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第7話 2つ目の試練 メノンのパラドックス


扉をくぐると、もとの空間、あの無限の白の部屋に出た。


そこにはダイダロスが待っていた。


「突破おめでとうでちゅ~。でも次の部屋では魔力は禁止でちゅ。知恵と洞察力の試練でちゅ。


それじゃ頑張ってでちゅ~。」


そう言うと、地面から新しい扉が現れた。


私たちは扉を開ける。


中に入ると、そこは小さな部屋だった。5m×5m×高さ2mぐらいの、本当に小さな部屋。


そしてそこには、棒状の石柱が立っていた。1、2、3・・9本が円状に、ストーンヘンジのように。


その奥には扉がある。


空中に赤い水晶玉、ダイダロスが現れる。


「この中から正解の石柱が一本あるでちゅ。それを持って扉をくぐれば、次の試練へいけるでちゅ。


正解の石柱を持たないなら、時間は巻き戻され、また始めからになるでちゅ。このルールは壁に書いておくでちゅ


それじゃ頑張ってでちゅ~。」


そう言ってダイダロスは消えた。


ふーん。単純ね、と私は思った。


「これ、失敗しても最初に戻るんだから、9回適当に繰り返したら良いんじゃない?」


私はサルガタナスにそう言った後、


私は石柱の一本を抜いて、それを持って扉に向かった。


「待て!」


サルガタナスが叫ぶ。


私はビックリして止まり、振り向く。


振り向くと、サルガタナスは、ジッと壁のルールが記された看板を見つめていた。


「どうしたの?」


険しい顔でサルガタナスは看板を見続ける。


「これは・・・もしかして・・・メノンのパラドックスか・・・厄介な・・・」


「メノンのパラドックス?」


「自らが知らないもの、正解が分からないものを選んだとき、


それが正解だったとしても、正解であることを知ることは出来ない。という問題だ。」


「よくわからないわね。」


「例えば、今君が持ってる石柱が正解だったとしても、それが正解か不正解か、判断する知識がない。


故に君は永遠に正解かどうかを知ることは出来ない。」


「いや、これもって扉くぐれば正解かどうかわかるじゃない。正解だったら次の部屋、不正解だったら最初から。」


簡単な問題だ。何を焦っているんだろう。


「ここの文字を見てくれ。“時間を巻き戻す”と書いてある。」


私はサルガタナスの隣に立ち、看板を見る。


「ええ、確かに書いてあるわ。でもそれって最初からやり直すって意味じゃないの?」


「いや・・・もしこれが、本当に時間を巻き戻す、なら、恐ろしくまずいことになる。」


「どうして?時間がまき戻った所で、また最初から・・・」


「そこが問題なんだ。つまり記憶も消える、全てがリセットされ、“同じ状況”から始まる。」


「わからないわ。別にいいじゃない?」


「同じ状況から発生する結果は、常に同じなんだよ。つまり、そう、例えば君の持つ石柱を1としよう。


君は1を選ぶ。間違える。時間がまき戻る。同じ状況から始まる。君はまた1を選ぶ。時間がまき戻る。


その無限の繰り返しが起きる。そして、この部屋の中にいる僕たちにはその無限の繰り返しが起きていることを自覚できない。


永遠に同じ行動を繰り返し続ける。これを、時間の魔法を使うモノの間では、時間の輪が閉じると言う。」



・・・私は今言われたことを考える。


・・・


・・・


「でも、今それがわかってるなら、サイコロでも投げて出た目を選べば?」



「無造作、ランダム、確かにそれができればね。でもね、サイコロも結局は物理現象なんだ。


君がサイコロを投げる力、角度。落ちる場所。それらが全く同じ条件なら、サイコロの出る目も全くなんだ。


そして、今こうしている会話も、もしかしたら何度も繰り返してるかも知れない。何十回、何百回、何千回も。」



サルガタナスの言うことを、少しずつ理解していくと、急に怖くなってきた。


私は手に持っていた石柱をもとに戻た。


「じゃあ、どうするの?」


サルガタナスに聞く。


「・・・分からない。魔法が使えるなら、この部屋ごと機能不全にして出るんだがね。」


「ふーん。うー。うーーん・・・」


考える。ダイダロスは、知恵と洞察力の試練だと言っていた。


私は、石柱を注意深く観察する。


9本の石柱。大きさは1メートルぐらい。重さは一本1キロぐらい。


石柱の先には三本の溝が掘ってある。


円に沿って刺さっている。


部屋は真四角。薄黄土色の石壁。


うーん。分からない。


「1/9なんだから、とりあえず一回扉くぐるのはダメ?」


「ダメだ。それをやると行動が固定化される。その記憶を忘れて、またその結論に到達する。を繰り返し、


時間の輪が閉じる。だからこれは一回しか選択できないんだ。」


「へぇ、じゃあ、一回でわかるように作ってあるってことね。このなぞなぞは。」


「・・・そうだな。確かに言われてみればそうだ。」


「一回・・・、ヒントはこれで全部よね?そこの看板に書いてある文章だけ。」


「ああ、そうだ。」


私は看板の文章をよく見る。





【この中から正解の石柱が一つ。それを持って扉をくぐれば、次の試練へ。


正解の石柱を持たないなら、時間は巻き戻され、また始めから。】



私は振り向いて、9本の石柱を見る。


・・・


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


わかった。なるほど。あーーーーーーーーなるほど。あたしって、天才ね。」



突然大声を出した私にビックリしてサルガタナスはこっちを見る。


私は石柱を1本1本抜いて、9本全部抱える。


「これで行けるわよ。」


「待てっ・・・」


サルガタナスが止めるのも無視して、私は扉を蹴破り、扉をくぐった。

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