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[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
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行と断食 刀の研ぎ・目きき・胴試し

 願掛け行は色々とやった。落合の藤いなりへ百日夜毎に参詣したり、または王子いなりでも百日、半田いなりでも百日という具合に、日参を行った。

 水行もやった。神前に桶を重ねて百五十日、三時(注1)づつの行。しかも冬に。この行を行う間にも種々のことがあったものだが、ここにはもらして書かない。

 断食の行についても三、四度行ったが、出来ないということもないものだ。


 地主は先代から代官を勤めているので、役所の跡(注2)が空いていた。そこで水心子天秀という刀鍛冶の孫婿にあたる、水心子秀世という男を呼んで、役所跡で刀を打った。


 また、研ぎ屋の本阿弥三郎兵衛の弟子に、吉という男がいた。こいつは刀を研ぐのがとても上手だから、呼んでおれの住居で刀を研げるよう手配して、おれも習った。


 それから刀剣講というものを組織して、相弟子や仲のいい人に話して取り立てた。

 秀世または細川主税正義ならびに美濃部大慶直胤、神田の道賀または梅山弥曾八、小林真平等。その他にも、この時代の刀鑑(注3)にかなう職人は、残らず刀剣講に取り立ててやった。

 ある日、千住へ行って胴を試した(注4)。その縁で浅右衛門(注5)の弟子になって、土壇切り(注6)をして遊んだ。

 この頃息子は御殿へ上がっていた(注7)から、世話はなかった。息子が七歳の時だ。


 地主が儲けが少なく貧乏で、借金取りがきて困ると相談してきたから、引き受けて片付けてやった。

 そいつの地面を借りていた家が九軒あったが、どいつも地代も宿賃もろくろくよこさんので、みんな叩き出した。そしてそこにおれが懇意にしている者達を呼んで置いた。

 その後、地代その他は滞らなくなったから、地主は喜んでとても助かったと言いおった。


【注釈】

注1 … 約6時間。

注2 … ここでの役所は支配領ではなく、江戸にある代官役所。主に代官が自宅に設置する。

注3 … かたなめきき。刀の真贋を鑑定すること。

注4 … 斬首された死体を使って、刀の切れ味を試すこと。

注5 … 山田浅右衛門。江戸時代の斬首人の名跡。正確には幕府お抱えではないので、立場は浪人であった。

注6 … 土で作った台の上で、死体を切ること。土の台を下にするのは、刀の刃こぼれを防止するため。

注7 … 勝海舟は、十一代将軍家斉の孫である初之丞に仕えるため、7歳から9歳まで江戸城に登っていた。初之丞はこの後病死。


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