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今世はもう我慢しません!家を捨てて、精霊たちの森で自由に生きます。  作者: ちょこだいふく


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19.いろんなパン

店の裏手に、小さなかまどがあった。


火を起こし、鍋に水を張る。


そこに瓶をいくつか並べて入れる。


精霊が覗き込む。


「なにしてるの?」


「きれいにしてるの」


「きれい?」


「ええ。目に見えないものを、なるべく減らすの」


精霊はよく分からない顔をしたが、それ以上は聞かなかった。


水が沸く。


瓶の中で、小さく泡が弾ける。


(…よし、これでいい)


火から下ろし、冷ます。


その間に、リンゴを手に取る。


皮を薄く剥く。


(ここに、いるのよね)


目には見えないけれど。


確かに、いる。


瓶に水を入れ、砂糖を少し。


そこへ、リンゴの皮を落とす。


蓋は軽く。


完全には閉めない。


「……これで」


精霊が覗き込む。


「これで、なに?」


リシェルは少し考えてから言った。


「待つの」


精霊はきょとんとする。


「まつ?」


「ええ。時間が必要なの。ここは暖かいから5〜6日かしら」


瓶をそっと窓辺に置く。


光が柔らかく差し込む場所。


(母も、ここで止まっていた)


でも違う。


今は、その先を知っている。


リシェルは、静かに息を吐いた。



ふと、視線が外に向く。


店の脇に、野菜がいくつか置かれていた。


キャベツ。


丸く、しっかりした葉。


「……これ」


手に取る。


ずしりと重い。


(ザワークラウトが作れるわね…)


思考が自然と広がる。


刻んで。


塩をして。


置いておく。


(発酵するはず)


ゆっくりと目を細める。


酸味。


保存。


それだけでも価値がある。


けれど──


(……それだけじゃない)


さらに先が見える。


燻した肉。


温かいパン。


そこに、少し酸味のあるザワークラウト。


(……美味しそう)


思わず、くすりと笑った。


そのまま、小麦粉の袋に目を落とす。


軽い粉。


そして、重い粉。


(これは……)


ゆっくりと考える。


軽い方では、支えきれない。


具材の重さも、水分も。


(なら)


重い粉に視線を定める。


(こっちの方が合う)


しっかりしている。


噛み応えがある。


食べるためのパン。


「…絶対美味しいわ」


小さく呟く。


精霊が尻尾を揺らす。


「おいしい?」


「ええ、きっとね」


まだ何もできていない。


でも、もう分かっている。


ここで作るもの。


ここで生きる形。


その輪郭が、すでにもう見え始めていた。


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