第13章 重なるハートのキス
紗江はDolce Mareを後にし、タクシーで自分のマンションへ向かう。田島も東京駅からタクシーで向かうと聞き、心は自然と高鳴った。部屋に着くと、洗面所で化粧直しを済ませる。ちょうど終わった頃、マンション入り口のインターホンが鳴った。「はい」「田島です」「今開けるね」――そのやり取りに、紗江の胸がぽっと温かくなる。
ドアを開けると、微笑んだ田島が立っていた。玄関に入るや否や、田島は紗江の腕を抱き寄せ、二人は自然に抱擁し、初めてのキスを交わす。紗江の鼓動は田島に伝わるほどの速さで、日常の中の非日常を二人は噛み締めていた。「会いたかった」「私も…」と互いに囁き合い、しばらくそのまま抱き合う。
紗江はにこりと笑い、「とっておきのワインがあるの」と言って田島の手を取りリビングへ。ジャズが柔らかく流れ、間接照明が部屋を穏やかに照らす。冷蔵庫から冷えたエシェゾーとグラスを取り出し、二人で乾杯。「こんな高級赤ワイン良いの?」「二人で飲みたかったの」――スパイシーな香りと果実味が口の中で溶け合う。
「簡単なおつまみ作るから待っててね」と紗江はキッチンへ向かい、鴨肉を軽く焼きオレンジソースを添える。三種のチーズも盛り合わせ、テーブルに並べると田島は目を輝かせて「お店みたいだな」と微笑む。「Bon appétit!」紗江が言えば、田島も笑顔で「頂きます」と答える。口にした鴨肉の味に、田島は目を丸くして「上手いっ!」と叫び、紗江も嬉しそうに頷く。
エシェゾーと料理を囲みながら、田島はツアーの話をし、紗江は耳を傾けながら頭を彼の肩に預ける。田島は髪を撫で、柔らかく口づけをする。頭を寄せ合う二人に、初恋のようなときめきと青春の甘酸っぱさが交錯する。「今度は俺の部屋においでよ」「喜んでっ」紗江のはにかんだ声に、田島はカバンから小さな箱を取り出す。「君へのプレゼント、気に入るか分からないけど…」
箱の蓋を開けると、大小のハートが重なったピアスが光る。「可愛い〜ありがとう、大事にするね」「付けてあげようか?」紗江は髪をまとめて頷き、田島に装着してもらう。鏡を見て、自分が少し可愛くなった気がした。
「今日は朝まで一緒にいよぅ」――紗江は田島に飛びつき「大好き…ありがとう、最高のサプライズ」と囁いた。ジャズと鴨のオレンジソース、エシェゾーに包まれた夜は、二人だけの特別な時間となった。




