遊園の監獄を抜け出し行き着く先は
砂川百合奈は取り敢えず宮島政哉の後を追って家の中に足を踏み入れた。彼の口から何が飛び出てくるか予測不能だが、今更引き返す気にもならなかった。政哉が苦しんでいるのであれば救いたかった。かつて自分を救ってくれたように。
☆
宮島政哉は家の中をサラッとあちこち見回すが、美佳の気配が無い。だが、出かけたのだろうと思って特に気にはせず、一応百合奈を自分の部屋に入れることにした。途中で美佳が帰ってきても、あれこれ言って誤魔化せる可能性を少しでも上げる為だ。
政哉は自分の部屋に百合奈を入れると、扉を閉めて百合奈用にクッションを用意した。百合奈が座ったタイミングで、いよいよ明かすことにした。秘密を明かす怖さよりも、1人で抱える必要が無くなる安堵の方が強かった。美佳にも話していないのだから。
「…バレてると思うけど、俺の家は大星グループの一族なんだ。来ていたやつは俺の祖母」
「…そう」
やはり2人きりの状況だからか若干素の百合奈が出ているが、わざわざ指摘するほどのことでもない。
「俺の父さんは次男で、本来であれば長男の光文おじさんが代表になって父さんは関連会社の代表になる予定だった。それが慣例らしかったんだ」
「でも、政哉のお父さんはそれを拒んだ…?」
「そう。父さんは小さい頃からずっと考古学に興味を持っていたらしい。それに専念したいからって何度も祖母に交渉してたんだ。でも祖母は過去そんな例は無いと拒絶した」
今は百合奈がいるから憚られるが、一人の時なら暴言が出ていただろう。百合奈は黙って俺の話を聞いてくれていた。
「ある時、遂に父さんは我慢の限界になって家を飛び出した。祖母から貰っていたお金を持って。祖母は父さんが離れないように金を渡してたけど、皮肉にもそれが父さんの資金源になった」
「…」
「そして、父さんは念願の歴史学者になって、母さんと結婚した。家を出たことに加えて歴史学者になったことと一般庶民の母さんと結婚したことでいよいよ縁を切っていた。でも、俺が生まれても何とかなる程度には生活は苦しくなかった」
このまま行けば、少なくとも政哉と祖母の間に何の関係も生まれず、政哉は平和に暮らせていたかもしれない。だが、運命はそんなに甘いものでは無かった。
「だが、ここで話は終わらないんだ。俺が生まれた二年後、光文おじさん一家の乗る飛行機が墜落する事故があった。その事故では少年数名を除くほぼ全員が亡くなった。当然、光文おじさん達も」
「それって…」
「古臭い言葉で言うなら御家断絶ってやつ。だから、祖母は亡くなった光文おじさんの代わりに父さんに跡を継いでもらうしか無い。でも、祖母は父さんに絶対に代表にはなって欲しくないと思っていた。それだけ祖母と父さんの間には溝が出来ていたんだ」
そして、遂にこれを初めて他人に話す。
「だから祖母は、俺を光文おじさんの代わりとして跡を継がせると言って来たんだ。父さんも母さんも拒絶したけど、それでも尚しつこく言ってきてる。今日のあれがその証拠」
しかし、百合奈は首を傾げて質問してきた。
「でも、政哉は分家の子になるんじゃないの?」
何というか、流石と言うべきか。こういう大きな家は当然のことながら本家分家という定義を気にする。そこまで分かっているのだろう。そして、一番の爆弾を投下する。
「ああ、だから
光文おじさんの血を引く唯一の生き残り、美佳を許嫁にしようとしてるんだよ」




