懺悔色を奏でる孤独な花
「くそっ!」
俺は思わず声を荒げた。
「また百合奈の勝ちか…強すぎるだろ…」
なんてことはない、学校の放課後。俺達四人はトランプで遊んでいた。だが…
「皆が弱すぎるんでしょ? 特に雄輝、あんた表情に出過ぎ」
…ずっとこいつが勝ち続けているのが気に入らない。ババ抜き、七並べ、ダウト、スピード、ありとあらゆるゲームをしたが、誰一人としてこいつに勝てない。
「そうなのかな…?」
雄輝は雑魚だ。本人は気づいていないらしいが、こいつは直ぐ表情に出る。
「雄輝くんの考えは分かるけど…百合奈ちゃんや政哉くんの考えは読めないよ…」
なんていってるのは香保だ。香保は表情には出ないが、ジョーカーを持ってたりするとソワソワしているから、これまた簡単だ。問題は、百合奈。こいつは一切合切分からない。しかも、俺達の手を分かっているかの如くやってくるもんだから、勝てる訳が無い。
「百合奈、もう一回スピードで勝負だ!」
「雄輝、お前には無理だって」
流石にツッコんだ。だが、
「いやよ、…少し疲れたから水道に行く」
そう言って百合奈は行ってしまった。雄輝が何か叫んでいるが、聞くに値しないのでスルー。その内雄輝と香保でスピードを始めたから、俺も水道に行って頭を冷やすことにした。
水道に来た俺は蛇口から水を出し、少し飲んだ。熱くなっていたのが、少し冷える感じ。そして顔をバシャバシャ洗い、横を見ると、
百合奈が泣いていた。いまだかつて見たことの無い涙を見せていた。ビックリしてみていると、こっちに気づいて
「ひゃう…!?」
変な声を上げながら後ずさった。俺はというと
「あー…ど、どうしたんだ?」
困惑していた。
「あ、あは…バレちゃったね…仕方ないか…」
そう言って、百合奈は勝手に説明し出した。俺が願った訳でもないのに。
「あのね…私、本当はあんなはっちゃけたこと出来ないの…でも、孤独になるのが怖くて、あんなキャラ演じてるの…」
「……」
「私の中でね、見捨てられない為に演じようって気持ちと、苦しまない為に正直になろうって気持ちが争ってるの…」
「……」
百合奈が勝手に説明し始めたのは、自分一人で抱え込むのに限界があったからだろう。あと、百合奈が自分の事を私と呼ぶのを初めて聞いた。
「政哉…私って偽善者だよね…?」
ここの解答は今後の百合奈を左右するだろう…。
「ああ、偽善者さ」
「そう、だよね…私なんて…」
「でもな、
偽善者で良いんじゃねーの?」
「…え?…私、人を騙してるんだよ?良くないに決まってるじゃない…」
「別に良いじゃねーか。聖人みたいな人間なんていねーよ。人間全員偽善者さ」
「だとしても…私の行動は…」
「あのな、偽善者は駄目なんて誰が決めた?親か?先生か?そんな法律でもあんのか?」
「……」
「偽善者をどう判断するか決めるのは自分自身だろ。なら、自分自身で偽善者でも良いって否定してみろよ」
「…そう、だね…」
良し、上手くいったか。
「私は偽善者だけど…私は私を肯定する…」
「良し!じゃあいい加減戻ろうぜ。雄輝や香保が心配する」
「あ、政哉…」
「?どうした?」
「ううん、何でもない…」
僅かに頬を赤らめる百合奈を引き連れ、俺は教室に向かって歩き出した。




