表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
HGL!  作者: 真月みなも
サウスタウンの食事情編
14/15

1 日常の始まり

 嵐のようなマリアージュから、明けて一晩。

 某ゲームのように、昨晩はお楽しみでしたね、なんてこともなく。

 仮面夫婦みたいなものですし!あたし、中身女ですし!そういう趣味ないですし!


 閑話休題。


 マリアージュが終了して、はい、さようなら、という事もなく、今もアイラ嬢はあたしと一緒に、マイハウスの中にいた。

 大人数と行動するのは苦手だと言っていた彼女は、完全なソロプレイヤーという訳ではないようだった。


 とりあえず、マリアージュによって貞操は守られるとはいえ、危険が完全になくなっている訳ではないしね。それに、まだ何も運営からの反応がない。

 何が起こるか分からないし、マリアージュの縁もあって、暫く一緒に行動を共にすることにしたのだ。


 あと、マリアージュによって発生する結婚スキルにも、興味があったし。

 いや、あたし的には、ここが一番大きな理由かもしれない。だって、今まで見る機会もなかったし。

 マリアージュスキルの為には親密度を上げる必要があるし、その為には、また側にいる必要があるのだ。


 マリアージュの済んだ状態なら、外に出てパーティーを組んだりするのもできそうだし、マイハウスで延々引っ付いてたあの時期よりは、苦労せずに上げられるだろう。



 偉大なるふかふか天蓋付きベッドを整えて、あたしは大きく伸びをした。相変わらず最高の寝心地を提供してくれる。奮発して買ってみて良かったよ、ほんと。


 目下、部屋着の欲しい毎日ですけどね。

 マリアージュ騒ぎやらで、ほとんど出歩けなかったから、買いに行けなかったんだ。寝る時用のパジャマとかも欲しいっ。あとエプロンもっ。


 男キャラだって、やっぱり多少は着飾りたいし、TPOに合わせた格好したいんだもん。したいんだもん。


 ここ数日で、トイレもお風呂も慣れましたよ。慣れたくないけど、慣れるしかないじゃない。人間の順応性って偉大だなぁ、と思います。


 しかし、つくづく思ったのは……家具とか、しっかり揃えておいて良かったなぁ、と。


 キッチンやらお風呂やら洗面所やら、ゲーム時代に作っておいたのは正解だったわ。今になってこんな風に役立つとは予想外だけどね。


 水回り、あってホント良かった。やっぱり一日の最後はお風呂でさっぱりしたいし。シャワーだけでなく、ちゃんとバスタブ用意しておいたから、しっかりお湯に浸かれるんだよね。この辺は、日本人として大事な所だと思うの。


 異世界トリップみたいな感じなんだろうけど、そういう場合ってお風呂になかなか入れないみたいなものが多い気がするんだけど、そういう面では、あたし達十分恵まれてると思うんだ。


 ある種チートなゲームでの能力とか、マイハウス機能とか、ちゃんと残ってるし。何にもなかったら、きっとあたし挫けてたんじゃないかと思う。

 すっかり平和ボケしちゃってるあたし達が、いきなりサバイバルとか難しいよねぇ。


 顔を洗ってすっきりしてから、キッチンへと向かって、すっかり慣れたアイテム作成ウィンドウを開く。朝食の準備しなくっちゃね。


 今日は長ネギの味噌汁と、ほうれん草を混ぜた卵焼き、白菜とキュウリの浅漬けに、鮭おにぎりと、昆布のおにぎりだ。

 おにぎりも、ちゃんと味にバリエーションある所がこだわりだよね、ロスト・タクティクススタッフ。こういう、ちょっと阿呆なまでのこだわりが好きだなー。


 今日は和食の日なので、あたしはちょっとウキウキしている。

 共同生活する以上、みんな食の好みはあるだろうし、食べたいものを聞いてみたんだけど、ジル姉さんとハッシュは、どちらかというと洋食好みというか、パン食らしい。

 そして、アイラ嬢は中華料理がお好みのようで。


 なので、できるだけみんな均等に好みのものが食べられるように、メニューを回してるんだ。昨日はパンだったから、今日はご飯だね。


 作るのはあたしだから、文句は言わない、なんてみんな言ってるけど、でも、どうせなら食べたいものを食べてもらって、喜んで貰えるのが嬉しいじゃない。料理人としては、喜んで貰えるのが何よりの報酬だもんね。

 というわけで、今日も腕を振るうよっ。


「良い香りじゃのう」

「あ、おはよ、アイラさん」

 本日も一番に食卓についたのはアイラ嬢だ。寝起きは良いらしく、いつもきっちりと身支度を整えてから姿を現す。そういう所は女の子として、しっかりしているというか、支度している所とかを見せないんだよね。

 気付けば、いつもしっかりした格好をしているんだ。


「おはよう、熟練度の」

 欠伸を噛み殺す様子も見せず、しゃっきりと背を伸ばして返してくる。そのまま歩み寄ってくると、手伝いはと尋ねるようにこちらに視線を向ける。


 マリアージュの親密度上げの時も、同じようにこんな共同生活をしていたけれど、改めて一緒に過ごすと、気遣い上手だなと思う。こうやってさりげなく、手伝いをしてくれるんだ。


「テーブルに運んで貰っても良い?」

「了解じゃ」

 キッチンの調理台の上に現れる料理の皿を示して問えば、即返ってくる返事。せっせと運ぶアイラ嬢と一緒に、あたしも皿をテーブルに運んでいると、むにむにといつものように目を擦りながら、ハッシュが起きてくる。


 なんていうんだろう。ぴこぴこ揺れる獣耳と、眠そうに目を擦る仕草をする獣人って、とっても癒しだと思うのよ。


「おはよ、カインー、アイラさーん」

「ハッシュ、おはよ」

「おはよう、黒狼の。おんしは今日も眠そうじゃの」

くすくすと笑いながら、朝食を運び終えて食卓についたアイラ嬢が返す。指摘されて、う、と小さく詰まりながら、ハッシュが顔を真っ赤にする。


 ベッドの所為もあるのかな?あたしが使ってるのは、かなりアイテムの完成度の高い天蓋付きベッドなんだけど、目覚めがめちゃめちゃスッキリなんだよね。


「う……リアルでも、あんまり寝起きの良い方じゃなくって」

照れ臭そうに返すハッシュ。あ、そっちですか。


 思えば、あたしはリアルでも寝起きは良かった気がする。そっちの方が大きく関係してるんだろうか。

 そしてジル姉さんは今日もまだ眠りの中のようで。良く眠れるようになったのは、安心なんだけど、なかなか起きて来られないようなんだよね。


 ちらっとアイラ嬢に視線を向ければ、一瞬秀麗な眉根を寄せ、溜息を漏らす。

「儂が起こしてくる」

 そして決意でもしたように、きりっと顔を引き締め、ジル姉さんの部屋の方へと向かうアイラ嬢。とっても助かります。


 中の人の性別的には問題のある人選のような気もするんだけど、今は女の子同士だし、なぁ。

 衣装持ちだったジル姉さんは、寝る時にセクシー過ぎる格好してて、目のやり場に困るというか……、いや、あたしの中の人的には問題ないけど、端から見ると問題のありそうな場面に見えてしまうというか。

 姉さんの寝ぼけ癖が問題というか。


「こ、こら、天上のっ、起きぬかーーー」

 無事に部屋に辿り着いたのだろう。本日も本日とて、アイラ嬢の叫び声が聞こえる。


「ひゃっ、抱きつくでないっ!もふもふではないっ!天上のっ!」

 ああ、寝ぼけ癖も健在のようで。

 塵の方々が見ていたら、写真(スクリーン・ショット)を撮りまくってそうな気がする。美少女と美女の絡みに萌えるんだろうなぁ、きっと。


 油断すると、抱き締められてあの胸に埋まるんだよね。アイラさんなんか窒息しちゃうんじゃないかって思うんだけども。


「おーーきーーぬーーかーー」

 今日も、平和で何よりです。





 また身支度を整えたのだろう。びしっと髪型も服も乱れた所がないアイラ嬢と、まだ寝ぼけ半分で、欠伸を噛み殺すジル姉さんが食卓につく。身支度は整っているが、疲れたような様子は見えるけどね。


 あたしを人身御供にして下さった訳だし、この位のお手伝いは、ねぇ。

 いえ、別に恨んでいる訳じゃないですよ、ええ。

 ちょこっと根には持ってるかもしれないけど。


「いただきまぁーす」

 ご飯は全員が揃ってからというのが、暗黙の了解になっている。

 何か用事とかで食事の時間に間に合わない時は、事前連絡だ。共同生活を円満にするには、ある程度のルールって大事だと思うの。


 味噌汁の器を口元に寄せ、そっと啜る。長ネギの風味と、良く効いた出汁の香り。そしてほんのり甘さを感じさせる優しい味噌の味。


 ああ、あたし、日本人で良かった。味噌汁って、日本人のソウルフードだと思う。


 大げさかもしれないけど、家庭を思い出す味というか、あたしにとっては母親の象徴かな。郷愁を誘うというか……、家がものすごく恋しくなるかな。


 ああ、今日もご飯がおいしい。幸せだー。この湧き上がる幸福感のお陰で、悲壮感がまったく出ないんだけどねっ。


 パリパリの海苔とご飯を頬張りながら、幸せを満喫する。浅漬けも、ほんのり香る柚子の風味が心憎い。

 お腹を満たして、熱々の緑茶で至福の一時。思わずまったりしてしまう。


「ところでカイン、今日の予定は?」

食後のお茶を熱そうに啜りながら、ハッシュが問いかけてくる。獣人にも猫舌とかあるんだろうか。


「まだ未定なんだ。そろそろ外に出たいなとは思うんだけど」

「あ、じゃあ鈴さん達に納品の予定があるんだけど、一緒に行く?」

ひらっと手を挙げて、提案するジル姉さんに、あたしは首を傾げた。


「納品って何?」

「カイン達がマリアージュで、親密度上げしてた時があったじゃない」

「暫く籠もっておった時期じゃの」

口を挟むアイラ嬢に、そうそう、とジル姉さんは頷く。


「あの時期に、情報収集とかもしてたんだけど、戦闘訓練ついでに街の外で狩りもしてたのよ。その時に出た素材を錬金で加工してたんだけど、自分じゃ使えないから、鈴さん達に使って貰おうと思って。今日納品に行く約束してたのよ」


 なるほど。鈴さん達ってことは、ギルド「猫まんま」の職人さんの鈴白さんと鈴音さんってことかな?……ってことは!

 鈴音さんは、確かお針子の筈!念願の、新しい服を頼めるっ!


「行く、行くっ!」

 がばっと勢いよく、あたしは食いつく。エプロンとかっ、ルームウェアとかっ、パジャマとかっ、色々欲しいのはあるんだよねっ。


 あと、鈴白さんにもお礼を言いたいし。鈴白さんの家具のお陰で、快適に過ごせてるんだもの。使い心地良いですって感謝の気持ちを伝えたい。


 職人さん、大事です、すっごく。


 そんな訳で、本日の予定が決まったのだった。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ