青春の一ページを携えた夏の訪れ
「じゃあこれで連絡も終わったし、終わりにしましょうか。砂川さん」
「起立。気を付け。礼。」
「「「ありがとうございました」」」
遂に一学期が終わり、夏休みに突入した。宮島政哉も一安心して帰宅の準備をしている。色々とあった一学期だったが、幸いなことに落ち着いて終えることが出来た。
六月に祖母が来た時はどうなることやらと思っていたが、美佳との関係に亀裂が入ることは無かったので一安心である。…何故か、美佳が手を握ったりくっついてきたりと軽いスキンシップをとるようになってきたが。
家に帰ると、玄関のドアを開けた瞬間に美佳が満面の笑みで出迎えてくれた。
「お兄ちゃん、お帰りなさーい!」
と言って飛びついてくる。政哉が驚きながら辛うじて躱すと、美佳はショックを受けたような表情をした。漫画ならばガーンという吹き出しが出そうである。
「なんで避けたの!?」
「いやこけたら大惨事になるじゃん…」
夏休み初日から怪我でもすれば身体的にも精神的にもダメージが大きい。それに何より…美佳を傷つけたくはない。そういう意味での発言だったが、美佳は顔を赤らめてすごすごと退散した。政哉はその真意を測り兼ねて、結局首を傾げて靴を脱ぐしかなかった。
佐野雄輝らと共にプールへ行く為にも、早めに課題をこなそうと思いながら。
☆
宮島美佳は兄の発言に恥ずかしさを覚えて表情を見せない様に逃げ出した。兄の発言を兄の意図とは違う形で受け取っていた。
「こけたら…大惨事…大惨事…」
後になって、兄がそういう意図でないことを理解したが、一度そういう想像をしてしまった以上、そのイメージを崩すことはそう簡単には出来なかった。
だがしかし、一方でそんな関係を望んでいる自分がいるような気がした。何故だろうと思った。自分は兄弟であることを望んでいた筈ではないのだろうか。
自分自身が関係の変化を望んでいるということなのだろうか。でも、それは一か月の行動を否定することにならないのだろうか?
美佳は再び考え込む羽目になっていた。
☆
砂川百合奈はドキドキを隠せないでいた。政哉と一緒にプールに行くことを決められたのである。安濃香保にはニヤニヤと笑われてしまったが。恋だね、とも言われた。
だが、百合奈はこれを恋心と言っていいのか分からなかった。自分が政哉に対する感情は、秘密を共有していることに対する信頼なのではなかったのだろうか。しかし、政哉といると変に心臓がバクバクして仕方がない。これが恋というものなのだろうか。だが、少なくとも
もし政哉の隣に立つことが出来れば、これほどうれしいことはないとだけは言える。
そしてこれは彼女なりの決意であった。
薔薇色を滲ませ、夏が産声をあげる。




