【第18話 〜最強になったら赤ちゃんでした〜】
魔王との戦いから一年が経った。
俺は正式にBランク冒険者となり、剣の腕も大きく上達していた。
ミナはAランクに昇格し、リリアは王都の魔法学院から教師にならないかと誘われていた。
俺たちは相変わらず、三人で冒険を続けている。
ある日の朝、俺はギルドで新しい依頼を見つけた。
「近隣の村まで荷物を運ぶ依頼か」
「報酬は悪くないわね」
ミナが隣から覗き込む。
リリアもやってきた。
「帰りに甘いものを食べたいわ」
「お前はいつもそれだな」
「人生には甘いものが必要なのよ」
俺たちは笑いながら依頼を受けた。
道中、小さな子どもが転んで泣いているのを見つけた。
俺はしゃがみ込み、目線を合わせた。
「大丈夫か?」
子どもは涙を拭きながら頷いた。
「……いたい」
「そっか。痛かったな」
俺は手を差し伸べた。
その姿を見て、ミナが微笑んだ。
「優しくなったわね」
「昔から優しいだろ」
「昔は自分のことを後回しにしすぎていたわ」
俺は少しだけ考えた。
確かに、以前の俺は一人で何でも解決しようとしていた。
強くなれば、誰も傷つかないと思っていた。
でも、そんなことはなかった。
強くても失敗する。
頑張っても届かないことがある。
怖くて泣きたくなる日だってある。
それでも、誰かと一緒なら、もう一度立ち上がれる。
俺は子どもを村の大人に引き渡し、再び歩き出した。
「なあ、ミナ」
「何?」
「俺、これからも覚醒を使うと思う」
「そうね」
「使ったら、また赤ちゃんになるかもしれない」
「でしょうね」
「……そのときは、頼む」
ミナは笑った。
「もちろん」
リリアが腕を組んで言った。
「ただし、私をお姉ちゃんと呼ぶのは禁止よ」
「そんなこと言って、前回は自分から抱っこしてたじゃないか」
「そ、それは緊急事態だったから!」
「へえ?」
「ミナ! レンが意地悪!」
「はいはい。二人とも、歩きながら喧嘩しないの」
いつもの光景。
いつもの仲間。
俺は空を見上げた。
この世界に転生したとき、俺は最強の力さえあれば何でもできると思っていた。
けれど、今は違う。
本当に大切なのは、強さだけじゃない。
弱い自分を認めること。
誰かを頼ること。
失敗しても、もう一度立ち上がること。
そして、自分を支えてくれる人たちを大切にすること。
俺のスキル『覚醒』は、一日一回しか使えない。
効果が切れれば、俺はまた幼児になってしまう。
きっと、これからも何度も泣くだろう。
仲間に抱き上げられ、恥ずかしい思いをするだろう。
だが、それでもいい。
俺には帰る場所がある。
一緒に笑ってくれる仲間がいる。
そして、まだ見たことのない世界が広がっている。
「よし! 今日も冒険だ!」
俺は拳を突き上げた。
ミナが笑い、リリアが呆れたようにため息をつく。
「まずは依頼を成功させてからね」
「分かってるって!」
青い空の下、俺たちは歩き出した。
最強になっても赤ちゃんでした。
とんでもない欠陥を抱えた能力だけど、今では少しだけ感謝している。
なぜなら、俺はこの力のおかげで知ることができたからだ。
本当の強さは、一人で何でもできることじゃない。
誰かと一緒に、前へ進めることなのだ。
――そして、俺たちの冒険は、まだまだ続いていく。
おまけ見てね!




