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[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
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金談の駆け引き・虚々実々

 おれはそういった村方の事には一向に構わなかった。御紋服を着て、中間を一人連れては時々その勢の中を通ると、一同に逃げ隠れた。


 おれが連れてきた侍に、堀田喜三郎という男がいた。それに言いつけて、それからは毎日昼前に『大学』『孝経』(注1)の講釈をさせた。講釈はおれも聞き、新右衛門の親族にも聞かせた。


 新右衛門は道理の分かる者だったから、これらの事に大いに喜び、内証で金の話もすると請け合ってくれた。

 そうなると今に騙して百姓どもに泡を吹かせ、金を出させてやろうと思えて、逗留中は面倒事は少しも言わないで慎んでいた。

 しかし皮癬(注2)が出来て困るから、毎日毎日伊丹の小山湯へ入りに行っては、村に置いてきた間者から様子を聞いてばかりいた。村方の者の悪巧みも色々と聞こえてきたが、何にも知らぬ顔でいた。


 段々日数が経つからと、大阪へ行っての下山弥右衛門に内々の相談をした。こいつは大坂町奉行堀伊賀守りの用人で、元はおれが江戸で色々と世話してやったら男だった。だから孫一郎の家の事も良く心得ている。

 おれが大坂から村方へ帰ると、代官が「大坂の誰の所へ出向いたんだ?」と聞いてきた。

「伊賀守の所に元相弟子がいるから、それをたずねてきた」

 おれがそう答えると、代官は「それは」とだけ言って、言葉も続けられずに怖がった。

 二、三日が過ぎると大坂から大勢の供回り(注3)の使者がやって来て、伊賀守の口上を述べた。それと一緒に使者が箱肴(注4)など色々と送ってよこしたから、村中がそれをみて肝を潰す。

「夢酔様は、御奉行様と御懇意だ」

 そんな風にぬかして、それからは竹槍だの旅宿を取り巻く事はなくなり、おかしくてならなかった。


 貰った肴は村役の者へ分けてやり、他の物は代官の親類に配ってやった。

 村中で「御奉行様の御肴だ」と言って頂き食ったとよ。


【注釈】

注1 … 共に儒教の経典。大学は四書の一つであり、孝経は十三経の一つ。

注2 … 寄生虫による皮膚病の一種。

注3 … お供の一群。

注4… 祝賀用の箱入りの魚。多くの場合は干物が用いられた。


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