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引き返せない道 1


 いつだったか都市廃墟群、ウェイステッド・セントラルには七つの勢力がひしめき合ってるって話をしたな。

 そのうち五つまではもう登場済みの面子だ。

 ヒャッハーことバンディッド、ガルガンチュア、ゾンビ、巨大昆虫、そしてACだ。


 残り二つの未登場勢力なんだが、今まで俺はこいつらに会わなかったのを幸運だと思ってきた。

 なにせどちらも劣らぬ厄介者、会ったが最後戦闘が避けられない相手だ。


 といって、ガルガンチュアを超える戦闘生物ってわけじゃない。どちらも種族的には人間で、ただ勢力が違うってだけの話だ。


 世紀末ってのは、結局生き残った人間の戦いの舞台でしかない。略奪するかしないか、相手は自然か人間か、縋るのは過去か未来かの違いしかない。


 人間相手に闇雲に略奪するならバンディッド、過去に縋って略奪をしないならACだ。


 では残り二つの人間勢力とは?

 これがどっちも人間相手にどうこうする類の、つまり略奪組だな。両者の違いは一つだけ、目指すのが過去か未来か。


 未来を目指す略奪者、これはブラックヒュドラと名乗る傭兵団だな。

 傭兵つっても、装備がマシなヒャッハーと思ってくれ。こいつらの目的は不明だが、とりあえず見つけたらぶち殺す的対応をしてくるだけだ。

 こっちも見つけ次第ぶち殺しにかかればいいだけだから、そんなに怖い相手じゃない。


 だがもう一方、過去を目指す略奪者たちは別だ。

 そいつらの名はキャピタル・セネターズ。略すならセネターズとしておこうか。ACとは違う出自を持つ、戦前回帰志向の集団だ。

 ACが掲げるのとは違う方法で、この世界を救おうとしている。

 それは暴力でも技術でもなく、絶滅だ。


 セネターズの論理に従うなら、この荒野に生きる人間は全て、汚染された遺伝子を持つ人類の落伍者なんだそうだ。

 セネターズの身内だけが汚染を免れた選ばれし民で、再び真っ当な人類社会を築くことができるんだと。


 何のことはない、戦前の富裕層、政治家、研究者、そして彼らの子弟が選民思想にかぶれて産み出したカルト集団さ。


 バカに刃物という言葉があるが、カルトに超技術ってのも厄介だとは思わないか?

 セネターズはまさにそうなんだよ。

 装備、乗り物、基地、全てが超技術の塊だ。実弾火器が基本の世界で、セネターズはレーザーだのプラズマだのを使いたい放題だ。パワスケだって、ACよりセネターズの方が性能も状態もいい。


 唯一の救いは、連中は極端に少数って事だ。

 兵士の人数が少ないから、奴らには出くわす事は滅多にない。使いっ走りのロボットならたまに出てくるが、こっちは超技術とはいえそこまで怖くない。


 そんなレア集団を、なんで俺が長々解説したのか。そいつらこそ、メインシナリオにおける宿敵、いわばファンタジーの魔王軍だからさ。




 「冗談じゃないわ! 例え目的のためでも、連中と関わるのなんてごめんよ! あいつらは父を殺し……殺そうとしているわ!」


 俺の言葉を聞いたとたん、シャイナは怒りも露わに机を叩く。


 「私もシャイナ殿の意見に賛成だ。連中は危険すぎる。それにヒュージロックの場所がどこにあるのか、そもそも誰も知らんのだから、行きようもない」


 その横でアンジーが冷静に意見を述べる。

 俺は少しためらったが、意を決して口を開いた。


 「二人とも聞いてくれ。俺はこの世界、いや、特定の状況には詳しいつもりだ。連中が厄介なのも、シャイナとシィ、それにジョナサンの命を狙ってるのも知ってる。連中の秘密基地、ヒュージロックの場所は、ある程度ならわかる」


 「なんと……それなら、一族郎党上げてすぐに乗り込んで行きましょうぞ! あやつらは超技術を独占するだけの蛮族。本拠を奇襲すれば我らにとて勝機が――」


 「駄目だ」

 気色ばむアンジーを俺は即座に止める。


 「ヒュージロックの扉は、今の時点では固く閉ざされている、はずだ。その場所に行っても、おそらく入り口は見つからない」


 「……シナリオロック?」

 シャイナの声に、俺は小さくうなずいて応えた。


 「連中は隙を見せない。よほど大きな事がない限りは、な」


 「大きな事?」


 怪訝な表情のアンジーの横で、シャイナはハッと息をのむ。


 「浄水施設への襲撃ね!? そうなんでしょう、フチオミ君?」


 「その通りだ。ジョナサンの計画はすでにあっちに漏れている。連中は浄水施設の復旧を待って襲撃をかけ、彼を拘束するつもりだろう。その時ならヒュージロックへ入れる」


 アンジーには俺のことも、シャイナのことも話してない。

 だから世界の、今の状況に合わせて、できる限り話をかみ砕くように努力しながら、俺は言葉を続けた。


 「これは俺の推測だが、浄水施設のジョナサンはもう復旧に取りかかってるはずだ。俺たちがヒュージロックに入れるチャンスは一度きり、今すぐ向かって、連中の襲撃を待ち伏せするしかない」


 シナリオ的な解説を入れるなら、実はこの時点で手遅れだ。

 中央要塞にシィ、主人公が立ち寄った時点ですでにフラグが立っている。

 浄水施設に主人公が到着すると、入れ違いで抵抗したジョナサンが殺される。主人公は復讐を誓い、物質転換コア探索の傍ら、セネターズと激突するようなるわけだ。


 「承服できないわ! 父が危険に晒される! それに、そもそも父が無事なら、あの浄水装置を無理に動かすことだってないのよ!? それで目的は達せられるじゃない!」


 ジョナサンのことで妙に感情的になったシャイナが、いきなり俺に掴みかかる。久しぶりに超人的な力で締め上げられながら、それでも俺はシャイナの目をじっと見つめて言った。


 「で、でも未来は変えられない、ぜ。ジョナサンは、助けられねぇ……無理だ」


 「ならここで絞め殺してやろうか!? フチオミッ!」


 乱ぐい歯を剥き出しにて叫ぶシャイナを、鋼鉄の腕が押し止める。

 「何やらわからんが、とにかく落ちつかれよシャイナ殿!」


 何とかテーブルの両側まで、アンジーが俺たちを引き剥がす。そのままメガネッ娘な鎧武者は、鋭い眼光を俺とシャイナに向けた。


 「話が変な方向にズレすぎる。未来だの何だのと、両者とも私に隠し事があると見たが、いかがか?」


 その言葉にシャイナが顔を伏せ、俺は反対に顔を上げる。

 「だったらどうする?」


 「その事情如何によっては、この場でお二方とも撃ち捨てる事もあろう。もちろん、手助けできることがあるなら、させてもらう」


 俺はため息をつき、シャイナを見る。

 「俺が説明しようか?」


 「ええ、そうして……」

 シャイナは土気色の顔を苦く曲げて、いらだたしげにカウチに座った。


 「ま、ちょいと事情は複雑なんだが……」

 俺はアンジーと向かい合い、抱えている事情を、今度こそ包み隠さず打ち明けた。

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