二十一歳から二十四歳まで・檻の中
座敷牢に押し込まれたから色々と工夫をして、一月もたたない間に檻の柱二本を抜けるようにしておいた。
だが、よくよく考えてみると、こうなったのはみんなおれ自身が悪いから起きたことだ。それに気づいたから、檻の中で手習いを始めた。
毎日本を読み、色々な軍書も学んだ。
時々友達も尋ねてくるから、檻のそばへ呼んで、世間ではどんなことがあったか聞いて楽しんだ。
結局二十一の秋から二十四の冬までの三年間を檻の中で過ごすことになるのだが、苦しかった。
その内に、親父が手紙に書いて度々意見をくれた。
「息子が三つになるから、おれは隠居して、家督は息子に譲りたい」
おれがそう言うと親父は、
「それは悪い了簡だ。お前はこれまで種々の悪さをしたのだから、一度は真面目にご奉公でもして、立派な姿を見せて世間の口をふさげ。養家への孝行もして、その上でなら好きにしろ」
と言ってよこした。
それはもっともだ。親父に言われて初めて気づいたから、何とか勤めることができないかと兄へ相談した。
「お前が自前で勤め道具や衣服の用意ができるのならば、勝手にするがいい。おれがお前に言える厳しい言葉は出し尽くしたから、今度は構わん」
兄にそう言われたけれど、その時は頬の下に腫れ物ができていたので飛び出さずに寝ていた。
腫れが引くと、『少しも苦労をかけまい』と紙に書き出して、檻を出た。
翌日のこと。拝領屋敷(注1)へ行き、家主に事情を話して金子を二十両借り出した。その金で色々と入り用なものを残らず用意して、十日に出勤した。
【注釈】
注1 … 旗本が幕府から拝領した江戸の屋敷。勝家はこの土地を貸して金を得ていた。




