亀裂の終息の道と新たな恋の波
「美佳っ!」
宮島政哉は美佳の姿を見つけ、叫びながら駆け寄った。そこには、しゃがみ込んでしまっている美佳がいた。
「お兄ちゃん…なんで、ここが分かったの…?」
美佳の問いに、政哉は答える。
「…ちっさい頃から、美佳は何かあるとすぐこの公園に来てただろ」
そこは、家から歩いてすぐの場所にある小さな公園だった。遊具がそれほど置かれていた訳でも無いが、家との近さ故に政哉は美佳を連れてよく来ていた。そして、美佳は何かあるとすぐここに来ては泣いていた。その度に政哉が迎えに行っていたのだ。美佳が小学校高学年になる頃には来ることも無くなっていたが。
「美佳、帰ろう。俺たちの家に」
政哉は勇気を振り絞って言った。しかし、美佳は政哉に顔を向けないまま
「あそこはお兄ちゃんの家だよ…私の家じゃない…。だって、私はお兄ちゃんの家族じゃないもん…」
そう返されてしまった。政哉は我慢出来ず、美佳を後ろから抱きしめた。美佳は突然のことに僅かに震えた。そんな美佳に政哉は耳元で囁く。
「美佳は俺の家族だよ。間違いなく」
「なんで、許嫁で、血も繋がらない、私がっ…!」
政哉は、ここに来るまでに無い知恵を捻って精一杯考えた説得の言葉を言おうとしたが、上手く話せる気がしなかった為、その場の勢いで言うことにした。
「許嫁だったって、血が繋がっていなかったって構わないだろ。
一緒に笑って、一緒に泣いて、一緒にご飯を食べて。
それが家族じゃないなら、何だって言うんだ」
「…!」
美佳はわかりやすく動揺していた。政哉はもし美佳がまだ認めないようなら離さないつもりでいた。人目は憚られたが、そんなことは美佳のことを考えれば些細な事だった。
「お兄ちゃん…」
美佳が話し始めた。
「どうした?」
「お兄ちゃんは…私の、お兄ちゃんになってくれる…?」
政哉はもっとギュッと抱きしめて言った。
「当たり前だろ…美佳は大切な、俺の妹だよ」
その瞬間、美佳はくるりと振り向いて政哉に抱きついた。たっぷりと涙を流して泣きながら。政哉も僅かながら泣いていた。心配した百合奈が気付くまで、彼らは抱き合っていた。
☆
「良かったじゃない」
砂川百合奈は政哉に言った。政哉はまだ気持ちの整理がついていないのか、頷くだけだった。
「取り敢えず、帰りましょ」
そう言って百合奈は立ち上がり、政哉と美佳も続いた。そして百合奈は、政哉の手を握ろうと自らの手を伸ばした。ところが、先に政哉の手を握った人物がいた。美佳だった。
「お兄ちゃん、帰ろ!」
そして美佳は無言で百合奈を睨んだ。まるで、おもちゃが取られることを嫌がる赤ん坊の様だった。あなたには渡さない、とでも言うような。その状況に政哉はオロオロするだけだった。
百合奈は少し考えた後、政哉のもう一方の手を握った。そして、
「さ、帰るわよ」
と言った。そして百合奈もまた美佳を睨んだ。まるで、敵に対して堂々と宣戦布告するように。政哉は困惑するばかりで意味を介さなかったようだった。
3人は手を繋ぎながら帰途に着いた。




