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[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
35/70

就職運動成就せず

 それからは毎日裃を着て、諸々の権家(注1)を頼んで歩いた。

 その頃のおれの頭は大久保上野介と言って、赤坂の喰違門外の番所勤めだったが、おれは毎日そこを訪ねてご機嫌を伺った。

 以前にした悪いことの色々を残らず書き取って、『今は改心しましたから、なんとか取り立ててくれまいか』と送った。

「そちらの言い分はわかった。ついてはそちらの言い分に間違いがないか隠密を使って身辺調査をする。そのつもりでいろ」

 頭の所から用人が来てそう言うので、そのつもりで待っていたら、ある時頭が口を開いて、

「配下の者は何事も口を濁していかんが、御自分は己の不行跡を正直に申された。配下の者に調べさせた話と聞き合わせるに、実際の所は書かれていることよりも大きいな。しかし、改心して満足だ。是非取り立てるよう計らうから、そうなったら精を出して勤めろ」と言う。

 そこまで言われたのだからと出精して、合間には稽古も欠かさなかった。それでも、度々書上になる(注2)ばかりで、中々心願が叶わないのは悔しかった。


【注釈】

注1 … 権勢のある家。有力者。

注2 … 下の者が上の者に書状を出して願い出ること。この場合は、大久保が夢酔の就役を願い出ること。


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