第8話 3つ目の試練 ミノタウロス
「どうよ。正解でしょ。」
「お前な・・・」
扉を出た所で、サルガタナスは呆れた目で私を見ていた。
「確かに、正解だったが・・・」
「ならいいじゃない。」
「・・・」
サルガタナスはため息を付いて、前に進んだ。
赤い水晶玉のダイダロスが現れる。
「2つ目の試練突破おめでとうでちゅ~。最後の試練はここで行うでちゅ。」
そう言うと、床の四方が無音で落ちていく。
その後に、結構な広さの、真四角の場所になった。
溝で囲まれた四角。その溝の大きさは、人間がジャンプして飛び越えられるものじゃあない。結構広い。
私はダイダロスに聞いた。
「最後の試練は何?」
「魔力、知力の後は、純粋な力でちゅ。何を言おうが圧倒的な力が無いものは何も手にする資格は無いでちゅ。」
ダイダロスがそう言うと、
扉が一つ、地面からにゅっと現れた。
と思ったら、扉が砕け散った。
「わっ」
破片が当たりそうになるが、サルガタナスが見えない壁を作り、防ぐ。
砕けた扉の穴の中から、何かが出てくる。
デカい。人・・・いや、この場合はたぶん悪魔だろう。
「久しぶりだねぇ。何千年ぶりかい。ここに呼ばれるのは。」
デカい。
身長は2mはあるだろう女。褐色の肌。真っ赤・・・浅黒い赤の髪の毛。
そして真っ黒な角。デカい胸。
あからさまに悪魔だ。こんな人間がいるわけ無い。
私が驚いていると、ダイダロスが宣言する。
「最後の試練はミノタウロスに勝つことでちゅ。以上でちゅ。健闘を祈るでちゅ。」
そう言ってダイダロスは消えた。
ミノタウロス・・・牛の化物・・・だったはずだが、全くそうは見えない。健康的で美しい女だ。角は生えているが。
ミノタウロスは、あたりを見回す。
「人間一匹と・・・げっ、サルガタナスかよ。」
サルガタナスを見て、顔をしかめる。
サルガタナスは答える。
「ミノタウロス・・・初めて見るね。」
「邪神の血を持つお前に話すことは何もないよ。さっさと終わらして帰る。それしかないねぇ。」
ミノタウロスが燃えた。
いや、本当に燃えている。突然ミノタウロスの体から炎が吹き出し、燃えている。
その炎はバーナーのように一直線に上に延び、炎の竜巻となった。熱い。離れているけど、熱さで皮膚焼けそうだ。
「あっつっ・・・」
私がそう言うと、サルガタナスが私の前に立って、遮ってくれた。
「・・・ありがと」
サルガタナスは振り向かない。
炎は大きくなり、ある形を作っていく。
人形・・・のようなものに。
そう思うやいなや、炎は消え去った。
その後には、鋼鉄の巨人が居た。大きさは・・・たぶん10メートル以上はある。
灰色の装甲。真っ赤な1つ目。血の色のような赤い角。いかにも頑強そうな太い手、太い足。
「・・・あれは、何?」
鋼鉄の巨人だ。見ればわかる。しかし、あれはなんなんだ?と私はサルガタナスに聞いた。
「本質さ。悪魔のね。人間の姿は影。同一の存在。コインの裏と表、サイコロの1と6。そんなものさ。」
「あれが正体ってこと?」
「うーん、言葉では説明難しいな、あれも正体だし人間の姿も正体。」
「???」
とりあえずここで疑問を繰り返してもしょうがないので、私は深く考えないことにした。
「相手がそう来るなら、ぼくも本質になろう。」
サルガタナスがそう言うと、
サルガタナスの影が、動いた。
影から、黒い触手のようなものが伸び、それが影、平面から飛び出し、サルガタナスを螺旋状に包んだ。
と思ったら、突然消えた。
消えたと思ったら、次の瞬間には、巨大な、壁が現れた。
私は思わず後ずさる。
いや、これは壁じゃない。何かの一部だ。
つまり、サルガタナスもああいう、鋼鉄の巨人になったってこと?
多分そうなんだろうけど、大きすぎて、全貌が見えない。
そう思っていると、辺りが暗くなった。
「掴め。」
サルガタナスの声が響く。
多分・・・これは、指・・・手?
私はそれに捕まった。
おそらく指であろうものに捕まり、持ち上げられる。私は、サルガタナスの姿を見た。
それは・・・一目で、邪悪なものだと直感するほど、恐ろしい姿をしていた。
黒い。真っ黒の体。ピンクの線。緑色の線。青い髪。青い白目に、赤い目。ピンクと黒のしましまの角。
あれだ。南米にいる、ヤドクガエル。ピンクと黒の、警戒色。あれを思い出した。
生物的に嫌悪感を引き起こす、警戒色の巨人。
それがサルガタナスの本質だった。
「中に入っていろ。」
サルガタナスがそう言うと、胸の扉?の一つが開き、私をそこに投げ入れる。
中は・・・何もない、黒の壁、黒の床、黒い空間だった。狭い。車の運転席ぐらいの狭さ。
扉が閉じると、外が見えるように、小さな窓があった。
私はそこから外を見る。
「では、始めようか。」
サルガタナスの声が響く。
眼の前には鋼鉄の巨人となったミノタウロス。
恐ろしい戦いが始まった。




