表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
偽善者は宴に酔いしれる  作者: 星胤ヒカル
第壱章 内に秘めた鈍色の結晶は輝かない
PR
5/36

懺悔色を奏でる孤独な花

「くそっ!」


 俺は思わず声を荒げた。


「また百合奈の勝ちか…強すぎるだろ…」


 なんてことはない、学校の放課後。俺達四人はトランプで遊んでいた。だが…


「皆が弱すぎるんでしょ? 特に雄輝、あんた表情に出過ぎ」


 …ずっとこいつが勝ち続けているのが気に入らない。ババ抜き、七並べ、ダウト、スピード、ありとあらゆるゲームをしたが、誰一人としてこいつに勝てない。


「そうなのかな…?」


 雄輝は雑魚だ。本人は気づいていないらしいが、こいつは直ぐ表情に出る。


「雄輝くんの考えは分かるけど…百合奈ちゃんや政哉くんの考えは読めないよ…」


 なんていってるのは香保だ。香保は表情には出ないが、ジョーカーを持ってたりするとソワソワしているから、これまた簡単だ。問題は、百合奈。こいつは一切合切分からない。しかも、俺達の手を分かっているかの如くやってくるもんだから、勝てる訳が無い。


「百合奈、もう一回スピードで勝負だ!」

「雄輝、お前には無理だって」


 流石にツッコんだ。だが、


「いやよ、…少し疲れたから水道に行く」


 そう言って百合奈は行ってしまった。雄輝が何か叫んでいるが、聞くに値しないのでスルー。その内雄輝と香保でスピードを始めたから、俺も水道に行って頭を冷やすことにした。


 水道に来た俺は蛇口から水を出し、少し飲んだ。熱くなっていたのが、少し冷える感じ。そして顔をバシャバシャ洗い、横を見ると、


 百合奈が泣いていた。いまだかつて見たことの無い涙を見せていた。ビックリしてみていると、こっちに気づいて


「ひゃう…!?」


 変な声を上げながら後ずさった。俺はというと


「あー…ど、どうしたんだ?」


 困惑していた。


「あ、あは…バレちゃったね…仕方ないか…」


 そう言って、百合奈は勝手に説明し出した。俺が願った訳でもないのに。


「あのね…私、本当はあんなはっちゃけたこと出来ないの…でも、孤独になるのが怖くて、あんなキャラ演じてるの…」

「……」

「私の中でね、見捨てられない為に演じようって気持ちと、苦しまない為に正直になろうって気持ちが争ってるの…」

「……」


 百合奈が勝手に説明し始めたのは、自分一人で抱え込むのに限界があったからだろう。あと、百合奈が自分の事を私と呼ぶのを初めて聞いた。


「政哉…私って偽善者だよね…?」


 ここの解答は今後の百合奈を左右するだろう…。


「ああ、偽善者さ」

「そう、だよね…私なんて…」

「でもな、


偽善者で良いんじゃねーの?」


「…え?…私、人を騙してるんだよ?良くないに決まってるじゃない…」

「別に良いじゃねーか。聖人みたいな人間なんていねーよ。人間全員偽善者さ」

「だとしても…私の行動は…」

「あのな、偽善者は駄目なんて誰が決めた?親か?先生か?そんな法律でもあんのか?」

「……」

「偽善者をどう判断するか決めるのは自分自身だろ。なら、自分自身で偽善者でも良いって否定してみろよ」

「…そう、だね…」


 良し、上手くいったか。


「私は偽善者だけど…私は私を肯定する…」

「良し!じゃあいい加減戻ろうぜ。雄輝や香保が心配する」

「あ、政哉…」

「?どうした?」

「ううん、何でもない…」

 僅かに頬を赤らめる百合奈を引き連れ、俺は教室に向かって歩き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 皆に好かれたい自分と、本当の自分……だれでも多かれ少なかれ百合奈みたいな部分はあるんじゃないかな(´・ω・) でも、自然体の自分を受け入れてくれる人が欲しいって思う気持ちだってありますよね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ