真相は無言の嵐を引き起こす
「久しぶりだねぇ」
それが宮島玲子の第一声だった。下手な閣僚よりもよっぽど大きな影響を持つ得体の知れない怪物。それが宮島政哉の祖母に対するイメージだった。
「…何しに来やがった」
敵対心を隠す気はさらさら無かった。こいつとは何億世紀経とうと分かり合えないと思っていた。こんな奴とは。
「孫の顔を見に来ただけじゃないか。日本全国の年寄りが望むことさ」
「あんたの場合は顔を見るだけで終わらせないだろ」
「…その顔、父親に似て生意気な顔だね。あんな穢れた人間の言うことなんて聞くなと言っているだろうに」
「っ、父さんを馬鹿にするな!」
いつもこんな感じだ。祖母は俺の父さんに対して愛情らしい愛情を見せたことが無い。ただ罵るだけだ。
「ふん、養育費も送ってやってるし身分詐称もやってやったのに。その態度かい。恩知らずめ」
「あんたから送られてる金なんて一銭たりとも使ってねぇし、
身分を誤魔化すのはあんたがいなくたって出来た」
「だろうねぇ、あのバカ息子が金を持ち出すもんだから」
いつもこうだ。祖母は恩知らずという言葉で俺をあの世界に引き摺り込もうとする。人間じゃない。
その時、俺のあとを追って来た人物がいた。
「政哉、これ忘れてたわ…へっ」
砂川百合奈である。最悪のタイミングで来てしまったらしい。だが、結果として彼女が来たことで祖母は
「…また来るからねぇ」
と言って退散したので、政哉としては有り難かった。しかし、百合奈に説明する必要が生じてしまったが。
☆
砂川百合奈は困惑を隠せなかった。政哉が、あんな大物と話していたのだから。百合奈は偶然にもその人物を知っていた。
「政哉、今の人ってさ。大星グループの会長よね」
大星グループ。日本一の財閥とも呼ばれ、政界にも影響のある巨大グループである。百合奈は数日前にニュースでその会長を見ていた。と言っても、その場で見てへぇと思っていた程度であったが。
百合奈の指摘に、政哉は顔を顰めた。バレたか、とでも言うように。百合奈は無言で説明を求めた。
「…取り敢えず家に入ってくれ。周りに聞かれると面倒になる。話はそれからだ」
それが政哉の返答だった。そしてそれはつまり秘密を明かすということを意味してもいた。百合奈は緊張しながらも、政哉の家に足を踏み入れた。
☆
宮島美佳は兄のパソコンの検索履歴を見て困惑していた。
「許嫁…?」
自分達は兄弟では無かったのだろうか。真相を確かめようと更に遡ると、もう一つ気になるワードが出てきていた。
「ホーリー航空154便墜落事故…」
それは、日本一の財閥が長男一家を失ったとして有名な航空事故だった。




