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[現代語訳]夢酔独言  作者: 雪邑基
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吉原初遊び

 帰ってきたはいいが、家ではまたばばあ殿がやかましくっていかん。

「おのれは勝の家を潰そうとしたな!」

 こんな風に色々と怒ってくるから困る。こんなだから、おれは外に出てまともに家にはいなかった。


 兄貴の役所詰(注1)に久保島可六という男がいた。そいつに騙くらかされ、おれは吉原へ連れて行かれたのだが、面白かった。

 吉原遊びは実に面白いから、毎晩遊び歩いた。すると金がなくなる。金がなくなって困っていると、信州の御料所(注2)から年貢の金が七千両届けられた。役所で一度預かり、改めて金蔵へ納めるのだ。


 その時、兄貴は金の番をしておけとおれに命じた。素直に従って番をしていると、可六がやってくる。

「金がなくては吉原に行っても面白くない。百両ばかり盗んじまえ」

 可六はそうやってそそのかし、おれも「もっともだ」と応じて千両箱を開け、二百両いただいた。

 とった二百両の分だけ千両箱の中がかたかた鳴って、これは困る。そこで可六が石ころを紙で包み、代わりに詰めてくれた。

 そのまま知らぬ顔をしていたが、二、三日で知られた。兄貴はかんかんに怒って探して回り、おれが持ち出したと役所の小遣いめが白状しおった。

 金を出せと兄貴が責立てたが、おれは知らぬと強情を張り通した。兄貴はその事情を親父に話した。

「おれも年の若い内は度々そんなこともしたっけかな。わずかばかりの金で、小吉を傷物にはできん。なんとかうまく処理したやれ」

 親父はそういうが、とったのはおれに違いない。となると、その話はそれきりとして、誰も見て見ぬ振りでおさまった。

 その金は吉原へ持って行って一月半ばかりで使ってしまった。それからは蔵宿(注3)や方々を頼り、遊びの金を工面しては使った。


【注釈】

注1 … 勘定方や民政を担当する役人。

注2 … 幕府の直轄地。

注3 … 札差の別名。武士の給金である米の取り扱いを仲介する商人。


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