13.君の心に灯りを
「可愛い……」
まだ、小学二年生の僕は、入学してきた新一年生のある女の子に一目惚れをした。
お人形のようなぱっちりとした瞳。
少し栗色をしている長く真っ直ぐな髪。
そして、愛くるしい笑顔……。
僕は、その女の子に声を掛ける勇気がなくて、友達に頼んでその子の名前を知った。
その女の子の名前は『サクラ』という名前だった。
春に咲く『桜』のような女の子……。
柔らかいピンク色が似合いそうな女の子……。
可憐な雰囲気を持っている女の子……。
可愛いサクラにはピッタリの名前だった。
それからというもの、僕は遠目でサクラを見るのが毎日の楽しみになっていた。
だが、成長していく内に、サクラから笑顔は、どんどん消えていった……。
原因は、同級生の女子から受ける陰湿なイジメだった……。
噂では、「サクラの方にも何か問題があるのでは?」という噂が一学年上の僕の耳にも入ってきた。
でも、イジメを受けていることを知っても、僕は、サクラを助ける勇気が出なかった……。
好きなのに、助けることができない……。
僕は、いじめをしている女子から仕返しをされるのが怖かったのだ……。
やがて、僕は中学生になり、高校生になり、今は、大学生になった。
サクラのことは分からない……。
どうしているかも知らない……。
『元気であって欲しい……』
僕が願うのは、それだけだった。
そんなある日のことだった。
僕は講義中に意識を失い、倒れて、病院に緊急搬送された。
急性盲腸炎だった。
手術は無事に終わり、僕は回復するまで入院となった。
しばらくして、歩けるようになり、僕は病院の庭に行ってみることにした。
病院の庭に着いて、ベンチに一人の女性が座っているのが目に入る。
サクラだった……。
サクラの首には、包帯が巻かれていた。
何かの手術をしたのだろうか?
僕がそんなことを考えていると、看護師が声を掛けてきた。
僕はサクラのことを聞いてみることにした。
「あの子はね、純粋過ぎたの……。純粋過ぎて、真っ白過ぎて、それ故に傷付きやすいの。だから、あんなことをしたのでしょうね……」
看護師の言葉に、サクラが何をしたのか聞く。
だが、看護師は何があったかは話してくれなかった。
でも、僕の中で、サクラが何をしたかが分かってしまった……。
ーーーー自殺行動……。
もし、サクラをイジメから守っていれば、ここまで傷付かなかったのかもしれない……。
そう思うと、僕の心は締め付けられた。
純粋で真っ白だから、周りと馴染めなくて、イジメを受けていたのかもしれない……。
僕の中で、一つの想いが膨れ上がる。
『今度はサクラを守るんだ』
僕はそう決意して、ベンチに座っているサクラの元に歩み寄る。
「こんにちは」
なるべく優しい声で、サクラに声を掛ける。
今度こそ、サクラを守ろう……。
サクラの心を守ろう……。
勇気を出して……。
(完)




