「ボクも、キミのリスナーたちと同じ場所で配信を見ているから。 頑張って、じゃないか。 ……皆と楽しんでね」

「ああ、本当にありがとう」




***




 ミコトを見送った俺は、急いでサムネを作って、普段の配信部屋の背景に、フリーの誕生日素材を使ってほんの少しだけ飾り付けをする。



 あらかじめ誕生日配信の準備をしておくべきだった。

 本当に自分にそんなものが届くなんて思っていなかったから、俺は復帰と言ってもいつもと変わらない読書雑談にするつもりだった。 休止中にいくつか読んだ本の話でもしようと思っていたのだ。


 だけどそんなことを思っても、時は巻き戻らないからやれる限りのことをするしかない。

 時間ギリギリまで準備をして、3Dの体も準備する。



 そうして迫る、初めての誕生日配信。

 何も企画していない、ただ衝動に突き動かされてファンの人達と話したかったというだけの思い付き。



 ずっと記念配信が怖かった。

 青空読書配信は、本を好きな人の集まりだ。 紙カクシに興味がなくても好きなものの繋がりで見に来てくれる。



 だけど記念配信は本当に俺だけを見に来る場所だ。

 だからそれは、自分という人間を見る人の数を可視化させてしまう。



 自分を応援してくれる人がいるのだろうかと、この期に及んで少しだけ思ってしまう往生際の悪い自分の心を押さえつける。



 不安にならなくていい。

 手元にある手紙や贈り物が、自分を愛する人がいることを信じさせてくれる。

 大事なのは数じゃなくて、ただ受け入れてくれる人が確かにいること。



 そんな数名のためだけにする配信だって構わないのだから。



 ゆっくりと深呼吸して、二十一時ぴったりに配信開始ボタンを押した。



「こんばんは。 本や物語を紹介するVtuberの紙カクシです。 今日もよろしくお願いします」



 緊張していても、久しぶりでも八年続けた挨拶は変わらない。

 この言葉を言うだけで、心が配信に切り替わるマインドセット。



 同時接続数は、今日は見ない。

 普段なら配信やチャンネルを運営する指針にするそれを、自分から配信ソフトのウィンドウで覆い隠す。



『たまには数字じゃなくて、好きなことをするのも心のために大事でしょ?』



 そんなミコトの言葉を思い出す。

 今日の俺は数字を伸ばすためじゃない。

 手紙をくれたファンたちと話したくて枠を取ったのだから。



「今日は私の誕生日なのですが……。 初めて誕生日枠と言うものを取ってみました。 本とは関係ない雑談枠ですね」



>コメント:おめでとう!ひさしぶり!

>コメント:おめでと!

>コメント:[2000]復帰&誕生日おめでとうございます!!



 メンバーシップの方からはおめでとうと拍手のスタンプ。

 それ以外の人からも次々にお祝いの言葉や拍手の絵文字が並ぶ。

 それだけじゃなく、3Dお披露目でぐらいしか見ることの無かったスーパーチャットも数件飛んできて、それを一つ一つ読み上げて感謝を述べる。



「スーパーチャット、ありがとうございます。 メンバーシップの人達も。 今こうしておめでとうを行ってくれた人も、嬉しいです」



 そして、今日配信をしたかった理由を切り出した。



「オシカツ代送を通してのお手紙とプレゼント。 本当にありがとうございます。 手紙、何度も読ませてもらいました。 皆さんの贈り物は全部、大切にバインダーに保管していますし、色々、ぬいぐるみとかファンアートも近くに飾らせてもらっています。 ……今日は、それを伝えたくて配信枠を取りました」



>コメント:届いたんだ、よかった!

>コメント:高校生でクレカ使えないから送れなかったんだよね

>コメント:誕生日だし復帰記念なんだから、ただ自分のための配信でもよかったのよ?



「そうかもしれないんですけど……嬉しすぎて、皆とお話したくて」



>コメント:こういうカミカク始めて見るかも

>コメント:贈ってよかった

>コメント:中に別人が入ってるとか無い?



「ちゃんと本物ですよ! ……って、あ!」



 一つのコメントが目に留まって、思わず声が漏れる。



>コメント:なんのケーキ買った?



「ケーキ……。 その。 じつは配信をしようと決めたのは本当に急な思い付きで、準備で忙しくてまだ買ってなくて……」



 元々はミコトと昼に食事をして、ケーキを買って帰る予定だった。 その予定を中断して配信の準備をしていたからすっかり忘れてしまっていた。


 これまでにミコトの配信で、楽しませるために色々準備をしていたのを見て来たのに、このありさまだ。

 せめてコンビニのケーキぐらい帰り道で買っておけばよかったと思うが後の祭りだ。

 今から抜け出すわけにもいかない。



>コメント:男の人って甘いのあまり食べないよね

>コメント:ケーキ嫌いだったりする?



「嫌いとか苦手じゃないんですよ? 私は和菓子も洋菓子も、甘いものは好きです。 本を読んでると頭を使いますしね。 ……あ、リスナーさんが送ってくれたクッキーがあります。 これをケーキということにしましょう。 材料は似てますし」



>コメント:確かに小麦粉だけどね

>コメント:私が贈った奴だと思うけど流石に誕生日ケーキの代わりになるとは思ってなかったのだわ

>コメント:それはケーキではない



 ケーキではない、と言われて思わず代用品になる物を頭のなかで探すが、結局見つからずに断念する。



「そう言われると……、配信画面以外に誕生日らしさ、あんまり無いかもしれませんね……」



 思い付きのまま行動すれば、このようなミスだってする。

 配信前に十五分か、三十分か。 少し遅れることを伝えて買いに行けばよかった。



>コメント:じゃあハッシュタグつけてケーキ投稿したから見て。配信に出してもいいよ

>コメント:俺も投稿しておこう

>コメント:これがカミカクの代わりの誕生日ケーキね

>コメント:私もやってくる



 そう思ってると、リスナーがそれぞれSNSに投稿し始めてくれた。

 俺は普段エゴサーチをしない。

 配信タグも感想タグもファンアートタグも作っていないので、リスナーが作ってくれたそのタグは『#紙カクシ誕生日ケーキ』というシンプルな物。



 配信に乗せる前に一度ウェブブラウザを立ち上げて確認してみれば、ホールケーキにチョコプレートで「紙カクシお誕生日おめでとう」や、一人用のケーキに一本のろうそくが立ったもの。

 自分で作ったと思われるケーキに、コンビニや有名店のケーキ。


 一人のリスナーの行動から始まったそれには、既に一口食べてしまったものも投稿されてあるし、プリンやクレープなども含めれば確認した時点で十件近く。

 今でも次々と投稿されていた。

 それらを配信ソフトである配信ソフト上に表示して、皆のケーキを紹介する。



 俺の生年月日は公開情報だ。

 だけど、SNSで誕生日だと呟いたことも無ければ、誕生日配信を取ったことも無い。

 今日の十五時ごろにようやく、告知と配信枠を作っただけの突発的な物。

 それなのに、これだけの人が準備してくれていたらしい。



 きっと、この中の何人かはこれまでにも投稿してくれていたのだろう。


 もし以前からエゴサーチをしていれば、そんな姿も目に入ったのだろうか。


 例えこちらに届かなくても、好きを表現してくれていた人を、見つけることができていたのだろうか。



「……もっと、皆のことを見ておけばよかった」



 紹介しながら思わず漏れた声は、自分でもわかるくらいに震えていて。

 思わず落ち着くまでの間、マイクをミュートにした。



 みんなのことをちゃんと見ていなかった。 思いを受取らずに捨てていたという後悔と……。

 自分が思っていた何倍も愛されていたという喜び。

 それらが心の中で混ざり、溢れる。



>コメント:泣いた?

>コメント:大丈夫?

>コメント:[100]ミュートしないで泣き声聞かせて



茶化すようなコメントに思わず笑って、少し落ち着くのを待ってからミュートを解除する。



「……嫌ですよ。 ……もう三十歳を超えた男が泣いてたら、恥ずかしいじゃないですか」



>コメント:そんなことないよ

>コメント:考えが古い

>コメント:もっと聞かせて

>コメント:周りで泣いてる大人見て恥ずかしいって思う?



「周りの人だったら? ……そりゃ、思わないですけど……。 けど、確かにそうですね」



 弱いところも、辛いところも、怒ってるところも見せたくない。

 これからもそこは変わらない。リスナーの皆には楽しめるところだけを見て欲しい。

 ……だけど。



「嬉し泣きくらいは、見せて良かったのかもしれないです。 ……皆の前でこんなこと思うのは、初めてですけど」



 いくつかのケーキを紹介しながら感謝の言葉を述べていると、コメント欄にスーパー チャットが一件表示された。

 今紹介したケーキのアカウントと、コメントの名前が一致しているので同じ人らしい。



「『カクシさん大好き! これからもずっと推します!』…………書架さん、いつも応援ありがとう。 三年位前から来てくれてますよね、嬉しいです」



 ファンの好意を素直に受け取ることは出来なかったけど。

 だからと言って彼らをただの文字や数と思っていたわけじゃない。

 配信に遊びに来てくれる人は、ちゃんと一人一人認識している。

 だからこそ、配信で見なくなった時に辛いのだ。



>コメント:遊びに来た頃を覚えててくれたんですか

>コメント:いいなぁ

>コメント:メンバーじゃないけどわかる?



「書架さんは、ホームズやルパンが好きですよね。 いいなぁと言ったStealさんはゴシックホラー。 ふわふわ餅さん、例えメンバーじゃなくても……確か去年の動画にコメントをくれてから遊びに来てくれましたよね?」



>コメント:正解!

>コメント:そうです。 フランケンシュタインとかジキルとハイドが好きです。

>コメント:紙芝居から来ました。



「全員じゃないですけど、よく来てくれる人のことは覚えてますよ。だって……」




 一度深呼吸をして、勇気を出してその言葉を口に出す。




「……その、私もリスナーの皆のこと、だ、だいすき……ですから」



 自分でわかるくらい、耳まで真っ赤になりながら。

 初めてリスナーに、いや。 誰かにその言葉を伝える。



 ミコトはもっと気楽になればいい、なんて言っていた。

 触れ合えない。名前もわからない。

 互いに一線を越えらえないからこそ、ファンは推しに気楽に愛を伝える。


 配信者だってそう。リスナー皆に愛を伝えてもいい。

 リスナーは個人で受け取るのではなく、無数にいる群体の内の一人として受け取る。


 受け取ったから返さないとなんて思わない、気楽な愛の送り合いでいいのだと。

 それが出来るから、ボクもリスナーのことが大好きなんだよ。と言っていた。


 そんな気持ちが、少しだけわかった。



 だけどやっぱり恥ずかしくて、思わず顔を手で覆ってしまう。

 少し待ってから画面を見れば、コメントはすさまじい勢いで流れていた。



>コメント:すき

>コメント:Chu☆

>コメント:かわいい

>コメント:かわいい

>コメント:友達感覚で推してたけど今クラッと来た。

>コメント:もっかい言って!

>コメント:もっと!



「あーもう! ……好き! 大好き! ……ちゃんと、本心ですよ」



>コメント:五年推して初めてデレ見た

>コメント:あー!3Dでわかる照れしぐさの威力ー!

>コメント:男を可愛いと思ったらもう沼ってんだわ



「……あの、でも親愛ですからね? お友達とか、そういう奴ですからね? ……私、殆どコラボとかしてきませんでしたけど、他の人とコラボとかしても脳が壊れたりしないで下さいね?」



>コメント:脳破壊もされるし嫉妬もするけど応援するし邪魔はしないよ。

>コメント:まぁあの炎上で休止されたの見たら何も言えん。 また休止されたくないし

>コメント:もっと好きっていって

>コメント:ありがとう

>コメント:ぶっちゃけ一万人の某動画で頭狂いそうだった

>コメント:助かります



 コメントに何人かいる、いわゆるガチ恋勢に驚く。



「ミコトから一万人の動画の時、『カクシ君のリスナーからは何も言われてない。みんないい人だね』って言われてたから。 ……その。 本当の意味でそういう人はこれまでいなかったと思ってました」



>コメント:俺は普通に友達感覚のファンだよ。

>コメント:長く推してるうちに、そういう気持ちになることもあります。

>コメント:沢山好きって言ってたのに。

>コメント:3Dお披露目でもガチ恋ってちゃんと言った!

>コメント:ガチ恋と、厄介連中を一緒にしないで

>コメント:ショックだけど、幸せならOKですのスタンスだよ



「……これまですみません。 みんなの応援の言葉とか、好きって言葉とか、全然信じられてなくて。 自分が好きじゃなかったんです」



 ミコトに吐き出して整理した思いを、謝罪と共に口にする。



「私にとって誰かに好かれる人は、楽しいことや好きなことに全力を出してる人だと思ってました。 ……でも、自分ではそこまで全力で何かをしてきたと思えなかった」



>コメント:あれだけ無茶な投稿ペースだったのに?

>コメント:八年間毎週動画投稿して配信までする人が、全力じゃないわけない



「だって私。 徹夜も、生活費を活動に使い込むことだって無かったですから。 本気ならそのぐらいやって当然なんだってそう思って」



>コメント:好きならガチャで完凸して当然みたいな話?

>コメント:グッズ複数買いして当然とか

>コメント:スパチャやメンバーは入って当たり前みたいなこと言う人いるよね

>コメント:別にそんなことないと思うけどな



 コメントの例えを見て苦笑する。本当に、そんなことはないのだ。

 金額の多寡や、どれだけ時間をかけたかは確かに指標にはなる。

 だけどそれをしなかったからと言って愛していないとはならない。


 ただ子供向けの桃太郎絵本を読んだだけの人も、古い時代のバリエーションまで全部読んでる人も。 ただ好きだと思ったなら、どちらも胸を張って桃太郎が好きだと言っていい。


 読書会に古本屋で投げ売りされてた本で参加しようと、毎月新書を買って参加しようと。 どちらも本が好きだと言っていい。


 本のことならそう思っていたのに、自分のことになると途端に評価が厳しくなっていた。




「……ミコトにも言われました、頑張るってことは自分を犠牲にすることじゃないって」



 本当にそうだ。

 もしそうやって自分を犠牲にして自分に好意を伝えてくれた人がいたら、嬉しさよりも先に申し訳なさが勝つだろう。



「配信に遊びに来てくれるのは、本を話し合える場が好きなだけ。 ……もちろん、テーマごとに同接の差は顕著だから、そういう側面は少なからずあるんですけど」



 青空読書会には三十人来てくれていた時。

 伸ばそうと思って流行りに乗ったゲーム配信の同時接続は三人だった。

 それはそうだ。

 だって、チャンネルの方向性があまりにも違いすぎる。



「決してそれがすべてじゃなかったのに、それに気付けなかった」



 違う活動したら全然来てくれなかった、じゃない。

 この三人は、例え違う方向の配信でも見に来てくれていたと思うべきだったんだ。



「これからは、ちゃんと自分のことを大切にして、皆の気持ちもちゃんと受け取っていこうと思うから、これからも……その、応援してほしい、です……」



 最後の言葉は少し消え入りそうになっていたけれど。

 きっと伝えられたと思う。



>コメント:これからも応援する!

>コメント:でもリスナーの愛全部素直に受け取ったら潰れるぞ

>コメント:ほどほどにな

>コメント:今までの塩対応もちょっと好きだったよ



「みんな、受け取ってほしいのか欲しくないのか、どっちなんですか」



 俺はそう言って笑う。

 こんなに多くの人に祝われたのは生まれて初めてのことで、また一つ、Vtuberになってよかった思い出が増えたのだ。


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― 新着の感想 ―
カクシさんの呪いといっしょに、読んでるこちらの心が溶けていくようです。(字が違う) 一声で意識を切り替えられるの、なんだかプロみたいだ。八年の習慣はすごい。 ともあれ復帰おめでとうございます。安心し…
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