孤高な冒険者は泥沼に溺れる
朝だ。昨日打った頭がまだ微妙に痛くてさすっていたら、妹に謝られた。まあ半分は俺のせいだと思うけどな。妹がやけに恥ずかしそうにしていたが…まあ気のせいだろう。
「おはよう」
「おはよー」
朝の行き道で、偶然俺は親友(多分周りから見たらそうと言うだけだが)雄輝と出会った。いつもは遅刻ギリギリで登校することが多いこいつとは普段は会わない。理由は分かりきってる。香保と話したいからだろう。こいつが香保にアピールしているのは明らかだ。
「お前、香保の為なら早起き出来るのかよ、普段からそうしろよ」
「いやー、普段は無理だよ。愛の力ってすげー」
発言が生意気なので、取り敢えず殴っておく。ふぎゃっ、という情けない声と共に倒れた。まったく、こいつとの関係は初めて会った時から変わらないな。
「あ、じゃあ香保さんと話したいから先に行ってるねー」
「あ、おい!」
俺の声は届かず、雄輝は行ってしまった。
出来れば、雄輝にこの悩みを聞いて欲しかった。あいつは馬鹿だが、他人の話は聞いてくれるだろうと思うからだ。
このままでは、とても百合奈の前に出ることなど出来ない。もしまた何かしら相談されるような事になれば、俺はもう耐えられない。だから俺は…。
いや…雄輝に相談して俺は何をしようと思っていたんだろうか?雄輝を味方につけて百合奈を避けようとしていたのか?雄輝に愚痴を言いたかったんだろうか?
分からない。俺は雄輝を便利な道具とでも見なしているのだろうか。そうでは無いと否定したくても、周りから見てどうなのだろうか。実際女子勢が小声でそんな話をしているのを聞いた事もある。
俺は偽善者だけで済んでいるのだろうか?俺はその質問に対して否と言える自信は無い。じゃあ俺はなんなんだ?
俺は存在していて良いんだろうか。ふとその疑問が出た時には戦慄したが、これもまた返答出来ない。他人を欺き使役する俺に、果たしてレゾンデートルはあるんだろうか。
「俺には判断がつかねぇよ…」
気がつくと学校の前にいた。他の生徒と一緒に校舎に入っていく。スリッパに履き替え、階段を登り、クラスの中に入ると、案の定雄輝と香保が話していた。自慢話でもしてるんだろうか?まあ、今は首を突っ込むのも面倒なので放っておこう。
幸いと言うべきか、百合奈はいなかった。友達のところへでも行っているのだろうか。
自分の席に座って、教科書の準備をしていると、ドアが猛スピードで空いて、一人の男子が入ってきた。
彼は室長の山江敬人。スポーツが出来るわ賢いわ優しいわと理想的なリーダーだ。初見の人でも積極的に話すから、その友人網は物凄く広い。クラス中から一幕置かれる存在だ。
彼がここまで慌てているところを見たことが無い。だから、雄輝すらただならぬ雰囲気を察して黙った。
「大変だ!」
そして室長は理解不能な事を言った。
「砂川さんが…退学になりそうらしい!」
思わず立ち上がってしまった。




