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第6話 1つ目の試練 アキレスと亀のパラドックス


扉をくぐると、まっすぐの通路に出た。


これもまぁ、不思議なもんで、扉の枠しか無いのに、そこをくぐると、別の部屋と繋がっているのだ。


不思議の連発でそういうもんだと思ってしまっているが、これを社会に発表したら、


世の中の物理学者が発狂して死ぬんじゃないか。


「ふむ・・・なにもないな。」


サルガタナスが率直な感想を述べる。


実際、ただの通路だった。


天井は2メートルほど、壁は普通の石壁。奥には扉がある。10メートルほどだ。


何かの罠があるのか、仕掛けがあるのか。


サルガタナスが先に歩き出した。


私はその後ろをついていく。


・・・何もない。


私たちは、道の真ん中まで進んだ。


そして、その奇妙さに気づいた。


「あれ?向こうの扉、動いてない?」


そう。私が動いた分、扉も向こうに移動しているのだ。


サルガタナスは言った。


「アキレスと亀だね。ゼノンのパラドックス。」


「それは何?」


「亀に追いつこうとアキレスは走る。距離が残り1/2になると、亀はその1/2進む。つまり1/4だ。


アキレスはそこからさらに1/2進む。亀はその1/2進む。つまり1/8だ。これを繰り返した場合、アキレスは亀に追いつくか?」


・・・私は考えた。


それはつまり、無限に遅くなる。無限に到達することはない。のでは?


「無理じゃない?」


サルガタナスは答える。


「そうだ。つまりここは、ゼノンのパラドックスをどうするか。という問題だ。」


私はいろんな遺跡で、いろんな謎解きをやってきた。まぁ大抵はバールでこじ開けたわけなんだが、


にしてもこんな物理法則をガン無視した謎解きはしたことがないので、かなり思考が停止している。


わかるかこんなもん。


「どうするの?」


私は諦めたジェスチャー、両手を上げて降参を表現しながら、サルガタナスに聞いた。


「こうしよう。」


サルガタナスは壁に触れた。右手で。ポンチョで、その肌は見えないが。


すると、壁が一気に真っ黒に滲み、その黒い染みが広がっていく。


ものすごい不快な、石と石がこすれるような音が響く。


すると、向こうの扉が、音を立てて歪んでいく。バキバキと、ねじれていく。


「これでいい。行こう。」


サルガタナスは歩き出す。


「何をしたの?」


「歪めたのさ。全てをね。物理法則も、数学的原則も、あらゆる秩序を。」


確かにもう扉は動かなくなっていた。


歩くたびに扉は近づいていく。


きっと、これが邪神の力なんだと思った。


右側の壁に残った黒い染み。よく見ると、端っこは渦を巻いている。おぞましい。不快な。恐怖。


私たちは、物理的に解読不可能パラドックスを、あっけなく突破した。

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