紅い淡い恋心は盲目色に沈んでゆく
…気がつくと、俺はリビングで寝ていた。晩ごはんを食べた後の記憶が無い。多分ずっと考えこんでいたから、多分脳が疲れたんだろう。もう辺りは真っ暗だ。
「よい、しょっと…」
起き上がると、机を挟んで反対側に同じように倒れて寝ている妹がいた。わざわざ俺に付き合ってくれてたのか。
「おい、美佳。起きろ」
「ふぁ…お兄、ちゃん…?」
「わざわざ俺に付き合う必要無いだろ。風呂入ってさっさと布団入っておけよ」
まだまだ幼い美佳がこんなところで寝ていたら、体を壊すに決まってる。だからそう言ったのだが、
「でも…お兄ちゃんが…心配だから…」
頬を赤らめながら何処か恥しそうに妹が言うから、可愛くて怒るに怒れない。ずるい。
「美佳、なんか赤いぞ。熱でもあるのか?」
そう言っておでこに振れると、やっぱりちょっと暖かい。
「は、はうぅぅ!?」
素っ頓狂な声を上げて妹が立ち上がるもんだから、仰け反って頭を打った。いてて。
「お、お兄ちゃん!お風呂入ってくる!」
美佳はそう言うと猛スピードで風呂場の方へいった。俺はというと…取りあえず落ち着く為にテレビ見るか。そう思って点けたら、ちょうど映画がしてたから見ることにした。
が、やっぱりさっきの美佳の反応が気になる。一体どういう反応なんだ、あれ。
「やっぱり熱でもあったのか…?後で布団用意してやるか…」
一番の懸念は美佳が“あのこと”に気づいていないかだが…、大丈夫だろう。俺自身からは勿論のこと、書類とかからでもバレないようにしてある。だが…
「あれが…バレたとしたら…
俺はもうここにはいられないだろうな」
☆
宮島美佳は風呂に入る為にパジャマを用意していた。しかし、パジャマを探しながらも兄の事を考えずにはいられない。とっくにパジャマが目の前にあるのに、美佳はその事に気付いていなかった。
「お兄ちゃん…」
果たしていつからだろう。実の兄に恋心を抱くようになったのは。
きっかけは分からない。兄と二人でいる場面が多かったから、自然と憧れて、気づけば恋に落ちていた。
何度か兄に大好きだと言ってみたけど、兄はそれを家族内での話としか捉えていないのは明白。そりゃあ、妹から恋心を抱かれているとは思いも寄らないだろうから。
「どうすれば、お兄ちゃんに気持ちが伝わるの…?」
辛い。苦しくて、思わず涙が溢れる。誰かに話すことも出来ない。誰かに頼ることが出来ない。
「私って…孤独そのものだよね…」
誰にも届かないと分かっていながらも、言わずにはいられなかった。そして漸く、自分がパジャマを強く握りしめていたことに気付いた。
☆
…怖い。もし…あのことが妹にバレていたら…俺は…
もういっそのこと言ってしまおうかとも思った。でも無理だ。言えない。言えるわけがないだろう。
「俺達は本当の兄妹じゃないなんて…」
一人呟くことしか出来なかった。




