七話 方舟
「どうして…リルリエットを…それに…その死体は?」
「だぁ〜質問が多いなぁ〜1個に絞ってくんねぇかなぁ〜?」
人を殺しておいて…この態度…?
「……この後に及んで…まだふざけているの…」
「そんなに怒るんじゃねぇよ〜。美人が台無しだぜぇ〜?」
クロイジアは食いかけの死体を向こうに放り投げた。
酷く、雑に。
「…っクロイジア!!」
「はぁ〜急に感情的になりやがって〜女の気持ちはわかんねぇな」
「…もう一度聞く。どうしてこんなことを?」
「しつけ〜…面倒くさいからもう教えるわ」
「何から弁明したらいいんだか〜そもそも俺は被害者なんだよ」
「被害者…」
「俺は元々自由に旅してたんだけどさ〜ある日あいつらに会って〜捕まっちまったんだよ」
「…シャクヤのこと?」
「ちょっと違うな〜その名も『殲滅組合』つうちょいダサな名前の民間組織。なんでも魔獣の殲滅を目指してるんだと〜」
「……俺は魔人の中でもだいぶ奇抜な姿してんだろ〜そのせいで他の魔人よりもだいぶ酷い扱いを受けてきてさ〜こんなとこに連れてこられてる時点でわかるだろ〜?」
「だから、いつかぶっ壊したいと思ってんだよ〜今日はその前準備ってとこだな〜都合よくお前らが出てくれて助かったわ〜流石に3対1は俺でもきつい」
もしも…私達が外に出ていなかったら…リルリエットは…
……いや今は集中しないと。
「その殲滅組合と…リルリエットになんの関係が?」
「決まってんだろ〜シャクヤ達は全員、殲滅組合の組員。勿論、俺が食ってた死体も全部」
「死体全部…」
肉体の散乱具合と血液から…大体30人くらい…それが全員、シャクヤ達の仲間…
「一体何が…起こったの?」
「そん時は寝てたから知らね〜。さしずめ、バンが気を抜いて襲撃にあったとかじゃねぇか〜?ま、『食罪』がいるようなとこじゃ〜どこにいたって命は無いに等しいけど〜」
食罪…どこがで聞いたことがあるような…
「…」
「どうだ〜これで満足したか〜?」
「…な」
クロイジアの体が歪んで…
「じゃ〜ん実はァ生きてましたァ!!」
この声はーーー
「リルリエット…?」
いや、よく見てみたら…白目が無い…目全体が黒い丸になっている。
「なんてなぁ〜驚いたか〜?これが俺の権能の力。ま、詳細は言わね〜けど」
姿形はリルリエッタなのに…中身はクロイジア…
死体を食っていたのと何か関係が……
それが前準備…?
リルリエットに化けたクロイジアは、恐らくリルリエットが使用していたであろう短刀を懐から取り出した。
見た目からして、衣服といった装着品も模倣するようだ。
「俺は自分が大事でさ〜だから戦うときはいつも…」
…ッ早
「他人さ」
「…がッ」
何が刺さる音が下から聞こえた。
刃が腹に刺さって…
そのまま腹が横に引き裂かれる
横を見ると、血液が絵画のように散っていた。
「…っ……ゴフっ」
口から血が…
「…?!」
血の生温かさを感じた直後、視界が反転した。
「…まじ弱ぇ〜バンはこいつのどこに恐れを感じたんだよ。そこらの魔獣にも勝てないじゃねぇか〜?つ〜か腹を裂いた感じ、最近ついたっぽい傷跡もあったし〜どうせあの黒狼種にでも助けてもらったんだろ〜?」
クロイジアの足が私の頭に乗せられる。
「…ティア、お前〜何の為に生まれてきたんだ〜?記憶喪失とか聞いたが…相当良い暮らししてきたんだろうな〜その肌見たら分かるわ〜」
「妬ましい〜………とっとと死んどけ」
ギギギ…
「…がっ」
頭が…割れ…る
「まぁ見た目は結構良いから、殺した後に俺が有効活用してやんよ〜光栄に思え〜………ん?」
クロイジアが振り向いた方向の遠方。
そこで爆音と共に砂塵が舞い上がった。
「うお!!ビビらせやがって〜あっちはあっちで何やってんだよ〜」
私から意識が逸れた…今!!
「……っうぅぅああぁあ゛!!!」
クロイジアの足から無理やり逃れると同時に、地面に落ちていた短刀を拾った。
「んな!?」
短刀はクロイジアの左目に深く刺さった。
左目からは血が噴水のように湧き出る。
「〜〜ッッ!この野郎!!」
「…ッッ」
大振りな短刀が目の前を通過する。
頬が少し裂けた。
「よくも…苦労して手に入れた擬態を…天恵の薄い目ん玉を狙いやがって…」
「……私はお前を許さない……今までも多くの命を奪っただろうお前を……今…ここで…倒す」
「いつもいつも…お前らは…こっちのことなんも知らねぇくせに……うっせんだよ、ヒーロー気取り!!」
無駄な力は要らない……いるのは速度……
さっきので、身体強化の感覚はなんとなく分かった。
天恵を血液ではなく…水と思うこと。
巡るのではなく…包む。
「遅せぇんだよ!!」
「くっ!!」
付け焼き刃の技術じゃ追いつけないか…
クロイジアの一撃を辛うじて短刀で受けるが、押し負ける。
そのまま短刀はどこかへ飛んで行った。
「…片目潰して、生きがんじゃねえぇえええ!!」
目で追えなっ…
瞬く間に、音もなくクロイジアが反対側に立っていた。
「……?」
「馬鹿が……」
…あれ、視線が低い…?
これは…私の足?
なんで………あ
私は自分の首が切られたことにすら気づかなかった。
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もう……世話の焼ける子…
月は泣く。




