三話 鬼の十八番
「……」
沈黙が続く中で、エルスが苦しみの声を上げる。
「…ティア…ぁ…さま」
顔色が悪い。
早く助けないと。
けど、私にはそんな力は無い。
頼むとしたら彼女になるだろうけど。
背中に大きな荷物を背負っているのを見るに、応急処置程度なら…
大丈夫……きっと助けてくれるはず。
「…あの」「…すまん!」
その声に被せるようにして相手も低い声を上げた。
…気まずい。
彼が再び口を開く。
「まぁ…その……アイツらオレのツレなんだよ。タブン、早とちりでアンタらを襲ったぽい」
「アンタが抱えてる黒狼種にも言っといてくれ」
「黒狼種…エルスのこと?」
彼は少し驚いたような素振りを見せた。
「『エルス』か………まぁ…オレは気にしねぇぞ…」
「…何を?」
「いや!何でもない、それよりもエルスの治療だ。黒狼種だし、大丈夫だとは思うが…アッチにオレらの仮拠点があるからそこに行こう。詫びもしてぇしな」
エルス、貴方は…
「うし!そうと決まればサッサと行くか。」
彼は先程の二人を両脇に抱えた。
「そういや、アンタの名前は?」
この際、エルスが言っていたのを名乗ろう。
「…ティア」
「ティアか…オレはシャクヤ。詳しいことは着いてからで」
体つきは男の子なのに、顔つきは花のように綺麗な女の子の顔つきだった。
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数分歩いた所で、シャクヤ達の仮拠点らしき物が見えて来た。
かなり大きい、テントが二つ備えてあった。
シャクヤは右の赤いテントに入ったので私も着いて行った。
左のテントからはどこか陰湿な印象を感じる。
エルスはすやすやと寝ている。
黒狼種の特性なのか、傷はもう塞がっているみたい。
なんとかなりそうだ。
「いよっ〜す!遅かったなシャクヤちゃ〜ん」
「うっせえ。そんなフウに呼ぶなっていつも言ってんだろ」
私達を迎えたのは、全身が白く黒い丸の目だけ付いている、変な人だった。
「ん?誰だよそのダブル良玉ガ〜ル。シャクヤ、お前〜ナンパでもしたのか?そんなに百合の花を咲かせたかったか?」
「オマエ…いい加減にしろよ」
シャクヤの顔に青筋が浮かんでいる…少し離れておこう。
ススス
「あれ、シャクヤ、お前〜ナンパ相手に引かれてやがんの!おもろ〜」
「フン!」
シャクヤの渾身の右足が、白い変人の股間に入った。
風圧がこっちにまで来た。
痛そう。
「ガっ……」
白い変人はそのまま倒れた。
「フン、いい気味だ。クソイジリ野郎」
「変なあだ名…付けんじゃねぇ〜」
…この変人にはあまり関わらないでおこう。




