↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽善者は宴に酔いしれる  作者: 星胤ヒカル
第弍章 翼の堕ちた天使の手を取り巡る
PR
6/36

残響の痕跡に狂う一匹狼


 …なんだか、凄く荷が重い。当たり前だろう。まさかあいつからあんなことを聞くとは思ってなかった。


 夕日が差す帰路で俺は一人、ため息をつくしか無かった。百合奈から、あんな話を聞くとは。

 ―孤独になるのが怖くて、演じてるの…―

 あの声はまだ俺の中で反響している。いつまでも鮮明に響き続けている。そして、俺に困惑を生み出し、心を濁らせ、不安にさせる。


「俺にどうしろって言うんだよ…!」


 あの場ではひとまず何とか言って切り抜けた。その後雄輝に訝しめな目で見られたのを除けば、特に問題は無さそうだった。

 だが百合奈は俺に打ち明けたから、素の自分を曝け出せる俺との二人の空間を求めるだろう。逆の立場なら俺はそうする。相談出来る存在がいるかいないかで、心持ちはかなり変わる。それに、相談して気持ちが整理出来る。自分一人でも解決出来るのにホームズがワトソンをわざわざ連れ出すのはそれが理由だ。


 俺はそんな役目をおえない。まず、俺は百合奈とそんなに仲が良いわけじゃない。俺と雄輝、香保と百合奈が親友同然の関係で、雄輝が香保とたまたま隣の席になって話し出したのが始まりだ。

 つまり、俺と百合奈が話しているのは不自然なんだ。万が一クラスの人間に見られることになれば、悲惨なことになる。俺と百合奈が付き合ってるだなんだと言われるか、それを払拭する為に本当の事を話してしまうか。

 俺単独で考えるなら間違いなく後者だが、百合奈からすればどちらも悲惨とは言え前者を選ぶだろうと思う。何故なら、ひとまず本当の理由を隠せるからだ。


「俺に選択権があるのか…」


 本当に胃が痛い。頭がクラクラする。

 まだ理由はある。それは俺自身だ。あいつに対して偽善者だなんだと偉そうにほざいたが、あれは半分自分に向けたものだ。何故なら俺は…


「お兄ちゃん…?」


 …気づいたらもう家の前についていたみたいだ。そこで考えこんでいたから、不自然に思ったのか妹がわざわざ外に出てきた。


「あ、美佳ただいま」


「おかえりなさい。お兄ちゃん何か考えてたけど…?」


「いや、大丈夫だ。ほら、中に入るぞ」


「はーい」


 家に入ったけど、やっぱり両親はいなかった。うちのお父さんは歴史学者で海外に調査に向かっているし、お母さんは経営コンサルタントとして全国を飛び回ってる。有り触れた光景だった。


「取りあえずなんか食うか…美佳、ちょっと待っててくれよ」


「はーい」


 美佳はそう言うと自分の部屋に直行してしまった。美佳は最近オンラインゲームにハマってるらしく、暇さえあればしている。美佳はそんなことをしていても成績が抜群に良い為、俺は特に口出ししていない。正直一つ危惧していることはあるが、美佳なら自力で行けるのではとも思っている。

 チャーハンを炒めながら…普段は料理上手な美佳に任せているが週二回晩ご飯は俺が作っている…どうにか打つ手が無いかと考える。だが、何も浮かんで来ない。やっぱり百合奈の相談相手になるのは無理だ。


 何故なら…俺は…俺は…


「百合奈よりずっとずっと偽善者なのに…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 「夕日が指す帰路」 「胃が痛い、頭がクラクラする」 といった、セリフではない部分で主人公の気持ちを読者が察せる描写が印象的でした。 サブタイトルの一匹狼は、周囲の友人や妹がいるのに、主人…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。