表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『俺だけが知っているこの世界の「あらすじ」~モブ志望の俺は、神(作者)の死亡フラグをへし折る~』  作者:
外伝第1章:辺境の村と、一ヘクタールの畑

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

49/53

生活の『質』と、女王様のクッション

スライム防具の成功は、ポプラ村に、かつてないほどの、富と、活気をもたらした。

俺の荷馬車は、もはや、オンボロではなく、ギルドとの取引で得た資金で、新調した、頑丈な幌馬車に変わっていた。俺は、月に一度、その馬車に、村で作られたスライム製品を満載し、中継都市のギルドへと、納品に通う、新米商人としての、顔も持つようになっていた。

村の家々の窓は、ほとんどが、明るい光を取り込む『ぷるぷるウィンドウ』に変わり、夜には、多くの家で、『ひんやりクール枕』が、快適な眠りを、提供している。

村は、豊かになった。

だが、俺は、それで、満足はしていなかった。

俺が追求するのは、ただの富ではない。

俺が、本当に、手に入れたいのは、より質の高い、究極の『スローライフ』。

つまり、『生活のクオリティ・オブ・ライフ』の向上だ。

そんなことを考えていた、ある日の午後。

俺は、自室の、硬い木の椅子に座りながら、腰をさすっていた。

農業に、漁業、そして、商人としての、長距離移動。俺の体は、知らず知らずのうちに、疲労を蓄積させていた。

「……もっと、こう、楽に、座れる椅子はないもんか……」

その、何気ない呟きが、次の、ヒット商品を、生み出す、きっかけとなった。

俺の視線は、部屋の隅で、ぷるぷると、ただ、そこにいるだけの、ペット兼非常食(?)のスライムへと、向けられた。

(……あの、弾力……)

ひらめいた。

枕が作れるなら、これも、作れるはずだ。

俺は、早速、村の女性たち――アンナを中心に、手先の器用な者たちを集めた。

そして、彼女たちに、俺の、新たなアイデアを、伝える。

「みんなに、作ってほしいものがある。それは、『生活を、劇的に、豊かにする、魔法の道具』だ」

俺の、大げさな言葉に、女性たちは、きょとんと、首を傾げる。

俺が、彼女たちに、依頼したのは、『クッション』作りだった。

丈夫な布で、大きめの袋を作り、その中に、洗浄したスライムを、たっぷりと、詰め込む。ただ、それだけだ。

だが、その効果は、絶大だった。

完成した、試作品第一号。

それを、木の椅子の上に、置いて、座ってみる。

「……おお……っ!」

俺は、思わず、感嘆の声を、上げた。

硬く、冷たかった、ただの木の板が、まるで、高級なソファのような、極上の座り心地に、生まれ変わったのだ。

スライムの、絶妙な弾力が、俺の体重を、優しく、しかし、しっかりと、支えてくれる。腰への負担が、嘘のように、軽減された。

「すごい……! ふわふわで、気持ちいい……!」

「これなら、いくらでも、座っていられるわ!」

女性たちも、その、魔法のような座り心地に、目を輝かせた。

これが、『スライムクッション』の、誕生の瞬間だった。

この、スライムクッションは、すぐに、村中に、広まっていった。

家の椅子だけでなく、荷馬車の御者台や、畑仕事の合間の休憩場所など、あらゆる『座る』場面で、それは、大活躍した。

ポプラ村の村人たちの、腰痛は、劇的に、改善されたに違いない。

そして、このクッションは、意外な『お客様』にも、いたく、気に入られることになった。

それは、俺の屋敷――今では、村人たちから、そう呼ばれている――に、住み着いている、一匹の、年老いた、三毛猫だった。

彼女は、どこからともなく現れ、いつの間にか、この家を、自分の縄張りだと、決めたらしい。俺は、彼女を、『女王様』と、呼んでいた。

女王様は、非常に、気位が高く、俺が用意した、どんな寝床にも、目もくれなかった。

だが、俺が、試作品のスライムクッションを、床に置いた、その瞬間。

彼女は、吸い寄せられるように、その上に、飛び乗った。

そして、ふみふみ、と、前足で、感触を確かめると、満足げに、喉を鳴らし、その上で、丸くなったのだ。

以来、そのクッションは、完全に、『女王様』専用の、玉座となった。

彼女は、一日のほとんどを、その上で、優雅に、眠って、過ごしている。

俺は、その、あまりに、幸せそうな寝顔を、眺めながら、思った。

スローライフとは、こういうことなのかもしれないな、と。

世界を救うような、大きな出来事じゃない。

ただ、日々の、ささやかな不満や、痛みを、自分の知恵と、工夫で、少しだけ、快適にしていく。

腰の痛みが、少しだけ、和らぐ。

愛猫が、気持ちよさそうに、眠っている。

そんな、小さな、小さな、幸せを、一つずつ、積み重ねていくこと。

それこそが、俺が、本当に、追い求めていた、豊かさなのかもしれない。

俺は、自分の分の、スライムクッションに、深々と、腰を下ろした。

そして、玉座で眠る女王様と、同じように、満足のため息を、一つ、ついた。

ああ、今日も、平和だ。

最高の、一日だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ