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『俺だけが知っているこの世界の「あらすじ」~モブ志望の俺は、神(作者)の死亡フラグをへし折る~』  作者:
王都激震!狙われた王女と……モブの俺

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19/53

デタラメなあらすじ(プロット)の提出

王女アリシアの執務室。俺は、強制的に座らされた豪華な椅子の座り心地の悪さに、内心で悪態をついていた。

目の前のアリシアは、キラキラとした瞳で俺を見つめている。彼女にとって、俺は未来を予知する魔法の水晶玉か何かだと思っているのだろう。

「さあ、語れ、ミナセ。次に起こる『物語』を。退屈は罪なのだぞ?」

(語れ、だと? 馬鹿馬鹿しい。誰がお前のために、死亡フラグ満載のあらすじを教えてやるか)

作者の狙いは明白だ。俺に未来を語らせることで、アリシアを物語の渦中に飛び込ませ、俺も否応なくそれに巻き込む。そして、俺が抵抗すればするほど、アリシアは「こいつは何かを隠している」と、さらに俺に執着する。完璧な詰み盤面だ。

だが、俺はミナセだ。神(作者)の盤面を、ひっくり返すためにここにいる。

俺はしばし考え込むふりをした後、神妙な顔つきで口を開いた。

「……恐れながら、アリシア殿下。次にこの国を襲う『物語』は、殿方が聞くにはあまりに些細で、退屈なものかもしれません」

「ほう? 構わぬ、申してみよ」

俺は、脳内にある膨大なラノベ知識のデータベースから、最も平和で、最も地味で、最もどうでもいい「テンプレイベント」を検索する。そして、それをさも重大な予言であるかのように、荘厳な口調で語り始めた。

「近く、王城の料理長が、長年悩み続けた持病の『腰痛』を悪化させ、厨房に立てなくなります」

「……は?」

アリシアの眉がピクリと動いた。

俺は構わず続ける。

「それにより、王城の食事の質は著しく低下。兵士たちの士気は下がり、騎士たちの剣は鈍るでしょう。これを、後に人々は『厨房の悲劇』と呼ぶことになります」

「……ちゅ、厨房の悲劇?」

「はい。ですが、ご安心を。そこに、一人の若者が現れます。彼は、薬草の知識に長け、秘伝の『腰痛に効く薬膳スープ』のレシピを知る男。彼のスープによって料理長は奇跡的に回復し、王城に再び美味なる食事が戻る……という、感動の物語が待っております」

俺はそこまで語り終えると、「いかがでしたか?」とでも言いたげなドヤ顔でアリシアを見つめた。

シーン……。

部屋には、気まずい沈黙だけが流れる。アリシアは扇子で顔を隠しているが、その肩が小刻みに震えているのが見えた。

やがて、彼女は耐えきれないといった様子で、バンッ!と机を叩いた。

「……ふざけているのか、貴様はっ!!」

「いえ、真実です。これが、次に起こる『物語』のあらすじ(プロット)にございます」

「腰痛の料理長が薬膳スープで回復!? そんなものが『物語』であるものか! 私が聞きたいのは、邪竜の復活であるとか、隣国からの陰謀であるとか、そういう壮大な話なのだぞ!」

(そうだろうな。だが、それを教えたらお前の思うツボなんだよ)

俺はあくまで、悲しげな表情を崩さない。

「残念ながら、作者――いえ、天の筋書きはそうなっております。もし、この『厨房の悲劇』を回避したいのであれば、今のうちに最高の按摩師でも呼んで、料理長の腰を揉ませることですな」

俺のデタラメな予言に、アリシアは頭を抱えて「ううう……」とうめいている。

作者が用意したであろう『王家の秘宝を巡る冒険』や『狙われた王女』といった壮大なシナリオを、俺は「料理長の腰痛」という、あまりにも矮小なプロットにすり替えてやったのだ。

《警告:シナリオの意図的な改ざんを検知しました》

《キャラクター『アリシア』のモチベーションが著しく低下しています》

脳内に響く作者の焦ったようなメッセージ。ざまあみろ。

ヒロインのやる気を削ぐ。これも立派なフラグ回避術だ。

「……もうよい!下がれ! 貴様の顔を見ていると、頭痛が……いや、腰痛がしてきそうだ!」

アリシアにそう怒鳴られ、俺は「では、失礼いたします」と恭しく一礼し、悠々と部屋を後にした。

これでいい。俺が語る未来が、毎回この調子(どうでもいい話)なら、そのうちアリシアも俺を呼び出すのに飽きるだろう。

俺は、作者の新たな策略を、デタラメなあらすじを提出するという、創造の斜め上を行く方法で、またしても回避したのだった。

廊下を歩きながら、俺は次の予言のネタ――「厩舎の馬が便秘になる話」でも考えておくかと、ぼんやり思考を巡らせていた。

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