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偽善者は宴に酔いしれる  作者: 星胤ヒカル
第肆章 それでも愛は不変の価値を成すか
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心の壁を乗り越える術は自分の中にある


 数十分前に遡る。

 宮島(みやじま)美佳(みか)は兄の部屋に入ると、パソコンを見つけた。ここに何かあるのでは、と直感的に感じた美佳は起動するも、パスワードを打つ場面になった。最初は兄の誕生日で試してみたが、残念ながら違っていた。次に、自分の誕生日を入れてみた。すると、ロックが解除されていた。

 そしていよいよ、兄の検索履歴を見てみた。すると、最初に出てきたのは許嫁だった。だが、美佳は初めその言葉の意味を理解するのに時間がかかった。意味を知った時、もしやと疑念がよぎった。そして、ホーリー航空154便墜落事故に行き着いた。いや、より正確にいうなら行き着いてしまった、だろう。

 遂気になった美佳はそれをもう少し調べてみようとした矢先、玄関の方から音がした。勿論、それは政哉(まさや)百合奈(ゆりな)である。

 美佳はその時になって初めて、自分がとんでもないことをしているという事に気付いた。兄に怒られかねないことをするなど、これまでの美佳なら間違いなくしてこなかったことだ。

 美佳は咄嗟に隠れた。兄に勘付かれないのか不安だったが、それは杞憂だったようだ。いや、或いは救われなかったというべきなのだろうか。

 そして意図せずして、美佳は真実を知ってしまった。



 砂川(すなかわ)百合奈はその状況を把握するまで時間がかかった。まず、政哉から美佳との関係について知ることになった。次いで、それを美佳が聞いていたことを知ることになった。そして、



 美佳は政哉が狼狽える中部屋を、家を出ていった。



「政哉、すぐ追いかけないと…政哉?」


 政哉は凍りついていた。その表情は絶望感に包まれており、その頬には涙があった。政哉がこんな弱い表情を見せたところなど、見たことが無い。かつて自分を救ってくれた時とは似ても似つかない姿に、百合奈は一瞬困惑を挟んだ。

 しかしまもなく、政哉の手を引っ張って強引にでも美佳の元へ連れて行こうとした。このまま放置する気にもなれなかったのだ。また、恩返しのつもりでもいた。

 だが、政哉は一向に動こうとはしなかった。百合奈は思わず声を荒げた。


「何してるのっ、早く行かないと…!」


 すると政哉は涙を浮かべつつこう返した。


「行ったとして、何て言えば良いか分からない…だから、放っておいてくれないか」


 政哉の弱気な発言に、百合奈は政哉の頬を引っ叩いてしまっていた。それだけ百合奈自身も不安定な状態だった。


「内容を考える暇があったら追いかけなさいよ!政哉の美佳ちゃんへの愛はその程度の浅はかなものだったの!?」


 百合奈は自分も涙声になりながら必死に訴えた。政哉はここまで言われたからか流石に反論してきた。


「なっ、そんな訳無いだろ!俺は…俺は勝真兄さんの願いを叶える為に、今日まで全力で美佳の兄を努めてきたんだぞ!」


「その思いがあるならそれを伝えなさい!」


 百合奈がそう言うと、政哉は思い詰めた表情をしたのち、覚悟を決めるように深呼吸をすると、百合奈に言った。


「…分かった。どうなるか分からないけど、行ってくる」


 そう言って、政哉は大急ぎで部屋を出て行った。百合奈は安心したような、油断出来ないような気持ちでいた。


「神様どうか…彼らを救ってください」


 結局百合奈は神頼みするしか無かったのであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 美佳ちゃん、こんな形で知ることになるとは……そりゃショックだろなぁ……(;´・ω・)
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